表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太陽の妃  作者: さら更紗
Ⅲ 王の子
72/170

Ⅲ 王の子 -25


「護衛はここで待っておれ。ぞろぞろ来られたら、ゆっくり楽しめん」

 アランと従者、后と蘭が馬車から降り、一行が庭園に入ろうとした時、后が急に言い出した。兵隊長であるコルが慌てて、止める。

「とんでもありません。もちろん、桂妃庭は王族直轄の庭。危ないことなどないのでしょうが、万が一ということもあります。お二方とも尊いお方、もし何かございましたら」

「お前たちの首が飛ぶものな」

 后が意地悪く言った。コルが黙る。后は愉快そうに笑った。

「しかし、わたしの命に背いたということで、今すぐ首が飛ぶかもしれんぞ」

 冗談めかして言うが、夜の君がいうと、不気味ではあった。アランが不快そうに口を挟んだ。

「戯言を言わないでください」

「まぁ、そう怖い顔をするな」

 后は前触れなく、蘭の腕を掴んだ。

「では、アウローラの護衛にコルニクス、わたしの護衛にランでどうだ。四人で行こう。お前たちだったら、万が一の時、わたしたち二人くらい護れるだろう?」

 コルは逡巡した。確かに事情を知らない護衛が何人いても、状況は変わらない。しかし……

「分かりました。四人で行きましょう」

 コルが答える前に、アランはあっさりと言った。


 庭園の中は秋の色彩が見事だった。山の木々が燃えるような赤、黄、橙の色に彩られ、園内を流れる小川にもひらひらと葉が舞い落ちて、それらがてんで流れていった。そこここで可憐に咲く秋の花々が、温かみと切なさを演出していた。

 色彩の洪水だ、色に押しつぶされそうに感じながら、蘭たちは歩を進めていった。

「いい時期だな」

 后がポツリと言った。

「そうですね。美しい」

 アランも感嘆したように、答えた。アランはこの庭園を訪れるのは初めてだ。庭園の風流を解するにはまだ若く、興味がなかったからだ。しかし実際来てみると、これはこれでなかなか良いと感じていた。

「だが、造られた美しさじゃ」

「え?」

 アランは聞き間違えたのかと思った。だが、后はなおも続ける。

「自然なふりをした造り物の美しさ」

「……」

「醜悪だな」

 アランは答えずに后の半歩後をついて行った。どう答えればよいのか分からなかった。

「アウローラ」

「はい」

「少し足が痛い。靴の様子を見させるから、先に進んでくれ」

 小川のほとりにちょうど腰掛られるほどの岩があり、后はその岩の方に少し足を引きずれながら進んでいった。慌てて、蘭が手を貸す。

 アランはどうしたものかと思いながら

「待っていますよ」

 と言ってみた。

「女が靴を脱ぐところを、見たいのか? 早く行け」

 すげなく、后に却下される。アランは仕方なく、ゆっくり先に進んだ。道の先には小川にかかる小さな橋が見える。辺りは静かで、ちょろちょろと水が流れる音だけが聞こえる。あたたかな日差しが柔らかく包んでくれる。

 后を支えていた蘭に、后がそっと囁いた。

「あの橋に踏み込んだ時が合図だ」

 蘭が体の向きを変えようとしたのを感づいたのか、后は腕を少し引いた。

「まだだ」

 ゆっくり進んでいるアランたちが、橋まであと十歩くらいだ。

「ギリギリまで気付かせるな。敵にばれる」

 あと5歩。

「この先は一本道だ。逃げ場がない」

 アランの足が、橋にかかった。蘭は振り返り、右前方の木立が光るのを見た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ