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太陽の妃  作者: さら更紗
Ⅰ 針森の村
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Ⅰ 針森の村 -5

 


 高見櫓の上で銅鑼が鳴らされると、それまでざわめいていた村人が、一瞬押し黙った。いよいよ、選定者たちが村入りするのである。

 と、村の奥から、一人の老婆を乗せた輿が、すべるように進み出てくると、ひそひそ声がさざ波のように広がった。

 村で最高齢であり、一番の口伝師、(おう)(ばば)である。立つことができない桜婆は、滅多に館の外に出てこない。その桜婆が姿を見せたことで、気軽に選定者たちの顔を見物に来ただけの村人も、次第に緊張感が高まってきた。

 夕暮れの薄闇が濃くなり、もうすぐ夜の帳が下りる時間であった。

 村の外から、チリンチリンと高い鈴の音が聞こえてきて、早めに灯したと思われる松明の火の明かりが、ぼうっと浮かんで見えた。選定者の一行は、静かに村に入ってきた。神官と思われる男が三人。巫女と思われる女が二人。

 口を開けて一行を見ていた村人たちは、輿の上で桜婆が額ずいたのを見て、慌てて頭を下げた。

 選定者たちは、皆一様に目線を下げ、村人に興味がないように見えた。村の門を通り抜けたところで佇む選定者のもとへ、桜婆の輿が進み出て、そっと下ろされた。

「太陽神に仕える方々、ようこそいらっしゃいました」

 桜婆はしわがれた声で、それだけ言うと、また輿は担がれ、村の奥に消えていった。

 代わって、狩師の長が進み出ると、選定者たちを導いていった。

「何だかあっけなかったねぇ」

 蘭の隣で首を伸ばしていた女が、だれにともなしに言った。蘭たちも同感だった。なんとなく、お祭り騒ぎになるとか、大げさに歓迎されると思ったのだ。

 バラバラと家に戻っていく村人たちに紛れて、蘭と凛も歩き始めた。狩師の長が彼らを導いていた先には、商いにやってきた外の者が泊まる宿泊所がある。選定者たちはそこに泊まるのであろう。貴人用の宿泊施設などこの村にはないから仕方ないが、あんな簡素な所で気を悪くしないかなと、二人は話しながら家に戻った。


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