第17話 ブラックボックス
【青薔薇】はマーカスの槍を中心から真っ二つにした。
だけど、マーカス自身には届いていない。
マーカスは折られた槍を見て、眉を顰め、僕に視線を合わせた。
「――っ!?」
その心臓の裏まで見透かすような目を見て、僕は初めてマーカスに恐れを抱いた。
「この魔力出力……“風霊の鼓動”か」
マーカスは笑みをこぼす。
「火と土は見たことあるが、風は初めて見たな。さいっこうだね! 大当たりじゃねぇか!」
「……武器が折られたっていうのに、随分と余裕だね」
「まぁな。槍が折られたところでどうってことないぜ。オレは槍使いじゃねぇ、さっきもそう言ったろ」
マーカスは槍を捨て、右手を前に出す。
「良く見とけ、オセロ。これが……魔法だ」
マーカスは右手の手のひらを上に向け、その上に……30cmほどの真っ暗な球体を生み出した。
「なんて、歪な魔力だ……!」
マーカスはその名を口にする。
「【僕だけの秘密基地】」
マーカスは黒い球体を浮かべたまま、無防備に向かってくる。
「なにを考えている……?」
魔力も微量しか纏ってない。隙だらけの突撃。
怖いのはいま出てきたあの球体、あの黒い球体は謎だ。アレに触れるのは絶対にまずい。
球体を避けるように、僕はマーカスのみぞおちに向かって突きを繰り出す。
しかし、マーカスは僕の攻撃を読んでいたかのように右手をみぞおち部分に移動させた。右手の動きに呼応して球体も動き、僕の突きの先に球体が設置された。
剣先と球体が接触する。
――ズン!!
「なにっ!?」
剣が、球体に引きずり込まれていく……!?
慌てて剣を引こうとするが、球体の吸引力が大きく、抗えない……!
「くっ!」
僕まで引きずり込まれると思い、僕は剣を手放した。
剣は球体に完全に飲まれる。
次の瞬間。
僕の喉元に、“棘の無い薔薇”が突き付けられていた。
マーカスの手に“棘の無い薔薇”はある。
「一体、なにが起きて……??」
瞬間移動?
いや違う。もっと別の……!
「オレの魔法【僕だけの秘密基地】は黒い球体を生み出し、球体に触れた無生物を吸い込み異次元に格納する。格納したアイテムはオレの意思で球体から引き出すことができる」
強い。
この球体に武器が触れただけで武器を失うだけじゃなく、相手に使われる。
初見殺しでもない。仕組みがわかったところで対抗策も浮かばない。
さっきの槍もあの球体から飛び出した物だろう。きっと、他にも多くの武器がしまってあるに違いない。動く武器庫だ……!
「これが魔法……」
「そうだ。魔法を使えない人間は、魔法使いに太刀打ちできない。よくわかったろ?」
マーカスは球体を消し、僕に剣を投げる。僕は投げられた剣をキャッチする。
「噂じゃ、三強と呼ばれる3人は魔法が使える。魔法が使えない状態で奴らと戦うのは無謀だぜ」
「……君の弟子になれば、彼らと戦う前に魔法を覚えられるのかな?」
「お前のやる気次第だ」
腹は決まった。
「君の弟子になるよ。僕に魔法を教えてくれ」
「くく! 無論、大歓迎だ」
こうして、僕に生まれて初めて師匠ができた。
「ところでよー、お前が働いてた飯屋ってバイト募集してる?」
「へ?」
マーカスは後ろ頭を掻いた後、両手を合わせて頭を下げてきた。
「金も寝床もねぇんだ。頼む! オレもあそこで働かせてくれ!!」
「えぇ!?」
こうして、僕に生まれて初めて後輩ができた。
オセロは少年漫画の主人公、マーカスはなろう作品の主人公をイメージして出来上がりました。




