Ⅲ 王の子 -24
「こんな恐ろしいこと、太陽神様が許してくれないよ」
娘…ジーナは震えながら、先ほどもらった庭園の見取り図を懐にしまった。
王太子とお后様が行幸する段取りの為、庭園の見取り図がいる。庭の造り方で多少変わってくるので、毎年新しいものをもらってくるのだ。上の女官から、使いを頼まれたのは別の下働きだった。ジーナは注意深くそれを見守っていた。その仕事をもらえと、主に言われていたからだ。
ジーナは頼まれた下働きが面倒がっているのを聞いて、ついでがあるから、その見取り図ももらってきてあげるよと持ち掛けた。下働きの子は喜んでジーナに頼んだ。
ジーナは見取り図を持って、後宮に戻るのではなく、主に言われたところに向かった。
そこでは男が一人待っていた。着ているものはそこそこだ。だが、目がどんより歪んでいた。男は見取り図を受け取ると、しばらくそこで待てと言った。男は去っていき、ジーナは言われた通り、待っていた。何時間かして、男が戻ってきて、見取り図を返された。
ジーナは見取り図をもって、後宮に帰った。
毎度思うが、何かが起こるまで、何食わぬ顔をして待っているのが、一番つらい。
ジーナはその日を、おびえながらじっと待っていた。
「ご準備ができました」
女官の一人が告げに来た。后は扇子をパチリと音をたてて閉じた。
「さて、行くか」
蘭は黙って頭を下げた。
「ラン」
何を思ったのか、后は蘭を呼び、近くまで来るように促した。
「決して私の側を離れるな。必ずわたしを護れ」
「はっ」
何か起こるのだろうか、それとも、起こそうというのだろうか。蘭は胸騒ぎがした。
その為に、王太子を誘ったのだろうか。
考える暇を与えられず、后は出立を促した。
后の馬車の前を王太子の馬車が走っている。蘭は后の横で、気が気ではなかった。馬車の中には后と蘭の二人だけで、馬車の周りは護衛の兵が護ってくれている。馬車から前方をのぞいた時には、アランの馬車の横にコルがピッタリと馬を走らせていた。他にも護衛が散らばって護っているが、逆に王太子と后の馬車だと丸わかりだ。
后は何もしゃべらなかった。后には珍しく、ぼんやりとしている。
重苦しい空気の中、馬車が止まり、御者が到着を告げた。




