表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太陽の妃  作者: さら更紗
Ⅲ 王の子
49/170

Ⅲ 王の子 -2

 


「蘭、王宮に行くけど、一緒にいかないかい?」

 ちょっとそこまで買い物に行かないかというほどの気軽さで、キースが話しかけて来たので、蘭は意味をつかみ損ねた。

「え? どこへって?」

 真顔で聞きなおすと、キースはゆっくりと言った。

「王宮だよ。おうきゅう」

 さすがの蘭も半年都にいれば、たとえ機小屋に引きこもっていても、大まかなことは分かってくる。

 都の規模は針森の比ではないこと。王宮の存在は、(やしろ)の比ではないことも、理解できていた。桜婆は気合を入れれば、誰でも会えるが、王宮に住む人々は、どんなに望んでも、一生会えない人の方が多い。いわゆる、雲の上の人達である。

 そんなところに、たとえ奥まで入らないとしても、ただの見習いのわたしが行ってどうするのだ。そう言うと、キースはまぁまぁと蘭の腕を強引にひっぱって、部屋に連れていった。蘭の部屋にはいつのまにか、針森で織られた反物で仕立てられた服が置いてあった。

「今日はお后様付きの女官たちに、反物を見せにいくんだよ。女性もいた方が、話がしやすいだろ?」

 それではニノが行けばいい。店主の妻なのだから、同行もうなずける。そう言うと、キースは声を潜めて耳打ちした。

「綺麗どころを連れていきたいんだよ」

 何とも言えない顔で、黙り込んだ蘭の頭をポンポンとたたいて、キースはドアを開けながら言った。

「それ、ニノが蘭のために作ったんだよ。着て、見せてやりなよ」

 着たら、そのまま王宮に連れていかれるのだろう。でも、ああ言われたら着るしかない。ニノの喜ぶ笑顔を思って、蘭はため息をつきながら服を脱ぎ始めた。


「あらあ、まあ」

 予想以上にニノは感嘆し、上から下まで蘭を眺めまわしていた。見られている時間があまりに長かったので、蘭は居心地が悪くなって、もぞもぞ体を動かした。

「やっぱり、美人さんだから、綺麗な色が映えるわねぇ」

 どこかで同じようなことを言われたなと思いながら、蘭は頭を下げた。

「ありがとうございます。こんな素敵な服を作って下さって……でも、あの、いいんですか?」

 淡い青に水紋のように白い丸がちりばめられている、綺麗な色の布だった。まぎれもなく、寧が染めて、柳が織った反物だ。

 ニノはこだわりなく笑って言った。

「いいのよ。こっちだって、宣伝してもらってるんだから。

 王宮に行くのに、少し派手かなとは思ったんだけど、このくらいなら大丈夫そうね。さわやかで素敵だわ」

 ニコニコ笑うニノに、蘭はあいまいに笑い返した。

「蘭!もう着た?」

 キースの声が部屋の外から聞こえて来た。

 やっぱりこのまま連れていかれそうだ。

 蘭の思いを見越してか、ニノがぎゅっと両手を握って来た。

「蘭、まかせたわよ。しっかり売ってきて」

 ついて行くだけではなかったのか、話が違うという蘭の言葉に、ニノはニッコリほほ笑んだ。

「そうよ、大丈夫。あなたがそこにいるだけで、きっと売れるわ」

 何も言えぬまま、迎えに来たキースに半ば引きずられるように、蘭は王宮に出向くことになったのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ