Ⅲ 王の子 -12
「ランは無事に後宮に入ったそうだな」
アランは目も上げず、傍らに控えているコルに言った。
そうですね、とコルも応じる。
「で、どうだ、ランはものになったか」
ここで初めて、主は側近を見上げた。目が聞きたいと輝いている。
コルは苦笑した。この方は大人と堂々と渡り合うが、やはり十四歳の少年なのだ。
「小さいころに狩りを仕込まれたというだけあって、バランス感覚や敏捷性は目を見張るものがあります。弓が得意だと言っておりましたが、側で警護するには役に立たないので、残念です。それ以外は普通の女性と変わらないので、やはり筋力と耐久性、武器の扱いが問題でした。そこは、みっちりしごきました」
アランはそれを聞いて、うんざりした顔をして、聞き返した。
「みっちり?」
「はい」
「あんなに細い、美しい娘を」
「でも、意外にしっかりした身体をしていましたよ」
「お前がしごいたんなら、傷だらけになったんじゃないか」
「本人が構わないと言ったので」
アランはほとんど半目になっていた。
二十五の男が女の体のことを話して、この色気のなさはなんだ。アランは十も上の男の行く末を本気で心配した。
「お前、本当に容赦ないな」
呆れた声で言ったつもりだったが、コルは一向に気にかけていなかった。意気揚々と言う。
「素質もありましたからね、立派に警護できるほどの武術は、身に付いたと思いますよ」
そうか、とアランは半笑いで頷いた。こいつの春は遠そうだ。
「それにしても、ランから言い出すとは思わなかったな」
「巫女姫のことですか」
今回は察しがいい。アランは頷いた。蘭と豊穣祭で巫女姫にされた巫女は姉妹らしいということは、蘭のことを調べた時に分かったことだ。
これで伯母である占い師の巫女が、なぜ蘭のことを自分に頼んできたのかは分かった。どうしてそこまでして、蘭を助けようとしたのかはいまだに不明だが、なにか理由があったのだろう。
神殿とつながりがある蘭を使って、夜の君を探ろうと考え、蘭がいる反物屋を呼び寄せた。巫女姫のことをどう切り札に使おうかと考えていたら、蘭の方から巫女姫を条件に出してきた。
その巫女と会わせて頂きたい
まっすぐこちらを見て、きっぱりと言った。その目に、正直気圧された。
当初の予定とは違ったが、ランと約束を交わしてしまった。
口約束は反故にされてしまう可能性がある。それを知りながらも、そうはさせないという強い意志を現した目。
承りましょう。
おもしろい。
駒としてとはまた違う興味を、アランは蘭に抱いた。




