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さまよい人は帰り来たりぬ  作者: 神誠
第五章 新たな冒険

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面倒事

 クラウスがアケライの街に帰り着いたのは、翌日の昼前だった。

 ゆっくりと歩いていたために途中で日が暮れ、そこで一晩野宿して帰ってきたためだ。


 そうして街にたどり着いたクラウスは、その足で真っ直ぐ冒険者組合へと向かった。

 冒険者組合の受付には、二日前と同じようにステラが立っていた。

 ステラはすぐにクラウスに気付き、手を振ってくる。


「クラウスさん!」


 ステラに大声で名前を呼ばれ、クラウスは苦笑を漏らす。

 室内に幾人かいた他の冒険者達が、何事かと言うようにクラウスに注目する。


「元気そうだな」

「はい、あの、すみません……」


 無意識のうちに大声を出してしまっていたのだろう。

 ステラは周囲を見回して、注目を浴びている事に気付き、恥ずかしげな表情を浮かべる。

 クラウスはそれに笑みを浮かべながら、依頼が完了した事を報告した。


「依頼にあった盗賊は全員倒した。数は……何人だったか?」


 言葉に詰まったクラウスの頭にクドゥリサルの声が響いてくる。


『三十二だ』

「ああ、三十二人いたのを全員倒してきた。あの村ももう大丈夫なはずだ」


 そう言って依頼の完了を報告すると、ステラはクラウスの手を握り、今にも泣き出しそうな表情で感謝の言葉を口にする。


「あのっ、本当に、本当にありがとうございました!」

「ああ、俺は冒険者として依頼をこなしただけだ。それも雇い主に言われたからやっただけだしな。ちょうどいい時に、ちょうどいい冒険者が通りがかったんだ。多分ステラの運が良かったんだろう」


 その言葉を聞いたステラはわずかに目を見開いた後に、笑みを浮かべる。


「ローザさんにも同じ事を言われました。私の運が良かったのと、後は神のお導きによるものだと。伝令神に感謝の祈りを捧げるようにって言われました」

「伝令神に?」

「はい。クラウスさんとローザさんがここに立ち寄ったのは、伝令神の導きがあったおかげだと聞きました」


 ローザがクラウスに出会う事が出来たのは、伝令神の神託に従ったからなのだと、そう言っていた。

 確かに、それが無ければ二人がこの街に立ち寄ることも無かったのだろう。


「ああ、そうだな。じゃあ、次に祈るときは俺の分も一緒に祈っておいてくれないか? クラウスがよろしく言ってたって伝令神に伝えておいてくれ」


 神に対して不敬としか思えないようなクラウスの言葉を聞いて、ステラは一瞬戸惑うような表情を浮かべたが、すぐに楽しげな笑みを浮かべる。


「はい。祈りを捧げるときに、そのまま、言葉の通りにお伝えしますね」


 そうして笑い合った後に、クラウスは自身の雇い主について、ステラに尋ねた。


「ローザはもう出発したんだよな?」

「はい。クラウスさんが出発したすぐ後に、門を使用して移動されました。クラウスさんもすぐに使用されますか?」

「ああ……少し腹ごしらえをしてからでもいいかな?」

「ええ、もちろんです。準備が出来たら、また声を掛けてください」


 クラウスは冒険者組合を出て、食事の出来る場所を探し始めた。

 探し始めてすぐに、ステラに何処かおすすめの店でも聞いておけば良かったと後悔したが、わざわざ戻って聞く程でもない。


 何の知識も無しに良い店を探しても恐らく時間の無駄だろうと考え、クラウスは適当に目に付いた食堂に入って行った。

 何も考えずに入った店であったが、そこで出された料理の味は十分に満足出来るものだった。


 そうして腹ごしらえを終えて冒険者組合の手前まで戻って来たところで、頭の中にクドゥリサルの声が響いて来た。


『なんだ、ありゃ?』

『どうした?』

『冒険者組合の中におかしな奴がいやがるぜ』

『なんだ? 危険な相手なのか?』

『いや、危険は無さそうに見えるが……どうやら、見た目はエルフみたいだが、ありゃあ別物だな』

『エルフ? へえ、一度も見たことが無いな』

『偽者だがな。姿を偽るなら普通の人間の姿にすりゃいい気がするんだが……なんでわざわざあんな目立つ姿になってやがんだ?』

『エルフに化けてるって事か? 実際は何者なんだ?』

『そこまではわからんが……何にしても、急いでローザの後を追うなら関わらん方が良さそうだぞ。厄介事の匂いしかしねぇ』


 冒険者組合の中に入ると、窓口の前で一人の女がステラと話をしているのが見えた。


 女は長身で長い金色の髪を後ろで束ねていた。

 その耳は先が尖っている様に見える。


 エルフは皆美しい容姿を持っていると聞いたが、ここから見えるのは後ろ姿だけで顔までは見えない。


 クラウスは窓口には近付かず、空いたテーブルの元まで歩いて行って、そこにある椅子に座る。

 クドゥリサルの言葉の通り、関わると厄介事に巻き込まれそうな気配を感じていた。

 そのままステラの手が空くのを待つ事にする。


 エルフの姿をした何者かは、ステラに何事かを尋ねているようだ。


「この街に高位の冒険者が立ち寄っていると聞いたのですが」

「高位の……ですか?」

「はい。紹介をしていただけませんか? 報酬は満足のいく額を用意できると思うのです」


 最近訪れた高位の冒険者と聞いて、真っ先に思い浮かぶのはローザだった。


 聞こえてくる声の主が探しているのは、おそらくローザなのだろう。

 その関係者であるクラウスに何か言ってくる可能性もある。

 転移門の使用が可能になるまでに、どの程度の時間がかかるのかわからない。

 その間に話しかけてきたりしなければ良いのだが。


 クラウスが椅子に座ったまま、関わり合いにならないようにと願いながら、壁を眺め始めた時だった。

 受付の方向から強い視線を向けられているような気配を感じて、クラウスは溜息をつく。


「そこの御仁!」


 女が誰かを大声で呼んでいる。

 その声は自分に向けられているように思えた。


 クラウスは苦笑を浮かべ、念話でクドゥリサルに問いかける。


『あれは俺を呼んでるのか?』

『らしいな。厄介事に巻き込まれたくないなら、無視しといたほうがいいと思うぞ』


 念話でそんな会話を続けている間も、声は響き続ける。


「あなた! あなたです! どうか話を聞いていただきたい!」


 大声で呼ばわりながら近づいてくる気配を感じて、クラウスは呟きを漏らす。


「無視するのは無理じゃないか?」


 その人物がクラウスのすぐ傍までやってきた。

 クラウスのすぐ横に立って、じっとこちらを見下ろしているようだ。

 さすがにこの状況で無視し続けるのは、無理があるだろう。


 クラウスは顔を上げて女を見た。

 女はその切れ長の翡翠ひすいのようなみどり色の瞳で、クラウスを見下ろしている。

 その表情には、どこか切羽詰まったような真剣さが漂っていた。


「もしかして、俺を呼んでるのか?」

「はい、そうです! どうか私の話を聞いていただきたい!」


 女は少し感情がたかぶっている様に見えた。

 興奮しているのか、あるいは何かしらの理由で緊張しているのか?


 考えながら女を観察しているうちに、クラウスは違和感を覚え、眉を寄せる。

 その女の発する気配。

 その気配が、クドゥリサルの言葉通り、その見た目とは別の存在なのだと訴えかけてくる。


「何か俺に用があるって事か?」

「はい。あなたも冒険者なのでしょう? 是非ともお願いしたい仕事があるのです」

「何故俺に?」

「ここにいる者の中で、あなたが最も強いと思えたからです」

「そうか……どこを見てそう思った?」

「あなたの纏う雰囲気で、そう判断しました」


 女は迷いなくそう答える。

 クラウスはその迷いの無さと、答えの適当さに笑みを浮かべる。


「雰囲気? それは……随分と適当だな。あんたの見立てが間違ってたらどうするんだ?」

「間違ってはいない自信があります。私は強大な存在を数多く見てきました。貴方からはそれらに引けを取らない力を感じるのです」


 彼女は自身の判断を全く疑っていない様子だった。

 その自信は一体どこから来ているのか?

 女の発言について思案するクラウスに、クドゥリサルが念話で語りかけてくる。


『見たところ、コイツはおそらく妖精のたぐいだ。それもかなり上位のな』

『妖精? そんなのが人間の冒険者を雇おうとしてるって事か? なんの為に?』

『さあな。随分必死なようだし、何をさせようとしてるのか、聞くだけ聞いてみちゃどうだ?』


 クラウスは再び女を見た。

 クドゥリサルの言葉通りであるのなら、そんな存在が何を求めて人間の冒険者を雇おうなどと考えたのか、それに興味を抱いた。


「俺は人に雇われてる身でな。依頼を受けられるかどうかは、その雇い主に確認してみないとわからない。それでもいいなら、話を聞かせてくれ」


 そのクラウスの言葉を聞いた途端、張り詰めていた女の表情が、安堵したように和らいだ。


「ありがとうございます。私はダフナーと申します」

「俺はクラウスだ」

「ではクラウス……お願いしたい依頼の内容についてですが……」


 そのまま依頼について話し始めたダフナーに、クラウスは笑みを浮かべながら、彼女の前にある椅子を手で指し示す。

 それを見たダフナーはばつが悪そうな表情で苦笑を浮かべ、勧められた椅子に座る。


「失礼しました。幸運な出会いに、少々舞い上がってしまっているようです」


 ダフナーはそう言ってから、自身を落ち着かせるかのように大きく息を吐き、その表情を引き締める。


「依頼についてですが、私と共にとある存在と戦って欲しいのです」

「とある存在?」

「はい。私一人では勝利するのは難しい相手です。その戦いのために、力のある冒険者に助力をお願いしようと思っていました。ですが、貴方のような存在に出会えるとは思っていませんでした。どうかご助力頂けないでしょうか? 勿論、相応の報酬は用意してあります」


 その言葉を聞いたクラウスは、クドゥリサルに念話で問いかける。


『どう思う?』

『こいつと同等以上の力を持つ相手と戦えって事だよな? お前ならともかく、並の冒険者には荷が重い話だ。まあ、こいつと一緒にって話ならまた違ってくるんだろうが』


 二人が念話で話している様子を、ダフナーはじっと見ていたが、すぐにテーブルの横に立てかけてあるクドゥリサルに目を向ける。


「クラウス。そちらの……その剣には何らかの意思が宿っているのでは?」


 ダフナーはどのようにしてか、剣に魂が宿っている事に気付いたらしい。

 念話を使って会話をしていた事にも気づいたのだろうか?

 クラウスはそれに驚き、どう対応するべきかを考える。


 しらを切り、誤魔化すことも出来るだろう。

 だが既に気付かれているのなら、無理をしてまで隠す意味もない。

 幸い、周囲に他の冒険者の姿は無い。


 クラウスはクドゥリサルを手に取り、テーブルの上に置いた。

 他の者に会話を聞かれたとしても、剣が喋っているなどと思う者は、そうそういないだろう。

 クラウスの意図を理解したのだろう、机の上に置かれたクドゥリサルが声を上げた。


「なんだ? よくわかったな。俺はクドゥリサルってんだ。まあ、よろしくな」

「ええ、クドゥリサル。こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします」


 ダフナーは既に気付いていたからなのだろう、驚く様子も無く笑みを浮かべ、クドゥリサルの言葉に応える。


「じゃあ改めて聞くが、その戦って欲しい相手ってのはどんな奴なんだ?」

「相手はネホシェットという名の妖精です」

「妖精?」

「はい。妖精の君主と呼ばれる存在でもあり、紫金しきんの王などとも呼ばれています」


 それを聞いたクドゥリサルが興味深げに声を上げる。


「紫金の王? 聞いた事があるな。君主って呼ばれてるって事はその名に相応しい力を持ってるって事だよな?」

「はい。私と私の支持者たちと共に、あれと戦っていただきたいのです」


 妖精の君主と呼ばれる者たちは、妖精の中でも特に古く強大な力を持った存在だと言われている。

 クドゥリサルの言うように、並の冒険者が相手取るのは厳しい相手であるように思える。


「そいつの特徴とかはわかるのか? 敵として戦う場合、何に気を付ければいい? 弱点なんかはあるのか?」


 問いかけるクラウスに、ダフナーは溜息をついてから答える。


「これといった弱点はありません。魔術はほとんど効果が無く、かと言って通常の武器では傷を付ける事も出来ないのです。魔力を帯びた武器でなければ、あれには通用しません」

「魔力を帯びた武器を持ってれば何とかなるなら、俺らは大丈夫って事か?」

「それでもまだ……あれの体は鋼のように硬く、魔力を帯びた武器であっても傷を付けるのは容易ではありません。最も脅威となるのはその頑強さでしょう。あとは……そうですね。動きも素早く、力も強い。あれは単純に強いのです」


 ダフナーがそこまで語ったところで、クドゥリサルが声を上げた。


「ああ……聞いてる限りでは、俺らには相性のいい相手かもしれねぇな」

「そうなのですか?」

「ああ。その頑強さってやつは、問題にはならんだろう。そいつの体がどれ程硬かったとしても、原初の竜の鱗よりも硬いって事は無いだろうからな」

「原初の竜?」

「ああ、いや、こっちの話だ。まあ、多分何とかなると思うぜ」

「そう……なのですか?」


 ダフナーはクドゥリサルの言葉が気になっていたようだったが、それ以上それについて質問しようとはしなかった。


「で、そのネホシェットだったか? そいつはどこにいるんだ?」

「妖精の原野の、自身の支配する領域である荒野に」

「じゃあ、そこに行って、そいつを倒せばいいって事か?」

「いえ。一月ひとつき後に私の支持者たちの住む森にやって来るので、それを撃退して欲しいのです」

「向こうが襲撃してくるから、それを待って迎え撃つって事か?」

「はい、その通りです」


 クラウスの問いに、ダフナーは真剣な表情で頷く。

 一月ひとつき後と言う事はそれまでここにいなければならないという事か。

 あるいは一旦離れて一月ひとつき後にここに戻って来ても良いのか?


 思案していたクラウスにクドゥリサルが声を掛けてきた。


「とりあえず、ここまでの内容でローザに確認を取ってみたらどうだ?」

「ああ、そうだな」


 クドゥリサルの言葉にうなずき、クラウスはダフナーに視線を向ける。


「一度、俺の雇い主に相談してもいいか?」

「ええ、もちろん。この近くにいらっしゃるのですか? ああ、もしかして念話で?」

「ああ、そうだ。ちょっと待っててくれ」


 クラウスは念話の術を起動し、ローザに呼び掛ける。


『ローザ、聞こえるか?』


 クラウスの呼び掛けから十秒程で、応えがあった。


『クラウス? ええ、聞こえてるわ。盗賊退治は終わった?』

『ああ。それは終わったんだが、街に戻ってきたところで、また依頼をしたいって相手に捕まっててな』

『依頼? それは……あなたを名指しでって事よね?』

『ああ、そうだ』


 しばらく間を置いてから、ローザの返事が届いた。


『どんな依頼なのか教えてもらえる?』

『なんでも紫金の王って呼ばれてる妖精の君主と戦って欲しいんだそうだ』

『妖精の君主? それは……一体誰がそんな依頼を?』

『依頼主はエルフの姿をしてるが、クドゥリサルの話では上位の妖精らしい』

『上位の妖精? 色々と理解が追い付かないのだけど……どうしてそんな存在が、そんなところにいるの?』

『高位の冒険者がいるって聞いて、この街の冒険者組合に来たらしい。それで俺を見つけて声を掛けたんだそうだ』

『その高位の冒険者と言うのは、もしかして私の事?』

『多分そうだろうな。どうだ? 急いで合流しろって事なら断ろうと思うんだが……』

『いえ、今のところはそれ程急がなくても大丈夫だけど……報酬と、依頼達成までに必要な時間はどれくらいなの?』

『ああ、報酬はまだ確認してないな。期間は……一ヶ月後に相手が襲撃してくるらしいから、それまでは必要なんじゃないか?』

『一ヶ月? それはさすがにちょっと……長いわね。うーん……一旦報酬を確認して貰ってもいい? それを聞いてからまた考えるわ』

『わかった。じゃあ、また後で連絡するよ』

『ええ、また後で』


 ローザとの会話を終え、視線をダフナーに戻す。

 彼女は随分と緊張しているように見えた。


「如何でしたでしょうか?」

「ああ。依頼の報酬を聞けって言われたんだが、教えて貰えるか?」

「はい。白金貨二百枚程を考えておりますがいかがでしょうか? もし足りないようであれば、金銭以外の何かで足りない分を補わせて頂く事も可能です」

「ああ……その報酬が妥当なのかどうかは、俺にはわからんから、もう一度雇い主に確認してみていいか?」

「はい、もちろんです」


 クラウスは再び念話でローザを呼び出す。


『ローザ、聞こえるか?』

『ええ、聞こえてるわ』

『さっきの話なんだが、報酬は白金貨二百枚でどうかって言われたんだが』

『二百枚……相手は妖精の君主なのよね? それを考えたら、十分とは言えないけれど……』

『それで足りないようなら、金銭以外のもので穴埋めさせて欲しいって言ってたが』

『そうなの? うーん……そうね。依頼主と報酬について交渉したいのだけど、可能かしら? 金銭で支払って貰うのでも良いけれど、それ以外の……何らかの方法で帝国に貢献して貰うことも出来るかもしれない。そのあたりを交渉出来たらと思うのだけれど、それを先方に伝えて貰える?』

『ああ、わかった』


 ローザとの念話を継続したまま、クラウスはダフナーに視線を戻した。


「俺の雇い主が報酬について交渉したいそうなんだが、どうだ? あんたの言う通り、白金貨で払って貰ってもいいが、それ以外の方法で、何かしら帝国に貢献してもらう事が可能そうなら、それについて交渉したいんだそうだ」

「帝国に? それは……あなたの雇い主というのは、帝国の元で働いている方なのですか?」

「ああ、帝国の貴族だ」

「そうなのですね。交渉については……もちろんかまいませんが、いつになるでしょうか?」


 ダフナーに問われたクラウスは、再び念話でローザに語りかける。


『ローザ。交渉はいつになる?』

『仕事が終わってからでかまわないわ。交渉時にお互いの納得のいく答えが出せたならその報酬を、交渉が決裂したなら、当初の条件の白金貨二百枚で支払って貰う。それでいいかを確認して』


 クラウスはローザの出した条件を、ダフナーに伝える。

 それを聞いたダフナーは安堵したような表情を浮かべ、頷く。


「はい。その条件で依頼を受けていただけるのであれば、こちらとしてもありがたい限りです」


 ダフナーのその答えをローザに告げ、彼女からも依頼を受けて良いとの了承を貰う。

 ダフナーに視線を戻すと、彼女は不安と期待が入り混じったような表情でこちらを見ていた。

 クラウスは笑みを浮かべながら、ダフナーに結果を伝える。


「雇い主から許可が出た。依頼を受けてもいいそうだ」

「そうですか! ありがとうございます!」


 ダフナーは満面の笑みを浮かべ、弾んだ声で感謝の言葉を口にする。

 それから安堵したように大きく息を吐き出していた。


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