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ループ四回目。いい加減「愛してる」と言われながら王子に殺される運命から逃げるため、ウキウキで婚約破棄したつもり、だった。  作者: 丸山華永


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四度目は勘弁してください

──事の発端は数日前。

教会の裏の森で大怪我を負った人を発見し、教会で保護し治療に当たった。ごく普通の話のように思うが、その治療した人の正体がまずかった。

なんとティアルトを暗殺しようとした、隣国ハンベリル王国の暗殺者だったのだ。



(どおりで見たことあると思ったー!)

何だか親しみのある人のような気がしていたので積極的に治療に当たっていたが、確かに過去の人生で会ったことはあるはずだったわ、と。


本来であれば携わった教会の関係者は全員斬首刑か、国外追放ものの罪状である。

だが情報が伝わっていなかったことや、元公爵家出身のローザンナのことが考慮された結果、教会の者にはお咎めなし。しかしなぜかローザンナだけが王宮に連れて行かれることになった。


そしてローザンナに待ち受けていたのは……王宮の外れにある棟での監禁と、ティアルトの慰み者という立場だった。



「悪いが公爵家とも縁を切ったあなたはもう外には出せない。命は助けてやる。だからせいぜい、私の役に立て」


冷たく言い放ったティアルトは、過去の夫だった頃の影は微塵も無かった。



そうして慰み者として、ひたすら身体を重ねるだけの日々が始まった。

最初こそは抵抗し、無理矢理抱かれた後には憎悪の感情が押し寄せた。

だがやはり、過去に人生の伴侶となった人だ。

どうしても昔の思いは消えてくれず、いとも簡単に絆されてしまった。

その結果──また子供を身籠ってしまったのだ。



さすがに今回はやばいと思ったのだが、ローザンナが言うよりも前にティアルトが妊娠に気付いた。

そしてティアルトの命により、出産までティアルトの部屋にある小部屋──つまり物置部屋 に閉じ込められることになった。

侍女にも部屋への立ち入りを禁じ、ローザンナの世話をするのはティアルトのみ。ひたすら暗くて狭い部屋の中、監視される妊娠生活が始まった。


ただその中で、ティアルトはなぜか優しかった。

狭いベッドだけがある部屋で、二人は時間が許す限り一緒の時を過ごした。

それは過去二回の結婚生活に非常に良く似た、穏やかな時間だった。



だがどうしても、あの時が訪れてしまう。

再びハンベリル王国の騎士が城に攻め入ったのだ。


そして一回目の人生と同様、ローザンナとティアルトは二人で逃げることになった。

今回こそカトミアル教会は避けたが、結局敵兵の攻撃でローザンナは瀕死の重症を負ってしまい……やはり最期はティアルトの手によって死を迎えた。

勿論「愛してる」の言葉と共に。




だから今回、この四回目の人生が始まると、どうやればティアルトに殺されない運命になるのかを考えた。


もうローザンナが産まれた頃からティアルトとの婚約はほぼ暫定的で、唯一の対抗馬であったオットマールとの結婚もさすがに躊躇う。

そこで発想を変えることにした。


『いっそ最初から修道院に入っちゃえば……?』



全てのしがらみを抜け、最初から修道女として人生を歩めばいいのではないかと、そういう結論に達したのだ。



何せ鬱陶しい貴族社会から抜けた先にある、充実した毎日がすごく恋しい。

畑仕事の充実感も、子供との触れ合いも、村人全員で笑い合いながら過ごす時間も、その全てが恋しかった。


だから修道女になりたいと必死に懇願した。両親は仕方なく許してくれたのだが……なぜか王家が邪魔をした。

時には強引とも言える方法でティアルトの婚約者となってしまい、抗う為に妃教育を放棄した。

そしてなるべく悪評が流れるように、注意して悪女らしい振る舞いをした。元々派手だった顔立ちを強調させる化粧を施し、派手で露出の激しいドレスで"男好きの遊び人"を演出した。


すると徐々に周りは、ローザンナの振る舞いに眉を顰めるようになった。

特に貞淑さを求める国王は、ティアルトに婚約破棄を迫った。しかしティアルトはなぜか首を振らない。

そしてずるずる引き延ばされた結果、過去に二人が結婚した日を越えることには成功した。



ところが一向に、正式な婚約破棄に至れないのだ。


そこでどうしても彼に出て欲しくない夜会の日、盛大な喧嘩をするフリをして毒を盛ることにした。

毒と言っても下剤の一種で、腹痛と共に睡魔が襲い、動けなくなる薬だ。死に至る危険は殆ど無い。

これをわざと証拠が残るようにティアルトに盛ったのだ。



元々ローザンナの計画では、問い詰められて自爆する感じを装おうとしていた。親にも協力してもらい、修道院送りで容赦してもらう、というのを演じようとしていた。

だが国王が意外といい仕事をしてくれ、早々と婚約破棄の宣言をしてくれたおかげで全てが非常に早く進んだ。


そしてウキウキの気分で修道院に向かっていた、のだが………なぜかローザンナは、来た道を引き返している。結局婚約破棄ができなかった、ティアルトと共に。



「ティアルト殿下」

「何度も言わせるな、ティルで構わない」

「いえ、私はあなたに対する不敬罪で……毒を盛った犯人ですので……」

「ああ、そのお陰で助かったけれど」

「えっ!?」

「君は気付いていたんじゃないか?オットマールが俺を狙っていたことを」



ぐっと堪え「何のことでしょう?」と惚けてみせた。


「先ほどオットマールに手引きされたと言うハンベリルからの暗殺者を拘束した。ローズは知っていたんだろう?あの夜会でオットマールが俺の暗殺を狙っていたことを」


図星を突かれ、ローザンナからひきつった笑いが零れる。

実は出て欲しくなかった夜会というのは、オットマールの手によりティアルトの暗殺が計画されていたのだった。

過去二回の人生では王子妃として出席していたが、ティアルトを庇ったローザンナは大怪我を負った。まぁそれ以来、ティアルトからの異常とも言える束縛が始まってしまうのだが。

だから三度目の人生でオットマールと結婚したのは、監視が目的だった。


シュトイヤー侯爵家はハンベリル王国と繋がっていて、共にティアルトの失脚を狙っていたことは過去の人生で知っていた。

だがローザンナと結婚した時は、オットマールはハンベリル王国を裏切った。それにより処分されたと知ったのは、三度目の人生で王宮に戻った際に聞かされたことだ。



「おかげでオットマールの尻尾を掴めた。それは君の功績とも言えるだろう」

「いや私は決して……」

「お父様からの婚約破棄の宣言中、全員意識がそっちに行っている間に畳み掛けることができた。それを君が身体を張った功績だと言わず、何だと言うんだ?」


ティアルトがにやり、とした笑顔を向けると、ローザンナの顔から取り繕った笑顔も消えた。

これは本気の目だ、と。



「ともかく今回はお父様も乗った茶番劇だと、全員がその認識でいる。だから安心して帰ればいい」

「えっと、でも……」

「だがレーヴライン公爵家に戻るのは危険だと判断する。悪いが城に来てくれ」


いやそれだったら修道院に……と言いかけたことろで。


「もう俺から逃げられる……なんて思わない方がいいよ」


またさっきのヤンデレ臭満載の笑顔で微笑むティアルト。

ローザンナもその表情を見て、敗北を悟った。

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