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太陽の妃  作者: さら更紗
Ⅳ 不穏
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Ⅳ 不穏 -13

 


「二人は無事着いたかな」

 執務室の椅子で伸びをすると、アランは言った。部屋にはコルがいるだけだ。アランが下町で隠密行動をしている間にたまった仕事を、二人で片付けている最中だった。

「ああ、ドムの町でしたっけ」

 コルは気のない返事をする。いつもと違う態度に、アランはおやっと思った。コルを見ると、顔も上げず、書類に目を通している。

「ああ、あそこが中継地らしい。お前、知っているか?」

 コルはやっと顔を上げた。しかし奇妙な顔をしている。飲みたくない薬を飲まなくてはいけないと思っているような。

「だいぶ、様変わりしていると聞きました」

 ん?とアランが戸惑っていると、コルが先を続ける。

「二〇年前とは全く違う町になってしまったそうです」

「……詳しいな」

 アランは先日までドムという名前も知らなかった。勉強不足と言われれば、それまでだが、そんな辺境の町までコルが知っているとは意外だった。

「住んでいましたからね」

「住んでいた?」

 アランが知る限り、コルはアランが物心ついたころから、傍らにいた。

「アラン様が生まれる前です」

 へぇと呟いて、子どものころのコルを想像してみる。

「なぜ、言わなかったんだ?」

 アランは昨日四子宮に戻り、コルにはその時、事情を話した。ドムの話をした時も、コルは何も言わなかった。

「アラン様とシンで勝手に決めてしまわれたでしょう?シンとランは出発してしまったし、言っても何の意味もないと思ったんです」

 少し責めているような口ぶりに、アランは驚いた。

「すまん、急いだほうがいいと思って」

 謝ると、恥じたようにコルは目を背けた。

「コルがドムを知っているのなら、コルに行ってもらえばよかった」

 アランが言うと、コルは黙り込み、やがてため息をついた。

「それはできません」

「できない?」

「わたしはドムでは有名人ですので」

 辺境の地から、王宮の近衛兵になったからだろうか。

「ドムは二十年前反乱を起こした町です」

 急な話の転換に、アランはぎょっと目を剥いた。

「あなたの兄王がこれを鎮めた」

 コルは淡々と話している。

「反乱軍の統領に、七歳の息子がいました」

 時が遡る。

「それがわたしです」

「……統領の息子」

「町を焼け出され、国王軍に捉えられました。町の誰も、わたしが統領の息子だとは告げませんでした。そのおかげか、兄王様はわたしを殺さなかった。そのまま、兄王様の屋敷に連れていかれたんです。その後、貴方が生まれた」

「……知らなかった」

 半ば呆然としてアランは呟いた。コルが顔をあげて、ほほ笑みを浮かべた。

「聞かれませんでしたからね。あの後のごたごたで、皆、わたしがどこから来たのか、忘れてしまったんです。気がついたら、貴方付きになっていた」

「そうか」

 アランはそれしか言えなかった。

「でも、ドムの町では、もともといた住民は下層へ落とされ、都から来た役人や商人が、上に住むようになった。その原因を作った反乱の統領を、皆が忘れるわけがないんです。その息子のこともね」

「……王宮を恨んでいるか」

「いいえ」

 コルは笑って、きっぱりと言った。


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