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ループ四回目。いい加減「愛してる」と言われながら王子に殺される運命から逃げるため、ウキウキで婚約破棄したつもり、だった。  作者: 丸山華永


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真の敵の正体

──だけど聖女の力が何だって言うんだろう。


聖女の力に胡座をかいた隣国は、随分前にハンベリルにより滅ぼされ、地図から名前が消えた。

だからそんな聖なる力なんか存在するのかと、ローザンナは懐疑的に思っている。


懐疑的に思ってはいるが、一応聖女の子孫として、神への祈りは作法通りに行わなければ気が済まない。きちんと作法を経ることで、神の力が届くと言い伝えられている。


ローザンナは首にかけていた代々レーヴライン公爵家に伝わるネックレス──青い宝石が先端に付いただけの、シンプルなネックレスを掌で包み込むように握った。

両膝を地面に付けて、祈りを捧げる。



祈りたい事は沢山ある。

でも今一番願いたいのは──これだった。



『どうか今度は、この子に会えますように』


今まで確かに、この子を道連れにして死ぬことになってしまった。

あまりちゃんとお腹に宿った実感が湧いたことは無い。だからこそ、今度はちゃんと会いたいと強く思うのだ。



合わせた手を頭の上に掲げ、代々伝わる祈りの呪文を唱える。

そして胸に手を当てた所で──はっとしたのだ。



(そういや……いつから?)


今掲げている、このネックレス。

今まで"あること"に疑問に思ったことがない。だが記憶を辿っても、渡された記憶がないのだ。


確か幼い頃には『王家に嫁ぐ際に持参するもの』という説明を聞いたことがある。

『主は居なくなったけれど、聖女の血筋を護るもの』とされているらしく、レーヴライン公爵家の者が王家に嫁ぐ際に渡され……数世代後に王家から降嫁する際には、これをレーヴライン公爵家の方に戻す。そういう決まりがあるらしい。



──でも今の人生で、これを貰った記憶がない。

いや思い返してみても……過去でも受け取った記憶はない。

気付けばこれは、何も違和感もなく手元にあったのだ。



(えっ?!)


一瞬だが掌にあるペンダントが光を放ったのだ。

ほんの一瞬だったので、見間違いだったのだろうかと目をゴシゴシと擦って、もう一度見る。だが特に何か変わった様子は無い。


もはやまぼろしだったのだろうか……そう思っていると、外が騒がしくなる。


そしてまた、あの嫌な音と共に、教会の扉が開いた。



「今日にだなんて珍しい。ローザンナ妃」


現れたのは、隣国ハンベリルの第二王子であるヴィアンノだ。

今は敵国でないが、過去の人生ではこの人の指揮により、戦争が起きた。



ローザンナは、彼を見てはっとした。

──どうして繰り返しているのは、"自分とティアルトだけ"だと思っていたのかと。



「ねぇ私は、今回いつ"妃"になったのかしらね?」


婚約は暫定的で、国外にも通達は行っている。

だがまだ現状は結婚していないので、妃ではない。



「あれ?まだ結婚していなかったっけ?婚約期間、長いよね?」

惚けたように笑うヴィアンノ。


「そもそもあなたに会ったのも、今回は初めてなのよ。覚えてないの?」


ローザンナは振るまいが悪かったせいで、海外との社交の場には出させて貰えなかった。

だから普通は、ローザンナの顔すらも知らない筈なのだ。



「でも君は、俺のことを知っている」

「ええ、勿論。貴方もね?」

「じゃぁ話は早いな」


ヴィアンノは剣を抜くと──ローザンナの首筋に突き立てた。


「では()()()()()()()()()()()()には、うちに来て貰うことにする」


ヴィアンノが、切れないギリギリの所まで、間合いを詰める。


「いずれ王妃に据えてやる。……勿論その子を諦めるのであれば、な?」


ヴィアンノは剣を引くと、再びローザンナに剣を突き立てる。

次は首筋ではなく、お腹の方に。

──彼も、子供を身籠ったことを知っている。



「あなたの目的は……?」

「知っているだろう?聖女の輝きで、この世界の支配者になること」



次の瞬間、ハンベリルの騎士達が教会になだれ込む。

あっという間に拘束されたローザンナは、外に出された。



「脚は出産に必要ないな」

ヴィアンノは再び剣を向ける。

そしてローザンナ目掛けて剣が振り下ろされ、身を屈めた──その瞬間だった。



(えっ?)

剣同士がぶつかる音がして、恐る恐る目を開ける。

何故かローザンナの前に──一人の人物が立っていた。



「ティル?!」

立っていたのは、まさかのティアルトだ。



「今度も殺させない」


二人の激しい打ち合いが始まった。周りも二国の騎士による、激しい戦いが始まる。


ティアルトも奮闘するが、体格ではヴィアンノの方に分がある。剣が吹き飛ばされよろけた隙に、ヴィアンノが思い切り剣を振り下ろす。



「やめて!」

思わずローザンナは駆け寄る。

ティアルトを庇うように前に立った、その瞬間だった。


(えっ……?)


大きな爆発音が響き、光の柱が目の前に──ヴィアンノの振り上げられた剣に降ってくる。

それは全てを焼き尽くすほどの、強い力の雷。


衝撃で吹き飛ばされながら、ヴィアンノの体に電流が流れる様子がスローモーションで映る。


やがて意識が暗闇に落ちていく中で──ローザンナは、()()()()()()の人生を見た。



『私はこの子に会った事がある』

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