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太陽の妃  作者: さら更紗
Ⅲ 王の子
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Ⅲ 王の子 -35


 目が覚めると、信の泣きそうな顔が目に飛び込んできた。頭がぼんやりしているので、何度も瞬きする。

「蘭……よかった」

 信は泣き顔のまま笑って、顔を蘭の腕にうずめた。よく分からないまま、なんとなく、信の頭をなでる。

「わたし、どうしたんだっけ」

 記憶を呼び起こそうとする。頭がずきずきと痛んだ。

「ああ、そうだ。凛は?儀式は?」

 想いだけが先に来て、思うままに、単語を並べる。

「即位式は終わった。巫女姫が即位なされた」

 声がした方を見ると、信の後ろにアランがいた。どっかりと椅子に座って、腕を組み、不機嫌そうに蘭を見ている。

「終わった?」

 気の抜けた声を出すと、記憶がだんだん戻ってきた。金色の髪、あの日の占い師だ。

 アランが頷いて、続けた。

「ああ、終わった。終わって戻ると、お前がいなかった」

 何があった?

 蘭は説明した。金色の髪の巫女のことも。

 アランは眉をひそめた。

「ああ、それは間違いなく、占い師の伯母上だな。金髪の巫女は彼女しかいない」

 凛が村からいなくなった日の朝、まかない所で見たあの金色の髪の巫女。蘭は鮮やかに思い出した。

「伯母上は太陽神がすべてだ。というか生きる意味だ」

 まぁ、王族としても、巫女としても、それが正しいのだが、とアランは独り言ちる。

「彼女は、太陽神の為なら、他の何の犠牲も厭わない」

「狂信者」という言葉が、蘭と信の頭に浮かんだ。王族であるアランの前では、口に出せないが。

 わたしに邪魔をさせないために、攫ったのだろうか。

「終わった……」

 もう一度呟いてみた。言葉が空中で宙ぶらりんのまま漂っているようだった。

「もう、会えない?」

「ああ、もう無理だ」

 アランが厳しい声で言った。

「二年後の婚礼の儀まで、巫女姫は隠される。もう出てくることはない」

 蘭は凍り付いたように、聞いていた。

「ラン、巫女姫はそれはとても美しかったぞ。あれは、もう、巫女姫になることを決めた者の目だ。お前が仮に巫女姫に会えて、何かを言ったとしても、巫女姫自身が覆さないだろう」

 そして急に優しい声になって、言った。

「あきらめろ」

 蘭の凍った目から、涙が零れ落ちた。

「会わせてくれるって、約束したのに」

「すまない」

「そのために命を懸けたのに」

「すまない」

「アラン様を信じたのに」

「すまない」

「凛が死んじゃう」

「すまない」

 すまない、すまない、すまない……

 言葉はむなしく消えていく。

 それでもアランは何度でも謝ってやりたかった。それで蘭の心が少しでも晴れるなら、今は王太子である自分を少し忘れ、蘭を慰めてやりたかった。

 コルがここにいなくて良かった。

 コルがここにいれば、謝り続ける王太子を止めただろう。針森の連中は王様だの王太子だのを気にしない。

 アランは立ち上がり、アランをなじり続ける蘭の涙を指で掬った。

「ごめんな、ラン」

 そう言うと、瞼にそっと口づけた。


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