Ⅳ 不穏 -8
「何してるの?」
詰問するような声が聞こえた。
「信……」
暗がりに信が立っていた。つかつかと二人に歩み寄ると、蘭の腕を掴み、二人を引き離す。
アランを見ると、投げつけるように言った。
「部屋に戻ってください、王子様」
それだけ言って、蘭の腕を掴んだまま、歩き出す。蘭が引っ張られるように、後に続いた。
アランが呼び止める声がしたが、信は無視して、蘭の部屋まで蘭を引っ張っていった。
部屋に入ると、蘭を寝台に投げた。
「蘭、駄目だよ。知っているでしょ?アランは駄目」
悲しそうな、怒っているような顔で、蘭を見つめる。
蘭は少し考えて、ああ、と思った。アランは駄目。王太子は駄目。
その理由も蘭はコルに言われていた。
蘭は苦笑して言う。
「知ってるよ。でも、抱きしめていただけだよ」
その先に発展する可能性をちっとも考えていない蘭に、信は切れた。
「抱きしめた後は、口づけたくなるかもって思わないの?蘭を抱きたくなるかもって、思わないの?」
「抱こうとは思わないでしょ、アランも分かって……」
信は蘭の口を自分の口でふさいだ。
「俺はしたくなるよ。駄目だって思っていても、歯止めが利かなくなる」
そう言って、蘭の服を乱暴に脱がし始めた。性急にはぎとると、体中に吸い付く。
蘭の体には赤い痣が無数に咲いていった。
蘭の身体が熱を帯び、肌が徐々にほの赤く染まっていく。滑らかな肌が信に吸い付くようだ。
「ねぇ、蘭」
かすれた声で、信が訊いた。
今日の自分は本当に歯止めがきかない。満たされたいのに、どんどん渇いていくようだ。
「キースも部屋に来る?」
「え?」
喘ぎながら、蘭は聞き返した。
この家から信が出て行って、三年近くたつが、そんなことを訊かれたのは初めてだった。
信は動きを止めて、蘭をのぞき込んだ。
「キースは蘭を抱いた?」
「キースはそんなことしないよ」
信はむっとした顔をした。
「俺はそんなことするけどね」
何にむっとしたのか、蘭が計りかねていると、信が蘭の中に入ってきた。
引きかけた快楽が、再び戻ってくる。
信がぎゅっと強く蘭を抱きしめた。蘭は信に食べられてしまうのではないかと、錯覚した。それだけ、信の愛撫は執拗で、切実だった。
信を満たしてあげたいと心から思う。
「信」
「なに?」
「信が嫌なら、他の人には抱かれない」
「……」
「信が傷つくなら、しない」
潤んだ目でそういう蘭に、信は歓びに溺れそうになった。




