Ⅲ 王の子 -21
あの日以来、蘭はアランを見ていなかった。后付きである自分が、堂々と会いに行くわけにもいかないし、コルに報告に行っても、どういうわけか、兵舎の指揮官の部屋には、ここ最近いないようだった。下手人を探っているのだろうか。そうとしたら、こちらの報告も聞きたがってもよさそうだが。
蘭はアランの様子を聞きたかった。
后の護衛にならないかと言われたとき、アランはこう言った。
わたしを殺そうとしているのは、貴方ではないですよね、ということだ。
つまり、この間の毒殺未遂が初めてではなかったということだ。
あの、青ざめた、死人のような顔。
あんなことが何度もあり、まだ続くであろうということだ。
最近アランの夢をよく見る。よく考えているからだろう。しかし、内容がいつもほとんど同じだった。コルに情報として教えてもらった、アランの出生の物語だ。そこでその真ん中に落とされたアランが、いつも傷ついている。蘭は守ってあげたくて、抱きしめるが、アランの傷は血を流し続ける。
救われない。救ってあげられない。現実でも夢の中でも。
人を助けてあげたいと思ったのは、凛以来だった。
「ラン」
女官長が呼ぶ声がして、ランは我に返った。女官長は蘭をほとんど睨むように、厳しい顔をしていた。
「護衛がぼんやりしていたら、役に立たないでしょう」
もっともだ。蘭は「はい」と短く答え、姿勢を正した。
夜の君が、楽しそうに蘭を見ていた。
「大丈夫だったか?」
一瞬、自分のことかと思ったが、いや、と思い直す。あの日以来、后も王太子のことを聞かなかった。おそらく、周りに知られるのを避けるためだろう。それが善意か悪意か分からないが、后があの時、蘭をアランのもとに行かせてくれたことに関しては、感謝していた。命じられたのなら、報告の義務もある。
「はい、大事なかったです」
きちんと意味を込めて、后の顔を見て返事をする。
「そうか」
后は頷いた。そして、しばらく考え込んだ。




