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リベンジコイン!  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
序章 

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第1話 5話後に終わる夢物語



 “復讐をしてもなにも生まない”。 



 旅の道中、似たようなことを何度聞いただろうか。

 根本からして考え方を間違えている。


 僕はなにかを生み出す気なんてない。ただ消したいだけだ、この胸の内に宿る、どす黒いモノを。何度目を逸らしても視界に入る、この黒く禍々(まがまが)しくおぞましい、(ガン)のような感情を。


 どんな名医であってもこの癌感情を取り除くことはできない。

 奴を殺すことでしか取り除くことはできないんだ。


 ハムレット。


 それが僕の大切な人を殺した男の名前だ。

 奴は気に入った相手の家族や友人、大切な存在を奪う。 

 そしてその相手を嘲笑(あざわら)いながら、1枚のコインを残す。

 奴は言う、『このコインを資金に私を追い詰めてみろ』と。



 奴が復讐者に渡す、そのコインの名は――




 ---



 氷点下10度を下回る空気の中、凍った水面の一部を砕き、僕は釣り糸を垂らす。

 竹製の竿に糸が付いているだけの安物、これが僕の商売道具だ。釣り針すら付いていない。

 釣り糸の先に括ってある餌はそこそこ高いカラエビというもので、1匹100ゼラ(大体リンゴ1個分の値段)する。


「来る」


 釣り糸が震える前に、釣り竿を振り上げ魚を釣り上げた。尾が異常に大きな魚だ。

 この魚はソニックフィッシュと呼ばれるもので、体長は30cmほど。有名な魚で言うとサンマと同程度である。

 動きが速いのが特徴だ。コイツのスピードに慣れるまでに何キロの餌が取られたことか。

 僕はソニックフィッシュをバケツに入れる。バケツの中にはすでに大量のソニックフィッシュが入っている。


「よし、ノルマの30匹だ」


 竿に釣り糸を巻き、バケツを持って撤収し、〈レキ村〉へ戻る。


 〈レキ村〉は僕が住んでる村で、人口100人ほどの小規模な村だ。

 〈レキ村〉の家は屋根が特徴的で、かなり急斜面な三角になっている。これは屋根に雪を積もらせないための工夫で、屋根に角度をつけて雪が滑り落ちるようにしているのだ。


 僕は二階建ての家の戸を叩く。


「ごめんください」


 僕が言うと、家の中から「はいはい~」と女性の声が聞こえた。

 戸が開かれる


「おはよオセロ。いつもありがとね」


「おはようございます、ルチアおばさん」


 ルチアおばさんは僕の幼馴染の母親で、幼くして両親を亡くした僕の面倒をよく見てくれている。歳はもう40を超えているが、見た目は20代と言われても信じるほど若い。


 ルチアおばさんは僕の持つバケツの中、ソニックフィッシュの群れを見て呆れた顔をする。


「よくもまぁこんなに釣れるわね。また〈ノースバース〉まで売りに行くんでしょ?」


「もちろん。こんな量、僕一人で食べるのは無理ですよ」


「あそこまで20キロもあるのによー行くわ……」


「良い運動になりますよ」


「雪道を20キロとか死ねる……」


 僕は真面目な声色で、


「……ヒカリの体調はどうですか?」


 ルチアおばさんは小さく笑う。


「自分の目で確かめな」


 ルチアおばさんのその明るい声色と顔を見て、僕は安堵し、階段をあがって二階へ行った。


 二階は僕の幼馴染であるヒカリの部屋だ。


 部屋の戸を開けると、少女が布団の上に横たわっていた。

 少女の髪色と瞳の色はスカイブルー。髪の長さはセミロングだ。服はパジャマ、おでこの上にはタオルが乗っている。


 彼女は僕に気づくと目線をこちらに向け、にっこりと笑った。


「オセロくん、体調はいかがかな?」


「それは僕のセリフだよ。ヒカリ」


 ヒカリはくすりと笑い、


「良好でございます。今ならイチゴジャムがたっぷりかかったパン10枚はいけるね」


 ヒカリは幼馴染で、この小さな村で唯一の同世代だ。


 幼い時からずっと一緒だった。この世で一番大切な人。

 彼女は10歳の時からある(やまい)(おか)され、寝たきりの生活を()いられている。彼女が体調を悪くしてからもう5年になるか。


「雑炊で我慢してよ。せっかく調子が安定してきたんだから」


 僕はヒカリの横に座り、ヒカリの頭に乗っかったタオルを手に取る。


「乾いてるね」


 部屋の隅にある木桶に張った水にタオルを浸し、よく絞る。


「ねぇオセロ、魔禍(マカ)(びょう)が完全に治ったらさ、イチゴジャム奢ってよ」


「いくらでも奢るよ」


「ホント!? 約束ね!」


「はいはい。だから今は安静にしてね」


 僕は濡れたタオルをヒカリの頭に乗せる。


「ひんやりして気持ちいい~!」


 良い顔色だ。

 一週間前はまだ砂のような顔色だったのに……。

 つい、笑みが零れてしまう。


「それじゃ、僕は〈ノースバース〉に用があるから行くね。ちゃんと寝てるんだよ?」


「りょーかいであります!」


 ヒカリは敬礼のポーズをとる。

 僕は立ち上がり、ヒカリに背を向け扉の前まで歩く。


「オセロ!」


 ヒカリに呼び止められ、振り返る。


「今度、〈ノースバース〉、案内してね」

「……ああ。もちろん」


 泣きそうになった。

 こういった言葉を聞くのは初めてじゃない。でも、今までは夢物語だったその言葉が、今ではちゃんと現実味を帯びている。


 それが嬉しくて、泣きそうになった。



 --- 



 魔禍病。


 それがヒカリの(かか)った病気だ。

 発症するのは決まって10歳の時らしい。魔禍病に罹ると体内の魔力量が大幅に増える。子供の身で大量の魔力をコントロールできるはずがなく、体は強大な魔力に耐え切れず極度の熱、倦怠感、脱水症状を巻き起こす。重度の風邪と認識してもらってもいい。死亡率は90%を超える危険な病気だ。


 何度ヒカリが死地を彷徨(さまよ)ったか……もう数えきれない。


 でも彼女は耐えた。

 耐え切ったんだ。

 今はもう魔力のコントロールができるようになり、症状も緩和してきている。


 本当に良かった……。


 魔禍病が治ったらまずはイチゴジャムを塗ったパンを食べさせてあげよう。

 次は〈ノースバース〉を案内しよう。

 それが終わった後で……この気持ちを伝えよう。


 〈ノースバース〉への道のり。雪の坂道を、こんな軽い足取りで行くのは初めてだ。これまでは『〈ノースバース〉に行ってる間にヒカリが死んだらどうしよう』とか、そんな不安を抱いてしまっていた。


 もうそんな心配もいらない。



――ようやく、僕らの未来が産声をあげたんだ。


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