表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太陽の妃  作者: さら更紗
Ⅰ 針森の村
13/170

Ⅰ 針森の村 -13

 


 出発は三日後ということだった。三日後、正式に巫女になる儀式を執り行い、村を出発する。巫女として村を出るのだが、それまでの三日間は、まだ正式に巫女ではなかった。 

 凛は、生家で過ごすことを許されたが、占い師とは別の、もう一人の選定者の巫女が一日の大半、側にいた。凛が間違いを犯さないようにといった見張りであろうが、針森の村の女だから付いているのか、他でもそうなのか、分からなかった。

 儀式に必要なものと、道中に必要なものは、村が調えなくてはならないので、村はてんてこまいの忙しさになった。

 凛が着る白の衣を作るために、柳も寧も一日中白い布を織っていた。カタンカタンと聞きなれた音に耳を傾けながら、凛は自分の寝床に横たわっていた。付き添いの巫女は、くれぐれも軽率な行動は起こさないようにと言い置いて、選定者たちのところに戻っていた。一刻もすれば戻ってくるだろうが、この一刻は凛にとって貴重な安らぎの時間だった。目から耳から鼻から口から肌から、すべてを使って、村の姿、音、匂い、味、感触、すべてを体内に取り込みたかった。

 控え目に戸を叩く音がして、蘭が入ってきた。

 凛はパッと飛び起きると、蘭に抱きついた。巫女は、太陽神以外に興味を持つことを良しとされていない。たとえ家族に対してでも、愛情を示すあけすけな行動をとると、付き添いの巫女は嫌な顔をした。

「今、見張りの巫女は外出中なの」

 凛が種明かしをすると、蘭の緊張がすっと抜けるのが分かった。蘭も凛を抱きしめ、頭をなでると、そっと離した。

「今日、桜婆さまのところに行ってきたの。用件が分かっていたみたいで、すぐに会ってくださったわ」

 思いつめたような蘭の顔で、何の話が始まるのか、凛には大体分かった。それでも凛は何も言わずに、蘭がしゃべるのを待った。

「凛、巫女姫って知ってる?」

 やっぱり……凛は少し笑って頷いた。

「知ってるわ。太陽神の花嫁となる人よ」

「じゃあ、誰から選ばれて、どうやって花嫁となるかは……」

「知ってるわ」

 凛はまっすぐ蘭を見て、言った。

 巫女姫は十年に一度、巫女たちの中から選ばれる。剛も言っていたが、巫女は太陽神の花嫁候補なのだ。婚姻の儀で、太陽の剣を胸に受け、太陽神と一つとなり、結ばれるのだ。太陽神はこの世にはいない。あちら側の世界にいるので、死をもってあちら側にいかなくてはならないのだ。

「凛……」

 蘭はどう言ったらよいか分からないようだった。ただただ焦っている蘭の両手を、凛は両手で握った。

「蘭、わたし信が好きなの」

「うん?」

「信が好きなの」

「うん、知ってた」

 凛が何を言い出すか分からないまま、蘭は頷いた。

「はなまつりで信と契った蘭がうらやましかった。わたしも同じ歳なら、絶対信を選んだのに。頭の中で、信と口づけたい、触れあいたいって、考えていたわ。どんな感じだろうって、想像していたわ」

 凛はいたずらっぽく笑った。

「こんなこと考えている巫女が、巫女姫に選ばれるわけないわ」

 大丈夫……とまるで妹に言い聞かせるように、凛は蘭の手を強く握った。

「それに、次の婚姻の儀は五年後なんですって。わたしはその時、二十よ。巫女姫は可憐で若い巫女がなるそうなの。二十歳じゃあ、トウが立ってるわ」

 そう言われても、蘭は安心できなかった。だからといって、凛が巫女になることを止めることは出来ない。選定者が来るのがもう一年遅かったら、もしくは凛の言うように、凛が蘭と同じ歳だったら、凛も女になっていて、巫女に選ばれることはなかったのに。

 蘭は凛を抱きしめた。泣いてはいけない。誉れある巫女として、送り出してあげなくては。

「愛しているわ、凛、私の妹。ずっと想ってる」

「わたしもよ、蘭。ずっと想ってる」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ