Ⅳ 不穏 -6
「まぁまぁまぁ」
出迎えたニノは、久しぶりに顔を見せた信をまず抱きしめ、信の後ろにいたアランに目を向けた。
ニノはお客が大好きだ。期待で目が輝いている。
「ニノさん、こちら僕の弟弟子のアランです。最近、ノックさんのところに弟子入りしました。今、仕事が空いていて、二人とも休暇をもらったのですが、アランの故郷は遠いので、こちらにしばらく泊めさせてもらってもいいですか」
完璧な説明だ。キースは感心し、必殺の笑顔を浮かべている信を見た。おふくろは一も二もなく歓迎するだろう。
案の定、ニノは即座に首を縦に振った。
「もちろんよ。よろしくね、アラン。気兼ねなく、ここでゆっくりしてちょうだい」
「無理を言って申し訳ありません。よろしくお願いします」
愁傷に頭を下げる美少年に、ニノも後ろから覗く女たちもメロメロだ。
「いいのよ、この家はもうすでに、訳の分からない居候がたくさんいるんだから」
上機嫌に言うニノの言葉に、蘭と信は顔を見合わせて苦笑した。
「ああ、うまかったなぁ」
アランは信の寝台で大の字になって伸びをした。
アランの為に、予備の寝具を運んできた信が、呆れたように言った。
「それで、何かあったら、俺のせいだろ」
日頃、四子宮では温かいものが食べられない。念入りに毒見をされるからだ。念入りにされても、毒を入れられてしまうこともあるが。
「無礼な奴だな」
楽しそうにアランが言う。
「どこで誰が聞いているか分からないでしょ?」
信はそう言って、さっさと寝具を広げた。整えると、床に広げた寝具を指し示す。
「はい、どうぞ」
「……おれがそっちで寝るのか?」
「だって、弟弟子でしょ」
信は真面目な顔で言った。ばれないように言葉や振る舞いに気を付けているというよりは、信はこちらではアランを王太子として扱う気が全くないようだった。
……まぁ、それでいいのだが。
釈然としない気もするが、アランは大人しく受け入れた。
「で、とりあえずどこに行く?」
信が何気ないふうに聞いてきた。
「あー、そうだな」
のん気そうにアランが返した。
「とりあえず、都をぶらぶらしてみたい」
「そうだな」
信も頷く。
「それがいい」
「ところで」
アランが重要なことを言うかのように、声を潜める。
「ランの部屋ってどこ」
「……教えない」
にべもなく断る信に、アランは不服の意を表情で示した。信はそっけなく言った。
「上司に言われたから」
「なんて」
「王子様に間違いがないように、気をつけろって」
ここではしっかり王太子扱いか。
アランはため息をついた。
そんなアランを横目で見て、信は胸の内でつぶやく。
頼まれてなくても、教えないけどね。




