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リベンジコイン!  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第一章 ヴリトラトーナメント

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第12話 微笑

「フグ豚の生姜焼き、プチプチ米のチャーハンと怪魚パスタ! それと八変化ガニ、海底オニオンのスープに日替わりサラダを2つずつ!」


 僕とエミリアは大衆食堂〈チドリ亭〉に入った。

 昼時だからテーブルはほとんど埋まっていて騒がしい。


「オセロはなにを頼みます?」


「え? 今のって2人分の注文じゃなかったの?」


 僕が問い返すと、エミリアはメニュー表で口元を隠し、恥ずかしそうにこちらを見上げる。


「頼みすぎ……でしたかね?」


 どう考えても一般的な女子が頼む量を超過しているだろ……。


「僕はチャーハンと刺身の盛り合わせで」


「それだけでいいんですか? 遠慮はいりませんよ?」


「僕はこれぐらいで十分だよ」


「へぇ……小食なんですね」


 君が頼み過ぎなんだよ、というツッコミをなんとか飲み込む。


「お待たせしました~」


 小っちゃな女の子が料理を運んできた。この店の店主の娘さんかな?


 僕とエミリアは食事を進めながら、お互いのことを話し合った。と言っても、僕はほとんど濁して話した。


 探し人が居て故郷を出たことと、捜索費用を稼ぐためにトーナメントに参加したこと。この2つの情報だけ開示した。


 エミリアは多分、包み隠さず話してくれた。


 彼女は人間(ヒューマン)人狼族(ワーウルフ)の紛争で家族を失った戦争孤児で、両親のいない彼女は幼くして修道院に預けられたらしい。〈ネフラン〉の西にある〈コルルト〉と言う町で育ったそうだ。

 彼女は修道女になるか、それとも騎士になるため故郷を出るかを悩んで後者を選んだ。


「騎士を志願してるのに闘技場に出ても大丈夫なの? 闘技場ってあまり良いイメージはないけど」


 闘技場は賭け事の場でもある。

 騎士団に入りたい、という人間がそういった場に選手として出場するのは良くないと思うのだが、


「ここの闘技場は騎士団も出資している特別な場所なんです。良くないどころか、この闘技場で活躍した人間が騎士団にスカウトされた事例も多くあります」


「じゃあ、エミリアの目的は騎士団のスカウトってこと?」


「一番はそうですね。でも純粋な腕試し目的でもあります!」


 岩を素手で割れるんだ、そこらの人たち相手じゃ腕試しにならないか。


「オセロは人を探してるんですよね?」


「うん、まぁね」


「誰を探しているか聞いてもいいですか? 私の知っている人物かもしれませんし、この先その人に会ったらオセロのことを教えることができます」


 僕はハムレットの知名度を知らない。

 もしかしたら世界的大犯罪者かもしれないし、逆にまったく誰にも認知されてない存在かもしれない。エミリアがハムレットを知っている可能性はあるにはある。


「少しでも力になれたらと思って……」


 ホント、善人だな。

 今日会ったばかりの人間に普通ここまで踏み込まない。


「あっ、答えにくいなら無理にとは言いませんよ?」


 適当に濁してもいいが、


「ハムレット。それが僕の探している人間の名前だよ」


 僕がその名を口にすると、エミリアの表情が変わった。

 先ほどまでの穏やかな顔から一転、真剣な……ともすれば、どこか諫めるような目で僕を見つめた。



「なるほど。あなたの目的は復讐ですか」

 


 その言葉で、彼女がハムレットを知っていると確信した。


「ハムレットを知っているんだね?」


「知らない人間の方が珍しいかと。年間1000人は殺している快楽殺人鬼ですから」


 年間1000人……驚きはしないな。奴が滅ぼした僕の村の人間だけでもその十分の一はある。

 しかし、ハムレットの知名度が高いのは良かった。奴への手がかりが探しやすい。


「ハムレットに何をされたのですか?」


 答える義務はないけど、ハムレットの情報を多少なりとも教えてくれたことに礼儀は払うべきか。


「僕の故郷が奴に焼かれた。想い人も、親代わりだった人も、まとめて焼かれた」


 エミリアは眉を眉間に寄せた。怒りと、悲しみが混ざった表情をしている。


「復讐なんて、やめた方がいいですよ」


 エミリアは憐れむような目で僕を見る。


「仇を討ったからって亡くなった人たちのためになるとは限りません」


「……そうだね」


「その人たちにとって最悪な展開は、復讐の道であなたまでも死んでしまうことです。復讐を忘れ、あなたはあなた自身の幸せのために生きるべきです。きっと、あなたの大切な人たちもそれを望んでいる」


「……」


 エミリアは綺麗で、真っすぐな瞳で僕の目を見て、言い放つ。



「復讐はなにも生みません」



 そのセリフに対し、僕はつい……笑ってしまった。

~~~チドリ亭 MENU~~~


【フグ豚の生姜焼き】

・フグ豚は腹部に棘を持ち、体内に毒を抱える豚。普通の豚より体が膨らんでいて体色は白。調理するのに免許が必要な特殊調理素材。フグ豚の肉は通常の豚の肉より柔らかく口に入れた瞬間溶ける。刺身で食べることもでき、おススメの食べ方は魚の刺身と同じで生を醤油でいくのが良い。生姜焼きにすると食感がしっかりとして生姜のおかげで旨味も引き立つようになる。なにかと合わせて食べるなら生姜焼きがベスト。


【プチプチ米のチャーハン】

・食感がプチプチの米を炒めた料理。プチプチ米は黒い色をしていてブラックダイヤモンド(黒い宝石)とも呼ばれている。ヒューマンが栽培していた米が口に合わなかったドワーフが持ち前の器用さで品種改良を重ね作り上げた。


【怪魚パスタ】

・海で獲れる怪魚(体長が10メートル以上ある魚)とパスタを合わせたモノ。全11種の怪魚の身を混ぜている。かなりボリューミー。


【八変化ガニ】

・八本の足を持ち、それぞれの足で味が違う不思議ガニ。足ごとに色が違う。


【海底オニオンのスープ】

・海底オニオンは海底でしか育たない玉ねぎ(オニオン)。水圧により圧縮された爆発的な旨味と海水によってまぶされた塩味がグッド。ニンニク(ガーリック)の風味がするためオニオンガーリックとも呼ばれる。滋養強壮効果もあり、健康に良い。薬の材料として使われることもある。

海底オニオンのスープは海底オニオンを刻んでお湯に入れて煮込んだだけのものだが味はしっかりとついている(人によっては濃いかも)。元気のない人はぜひ海底オニオンのスープを頼もう。


・【日替わりサラダ】

〈チドリ亭〉の店長が所有している畑で採れた野菜を適当にぶっこんだモノ。

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