表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太陽の妃  作者: さら更紗
Ⅱ 都
41/170

Ⅱ 都 -27

 


 アシュランは毎日、介添え役の練習に忙しい。凛とはほぼ別行動となり、練習の様子を聞き出すことはできなかった。

 凛が昼食を終えて、食堂から部屋に戻ろうとしていたところで、遅れて昼食にやって来たサラとアシュランを見かけた。二人は連れ立って歩いており、アシュランが熱心にサラに話しかけていた。凛が声をかけようとしたところで、サラがこちらに気が付き、手を振ってきた。

 しかし、アシュランはよほど熱中しているのか、凛にもサラが手を振ったことにも気が付いていないようだった。

 サラが苦笑して、アシュランに何か言おうとしているのを見て、凛は慌てて首を横に振った。

 サラは少し驚いた顔をいたが、分かったとうなずいてくれた。その間中、アシュランはサラにしゃべり続けていた。

 二人の後姿を見送って、凛は取り残された子どものように、途方に暮れた。別にサラがアシュランを呼んでくれたってよかったのに、慌てて止めてしまった。

 呼ばれて凛に気が付いたアシュランが、バツの悪い顔をするのを見るのが怖かったのだ。自分が邪魔をしたと感じるのが怖かった。

 豊穣祭は毎年行われるので、凛にとっては二度目である。しかし去年は一年目の見習い巫女として、ほとんど役割もなく、蚊帳の外からの遠いお祭りであった。

 今年は凛の織った反物が奉納され、サラが舞姫となり、アシュランが介添え役となる。去年とは違うのだ。何か大きなものへ進んでいっていることを、凛は感じていた。

 止まることはできず、後戻りもできない。

 ふいに、凛は自分がたった一人だという孤独感に襲われた。この白い世界でわたしは独りぼっちで死んでいく。

 自分は他の巫女たちとは違うと高を括っていた。彼女たちのように、無邪気に信じ、無邪気に群れることはできないと。

 アシュランはたまたま自分にくっついてきたから、一緒にいるのだと。

 だが実際は、自分がアシュランに依存していたのだ。その証拠に、アシュランが少し離れたと感じただけで、バランスを崩しかける。

 パタパタと落ち着きのない足音が聞こえてきた。聞き覚えのある足音だ。

「リン! リン!」

 手を振ってアシュランが駆けてくる。その後ろには、サラがやれやれといった風に、ついてきていた。

 アシュランはリンのところにたどり着くと、心配そうに見上げて来た。

「リン、ごめんなさい。さっきすれ違ったのに、気が付かなくて。サラがリンの様子がおかしかったっていうから、気になって。大丈夫?元気ないの?顔色もそういえばあまりよくない……」

 矢継ぎ早にしゃべり続けるアシュランを、凛は何も答えず見つめていた。アシュランはいつでもまっすぐだ。

「ねぇ、リン、本当に大丈夫?」

 何も答えない凛に、アシュランはますます憂いた顔になる。

 凛はようやくかすれた声で答えた。

「わたしは大丈夫よ。アシュランは? 無理してない?」

 途端に、アシュランは情けない顔になった。

「失敗ばかり。うまくできる自信がなくなっちゃった」

「アシュラン」

 後ろで聞いていたサラがたしなめる。豊穣の舞に関することは、安易にしゃべってはならないのだ。

「アシュラン」

 凛はアシュランの手を両手で握った。

「アシュランなら大丈夫よ。ちゃんとできるわ」

 そう言うと、アシュランの目に光がともった。本当にまっすぐだ。

「ありがとう、リン!」

 サラに引っ張られるように去っていくアシュランを見送っても、もう取り残されたような気持にはならなかった。

 どこに行きつくにしても、わたしはわたしの務めを果たそう。凛はグッと前を向いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ