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太陽の妃  作者: さら更紗
Ⅴ 神意の行方
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Ⅴ 神意の行方 -6

 


 四子門が見えてきて、蘭はほっと息をついた。王宮が見えて、安心するなんて、と苦笑いする。

 信と別れて、数名の近衛兵たちとカエルムを処理し、帰路についた。近衛兵たちは蘭の扱いに戸惑っているようだった。

 しかし、蘭は馬も乗りこなし、長時間の移動でもへばることなく、野宿でも平気な顔をしてさっさと寝てしまったので、男たちは気にするのを止めた。蘭は近衛兵と同じ服装をしていた。数日の強行で、顔も服も汚れ、少し伸びた髪を束ねていた。その髪も埃にまみれ、男に見ようと思えば見えたことも、一因だった。

 ある夜、全員が疲れて眠ってしまい、火が絶えてしまいそうになったことがある。その時、蘭が気付いて火を継いだことで、皆に認められることとなった。

 野宿で一番気を付けることは、火を絶やさないこと。針森の教えである。

 都が見えてくるころには、蘭も雑談するほど、気安い間柄となった。

「ドムの下町に比べたら、ここは天国だな」

 都に入り、少し浮かれた一人が、こう漏らす。他の男たちも同意した。

 ガザ帝国に侵攻の気配あり。その為、早急にカエルムの道を埋めよ。そう命令が下ったことを、作業に加わっていない近衛兵たちも知っているはずなのに、長年外からの戦火に脅かされなかった国の兵士は、現実味がないようだ。厳重に口外を禁じなくても、皆忘れているかもしれない。

 兵士たちののん気なやり取りを聞きながら、蘭は不安になった。

 自分も外の国を知っているわけではない。

 しかし外の国から入ってきたもので、あんな惨状になった町を見てきた蘭は、警戒心が彼らよりはあった。

 ガザが認知せずに、カエルムが運び込まれていたわけはない。あの状態はガザも関与して、作り出されたはずだ。

 都に戻ったら、まず蘭が王太子に報告するように言われていた。皆の前でコルに言われた時、他の近衛兵たちは驚いていたが、蘭としてもコルとしても、当然だった。作戦の最初から関わってきたからだ。それは蘭も分かっている。

 本当はすぐにザックの店に戻りたい。ザックやニノ、キースの顔を思い浮かべて、蘭はため息をついた。王宮での、そしてそれに付随する様々なゴタゴタはわたしには向いていない。一心に布を織る方が向いている。

 しかし、同時にアランのことを思う。アランとアランの夢のこと。アランは大丈夫だろうか。太陽王はどうなっただろうか?

 あの夢はまだよく見る。蘭はまだ、アランが谷底に落ちるのを助けられないでいた。


 馴染みの扉をノックすると、中から入るよう促された。

 中ではアランが待っていた。目の下に隈ができている。眠る暇がないほど忙しいのか、それとも眠りたくないのか。蘭は痛々しい気持ちでいっぱいになりながら、一礼した。

「ただいま、戻りました」

「おかえり、ラン。ご苦労様」

 そして蘭の全身を見ると、くすくすと笑いだした。

「君の軍服姿も見たかったけどね」

「……誰に聞いたんですか」

「カナエが報告してきたよ。だいぶ怒っていたけど」

 蘭はバツの悪い顔をした。蘭たちが四子門から入ると、そこに女官が待っていた。蘭はその女官に見覚えがあった。夜の君付きの一番若い女官だ。一刻も早く王太子に報告に行かなくては、という蘭を引っ張っていき、無理やり水浴びさせ、服を着替えさせられた。

 あれはやはりカナエの指示だったのか。

「女官長は何に怒っていたのですか。軍服を着たことですか。その姿でここに来ようとしたことですか」

 真面目に訊く蘭に、アランは楽しそうに言った。

「両方だよ。後で来るようにって」

「……疲れてるのに」

 蘭はげんなりした。カナエの小言は長いのだ。しかも夜の君が居合わせると、止めるどころか、楽しそうにずっと見ている。

「で……」

 アランが促してきたので、蘭は居住まいを正した。

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