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太陽の妃  作者: さら更紗
Ⅳ 不穏
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Ⅳ 不穏 -18



 執務室の扉が乱暴に開かれ、コルが足早に入ってきた。机の上は書類で山積みだ。現太陽王は雑務を嫌い、その付けが王太子のところに回ってきていた。実際、太陽王はあまり政治に興味がない。平穏無事に過ごせれば、それでいいと思っている節がある。世の中の平穏無事ではない。自分の平穏無事である。

 世の中がうまく回り、平和なうちはそれでいいかもしれない。実際、太陽王の評判はそれほど悪くはない。何もひどいことをしないから、というのが世間の評価だ。

 どんな暴君でも、太陽王である限り従わなければならないこの国の民にとって、それは大事なことだった。

 アランは書類から顔を上げた。コルの様子に、いつもと違うものを感じたからだ。

「シンから手紙が来ました」

 アランの言葉を待たず、コルは早口で言った。アランの顔がパッと明るくなる。

「手紙か。早いな」

「早馬でしたから」

 緊急であることを暗に告げられて、アランの顔は引き締まった。

「なんと?」

「まず……」

 コルは言葉を切って、アランをじっと見た。その目は心なしか痛ましそうだった。

「あなたは国の為に、陛下を正すことができますか」

「……」

 アランは言葉を失った。アランが個人的に何を思おうと、太陽王は太陽神の息子である。不可侵のものとされていた。

「手紙には何と書かれていたのか」

 何とかそれだけ言うと、コルは黙って手紙をアランに手渡した。

 アランは読み進めながら、血の気が引いていくのを自分でも感じた。

 ……父上

 コルはアランを見つめたまま言った。

「シンはわたしへの手紙でこう申しておりました。陛下の不正を暴くか、陛下をかばうのか、はっきり決めてから動いてくれと。そうでないと迷惑だと」

 ……迷惑か、シンらしい。

 王族云々を意に介さないその物言いに、アランはフッと笑った。

「決まっている……正しい道こそ王道だ」

 父に会いに行く……アランが立ち上がっても。コルは動かなかった。アランが怪訝そうにコルを見る。

「もう一つ」

 コルはアランを見た。そこには個人としてのコルではなく、側近であり警備隊隊長としてのコルの顔があった。

「ガザに動きがありました。針森の先の密林地帯に道を造っているそうです……こちらに向かって」

 アランの目が細くなる。状況を把握し、計算している時の目だ。

「入り口が二つ……今のところ」

 コルは黙って沙汰を待つ。

「コル、まだ見えたのは道だけだな。兵はいないな」

「は」

「では、とにかく父上だ。ドムの道の方が重要だ。あそこを拠点にされてはことだからな」

 言いながら部屋を出ようとして、アランはコルを振り返った。

「シンとランには、ガザが針森に向かって道を造っていることは伏せておけ」

「……は」

 コルが一瞬躊躇し、それでも首を縦に振った。アランも頷き返す。

 ……間に合えばよいが。一瞬、心臓を握られたように不安が胸を襲った。しかしアランは表情を崩さず。執務室を後にした。


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