表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太陽の妃  作者: さら更紗
Ⅴ 神意の行方
112/170

Ⅴ 神意の行方 -7

 信と蘭がドムに入った時の状況から、カエルムを焼却処分したところまで、報告する。

 こういう作業は信の方が得意だ。必要なところを簡潔に報告できる。蘭は始めから最後までを、しっかりと辿らなければ無理だった。結果、話は長くなる。しかし、アランは熱心に聞いてくれる。

 五つも年下とは思えない大人びた表情を盗み見しながら、夢の中でのアランとの落差を思った。所詮夢の中なのだが、あそこで蘭が助けたいアランは、きちんと十六歳の少年であった気がした。

 北の大商人の息子に、いろいろ触られた場面に来ると、アランは目に見えて不機嫌になった。その時だけ、アランは蘭の話を遮り、やりすぎだ、と吐き捨てた。

「ご苦労だった」

 話が終わると、アランはもう一度蘭を労わった。今度は王太子としてのねぎらいだ。

「道の封鎖は、コルとシンが何とかするだろう」

「アラン様」

 自分の報告が終わったので、蘭は自分が一番聞きたかったことを、口に出した。

「苦しい夢を見ていますよね?」

 アランは口を開きかけて、一旦閉じると、残念そうに笑った。

「ここでは、アランと呼んでくれないんだね」

「お望みなら、そう呼びます……アラン」

 アランは座っていた椅子の背もたれに身を預けると、盛大に息を吐いた。

「ランにはごまかせないな」

 そうして、ちょいちょいと手で蘭を招いた。

「近くに来て」

 蘭が近づくと、アランは自分の膝を指さした。ここに座れと促す。

 蘭は信に言われたことを思い出した。

「アラン……」

 躊躇していると、アランは蘭の腕を引っ張った。

「大丈夫。分かってるから」

 何が分かっているんだろう、と思いながらも、蘭はアランの膝に座らされていた。

「父上はもうだめだ」

 アランの声は苦しみに満ちていた。蘭ははっとして、アランの腕の中で身を固くしていた。

「カエルムにやられている。おれがそれに追い打ちをかけた」

 おれが……見捨てた。

 消えそうな声でそう言った後、アランは蘭の背中に顔を押し付けた。

 ああ、本当のアランに戻っていく。

 背中にぬくもりと震えを感じながら、蘭は強烈に思った。

 アランを助けたい。

「アラン」

 蘭はそっと言葉をかける。

「夢の中で、私の手が見えている?わたしはあなたを助けたいの」

 自分の背中からアランのぬくもりが離れるのを感じた。その顔を見ようと、身をよじる。

 その時、部屋の扉がたたかれた。

 返事を待たずに訪問が告げられる。

「王太子様、内務大臣がいらっしゃいました」

 アランが何か言おうとするのと、蘭がアランの上から滑り降りるのと、扉が開くのがほぼ同時であった。

「何のつもりだ、無礼な…」

 言いかけて、アランは目を丸くした。

 内務大臣と言われたので、カロイだと思った。しかし、そこにいたのは……

「だれだ?」

 アランは眉をひそめた。

 来訪者はアランと蘭を交互に見ると、嬉しそうに笑った。

 呆気に取られているアランに頭を下げて、自ら名乗る。

「十年ぶりです。ウェンですよ、お忘れですか?」

 ひどいなぁと身をよじる。アランは不気味なものを見るような目で、ウェンを見ていた。

「ただいま、内務大臣を仰せ仕りました」

 飛び出してきた言葉に、アランはぎょっとする。

「カロイは」

「クビになりました」

「だれが……」

 アランが絶句すると、ウェンは高らかに言告げた。

「決まっています。太陽王陛下ですよ」

 そう言うと、アランの狼狽に頓着せず、蘭の方を見る。

「貴方のお名前は?」

 こちらに話しかけてくるとは思わなかったので、蘭は少し慌ててしまった。

「ラ、ランです」

 ああ、とウェンは考える素振りをした。

「では、(らん)かな、(らん)かな、それとも……蘭かな」

 蘭はごくりと唾を飲み込んだ。アランも目を剥いている。その発音は完璧だった。

「どうして……」

 蘭のつぶやきは、肯定の意味をウェンに伝えてしまった。ウェンはフフフと笑うと、もう一度聞く。

「で、どれ?」

 ごまかすことを許さない、威圧的な声音。この男は危険だ。蘭は直感した。

「蘭」

 蘭ははっきり答えた。もうバレてしまっているのなら、ひるんでも仕方がない。

 そんな蘭をウェンはじっと見た。

 あまり歓迎するべき目ではないなと蘭は身構える。

 ウェンはあっさり目線を外すと、アランに向き直った。

「陛下の容体は、今安定しておられますよ。ご安心ください」

 では、と一礼をして踵を返した。

 しかし、思い出したように振り返ると、懐かしそうにアランを見た。

「大きくなられましたね、アラン様」

 そう言うと、今度こそ、部屋を出ていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ