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リベンジコイン!  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第一章 ヴリトラトーナメント

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第24話 偽善者

 左眼が痛む。

 眼球を爪でガリガリと掻きむしられているような痛みだ。


――あぁ、来る。


 あの悪夢がくる。

 痛みは前兆だ。意識が途切れ、目が痛み、悪夢がやってくる。

 その痛みや悪夢でうなされ、目を覚ますことはない。痛みが始まれば悪夢が終わるまで、僕は一切の自由がない。


 悪夢が始まった。


 左眼に映るあの日の記憶。

 眠るたび、悲しみと怒りが蘇る。何度も……何度も。

 そういえば、この悪夢を見て思い出したけど、奴は僕を『7人目』と言っていた。コインにも、この左眼にも、Ⅶの文字が刻まれていた。


 つまり、僕以外のリベンジャーがあと6人はいるということだ。


 この先、ハムレットを追っていけば……僕以外の6人とは必然的に会うことになるだろう。

 その時、僕はどうする?


 協力するのか、それとも――



 ---



「んっ……」


 見慣れない天井が見える。

 いや、一度だけ見たことがある。この真っ白な石の天井は……闘技場の医務室の天井だ。


 ベッドから上半身を起こすと、


「いつっ!?」


 右手に激痛が走った。右手に視線を落とす。僕の右手首は包帯でガチガチに固定されていた。さっきより包帯の量が増えている。


 ズボンは履いたままだが、上半身の服は全部脱がされてるな。治療の邪魔だったのかな。


「お目覚めか」


 ベッドの傍の椅子にマーカスが座っていた。壁に背を預け、小説を読んでいる。

 マーカスは小説から視線を外さず、話を始める。


「どうしてここで寝てるか理解できてるか?」


「大丈夫。記憶は鮮明だよ。レイスをぶっ飛ばして、そのまま気絶したんだ」


「正解」


 ガタ……と医務室の扉が押し開かれ、赤毛の少女……エミリアが入ってきた。


「あ、良かった! 目が覚めたのですね」


 エミリアは速足で寄ってくる。


「すみません! わたしを庇ったせいで右手首を……」


「エミリア、君は会う度謝ってるね……」


「そ、そうでしょうか。すみません……」


 今もまた謝ったのだが、本人に自覚はなさそうだ。


「いるよな。謝るだけ謝って反省しないやつ」


 マーカスの嫌味に対し、エミリアは目を細める。


「なぜ反省していないと決めつけるのですか?」


「会う度、謝ってるってことは、何度も(あやま)ちを繰り返してるってことだろ? 反省してない証拠じゃねぇか。俺の経験から言わせてもらえば、謝り癖ついてる奴は基本偽善者だね」


「謝罪し、さらに反省することが最善だと私は思います。非がある時はまず謝るべきでしょう」


 マーカスはエミリアの反論を受けて舌に毒を塗る。


「謝られることが被害者にとって必ず嬉しいことだと勘違いしてないか? 『謝罪を受ける』ってのも手間だし場合によっちゃストレスになることもある」


「ストレス……?」


 エミリアはマーカスの言葉を理解できていない様子だ。


「……お前さ、本当にオセロのためを思って、謝りに来たのか?」


「当然です」


「じゃあ聞くが、お前が怪我したとして、他のトーナメント参加者に怪我の具合を見られたいか?」


「――っ!? それは……」


「しかもこいつは上裸だぜ。異性に見られて嬉しい姿でもないだろう」


「……!」


 エミリアは顔を赤めて、僕から視線を外した。


「少し考えれば、お前がここに来ることがオセロにとって負担になるとわかるだろ」


「そう、ですね……」


「本当に悪いと思ってるなら相手の気持ちを考慮する。お前は結局、自分が楽になるために来ただけさ。お前みたいなのを偽善――」


「マーカス!」


 さすがにエミリアを不憫に思い、僕は止めに入る。


「エミリア。僕は君が見舞いに来たことを迷惑になんて思ってないよ。マーカスなんかの言葉、真に受けなくていいから」


「『なんか』とは失礼な」


「いえ、そちらの方の言うことも一理あります。配慮が足りなかったことは事実です」


 エミリアは見るからに落ち込んでいる。

 ……このまま彼女を帰すのは可哀そうだな。よし、ここは……、


「エミリア、お願いがあるんだ」


「お願い、ですか?」


「今日この後、Aグループの第四試合がある。その試合の勝者が僕の次の対戦相手になる。僕はまだ観戦できるほど元気じゃないし、僕の代わりに偵察してきてくれないかな?」


 マッキーの件に関して、僕はエミリアに非があるとは思ってない。

 彼女がマッキーを注意したことも、マッキーの行動に怒りを覚えたことも、間違いではないだろう。もっと利口なやり方はあっただろうけど。


 でも彼女は随分と罪悪感を抱いてるようだし、ここでわかりやすく贖罪の機会を提示しておく。


「わかりました! お任せください!」


 水を得た魚のようにエミリアは目を輝かせた。


「では偵察に行ってきます!」


 エミリアはウキウキと部屋を出ていった。


「……わかりやすい奴だな。そんでお前は甘い奴」


「マーカスが厳しすぎるんだよ」


「ああいう正義中毒にはハッキリ言ってやった方がいいんだ」


「ごめんね。苦手だけど嫌いではないんだ、ああいうタイプ」


「……ふんっ。まぁアイツのことはどうでもいい。お前、トーナメントの日程は頭に入ってるな?」


「うん。一日目はAブロックの一回戦、二日目はBブロック、三日目はCブロック、四日目はDブロックの一回戦。五日目はAブロックとBブロックの二回戦、六日目はCとDブロックの二回戦。一日休みを挟んで八日目は準々決勝、九日目は準決勝、それで十日目が決勝戦……で合ってるよね?」


「そのとーり」


 僕個人のスケジュールは、


 4月14日(今日)一回戦

 4月18日二回戦

 4月21日準々決勝

 4月22日準決勝

 4月23日決勝


 順調にいけばこうなる。


「女医さんの話によるとお前の手首は今日含めて三日ほどで治るらしい。【グロップ】はお前の体内にある魔力を使って自然治癒能力を高めてるから治るまで魔術も禁止だってよ。当然、筋トレとか肉体を使った修行も禁止だ」


「それじゃあほとんど修行ナシで二回戦に挑むことになるわけか……」


「いいや、修行はするぜ。ラッキーなことにステップ2は魔力も体力も使わない」


 魔法に至るまでの3つのステップの内、2つ目――


「ステップ2『法術を覚えよう』。このステップで使うのは()()だけだ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 小説家のコンビとは考えましたね?最高です オセロは「封印術師」のシールと同じ香りがする。そう、神主人公の香りだ。 [一言] やっぱ、軌道に乗った後の話はずっと継続して面白いよなあ 序盤で詰…
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