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ループ四回目。いい加減「愛してる」と言われながら王子に殺される運命から逃げるため、ウキウキで婚約破棄したつもり、だった。  作者: 丸山華永


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8/9

彼だけが知っていた、本当の一回目

※わりとグロテスクな場面があります。

「ローザンナ、王命によりティアルト殿下との婚約が決まった」


そう告げられたのは、ローザンナが十歳の頃。

ティアルトとは二年前のお茶会から度々顔を合わせていて顔見知りではあった。だが無愛想な彼の印象が良い訳ではなく、嫌では無かったが上手くやっていける自信が無かった。


その無愛想な印象は、結婚してからも変わらなかった。いつも口数は少なく、何を考えているかがよくわからない。

ただローザンナと目が合うと、ぽっと顔が赤くなる。その様子がすごく可愛くて……次第にティアルトの優しさに気付いたローザンナも、彼に惹かれるようになっていった。

やがて妊娠し、国中が喜びに包まれた。

しかしその最中──ハンベルリ王国が、ドストラム王国に攻め入った。そして敗戦したドストラム王国からは、捕まったティアルトとローザンナがハンベルリの城に監禁されることになった。


そしてその最中、ローザンナの陣痛が始まった。

ティアルトも同席を許されたが、鎖で拘束された状態で、医師や侍女だけでなく、沢山の騎士や騎士団の総括であるヴィアンノの監視の元、ローザンナは子供を出産した。



「こ、この子は……」


取り上げた医師が、思わず言葉を失った。

その場に居る者全員──ローザンナまでもが驚き、辺りが騒然となる。


産まれた子は、産まれながらに青い髪、両腕に聖痕が刻まれた"聖女"だったのだ。



騒然とする中で、ヴィアンノは近付くと、その産まれたばかりの赤子に剣を向ける。



「聖女の輝き、の伝説を知っているだろう?それにより我が先祖は苦い思いをすることになった」


そして胸の付近に、先端を突き立てた。



「聖女の輝きとは、一番最初に手にした者の願いを叶える宝石。その宝石の場所は……聖女の心臓だ」



ローザンナは飛びかかり、必死で子供を守ろうと抱えた。だがヴィアンノは躊躇いもなく、ローザンナの心臓を貫く。


そして意識が遠くなる中──腕の中の子供に向かって剣が振り下ろされていた。




気付けばローザンナから、涙が溢れていた。


(ティルは、これを全部、見ていた……)



ローザンナの心臓を貫かれた瞬間も──産まれたばかりの子供が殺される様子も。

全部ティアルトは、見ていたのだ。



すると何かの気配を感じ、顔を上げた。暗闇の中に、一人の子が立っていた。

その子は驚くことに──青く長い髪に、両腕に痣のある女の子だった。



「あなたの願いは、いつも美しい。ちゃんと叶えるわ」


そう微笑むと一瞬で、光を放ちながら消えて行った。




「ローズ!」


はっと気が付き、目を開けた。

目の前に飛び込んだのは、ティアルトの顔。

少し顔を傾けると、ここがドストラム城内のティアルトの部屋だというのがわかった。



ティアルトを見ると顔に擦り傷があるが、目立った大きな怪我は無さそうだ。


「あなたも無事なのね」

「ローズ、良かった……!」


ティアルトはローザンナの肩を包み込むように抱いた。ローザンナも安心し、涙が溢れた。



ひとしきり泣いた所で、お腹に手を当てる。

違和感はない。逆に言うと、この子は無事なのだろう。



「ねぇ、あなたも見たことがあるのね。この子が産まれた所を」

「……ああ、二回」

「二回?」

「一回目は産まれてすぐに。二回目はローズのお腹を裂いて、無理矢理出された姿を見た」


ごくりと息を飲んだ。

まさか、あれ以上の酷い場面も……彼は見ていたのだ。



「三回目の人生からは、もう結婚すること自体を諦めた。そしたらその子が宿るはずの日を過ぎると、また人生を繰り返すことになった。……そうして何十回と、あなたが他の人と結婚し、幸せになる人生を見てきた」


ティアルトは涙を流し、更に強くローザンナを抱き寄せる。

彼はどんな思いで見守っていたのだろう。

想像するだけで、心が痛い。



「それでいいと思った。永遠にあなたの幸せを見れるなら、それでいいと思った。でもヴィアンノは、許さなかった。ヴィアンノは全てを奪って行った。だからあいつを止めるために……俺の幸せを取り戻す為にも、もう一度やり直そうと決めたんだ」


ローザンナはティアルトと戦う為に、人生を繰り返しているのだと思っていた。

でも本当は──彼は自分を守るために、戦っていたのだ。



「どうして私達は、時間が巻き戻るの?」

「あなたがそう、願ったからだろう」

「願った?」

「あぁ、最初の人生で」


あのさっき見せられた記憶を掘り起こす。


確かにあの日──ハンベルリに攻め入られて逃亡中、雨が打ち付けるカトミアル教会で、確かに願ったのだ。


『この子が争いの知らない、平和な世の中になりますように』と。



「その願いが叶うまで、人生は繰り返されるっていうことなのね」


そう呟くと、ティアルトは「あぁ」と頷いた。



「でも多分、願いは変わったの。私はこの子に会いたいと願った。だからきっとこの子には会える。だけど……」


──その後はどうなるのかわからない。

またハンベルリにより殺される運命になってしまうのかも知れない。

願いが変わったから、もう人生をやり直しもできないかも知れない。



「元凶だったヴィアンノはもう居ない。だから信じてみよう」


ティアルトが力強く手を握る。

ローザンナもそれに答えるように「うん」と頷いた。





──目の前で妻と産まれたばかりの子供が殺された。

その瞬間目の前が暗転し、辺りは暗闇に包まれた。

そして何かの気配がして振り向くと、そこには女の子が立っていた。

産まれた子供と同じ……青い髪に、両腕に痣のある子だった。


「あの人は、私が争いの知らない、平和な世の中になりますようにと願ったの。その為にあなたも必要よ。だからあなたの願いも叶えてあげる」


彼女が手にしていたのは、ローザンナが譲り受けた青色の宝石が輝くペンダント。

そっと包み込むように持つと、ペンダントは淡い光を放った。


「これは脱け殻なの。でも私の力を入れてあげる。ようやく私が(はい)れる体ができたんだから、分けてあげるわ」


そして彼女は、ペンダントを放り投げる。

暗闇に沈むペンダントと共に、彼女も遠くなっていく。



「君は私達の……」


ティアルトの言葉を遮り、彼女はこう言った。


「ちゃんと次は、あなたが守ってね」




──そして気が付けば、ティアルトは十歳の頃に戻っていた。


後一話で完結です。今日中に投稿予定です。

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