NO,8: 屍を越えて行け
まさかの連日投稿。奇跡です。
霧が立ち込める古城の中庭。今は寂れていても、かつては美しかったのだろう、荒れた中庭でもどこか趣がある。
が、そんな趣をぶち壊す黒い岩。
絶対に後から置かれた物だろう。
幼稚園児でも分かるぐらい、雰囲気を壊している。
「……禍々しいわ」
「確かに、雰囲気の壊し具合は恐ろしいな」
「趣味が悪いです……」
セイラまで手厳しい。
それ程までにダメな岩。
堂々と鎮座しているけど、ダメである。
「何を言ってるの? ムードじゃないわ」
雰囲気の壊し具合が禍々しい訳では無い様だ。
確かに、異様な感じはする。
「でもこれ、封筒見当たらねぇぞ?」
「潰したら出てくるわ! きっと!」
ミュウさんって自信有り気に言うけど、よく聞くと断言していない。
「取り敢えず、アレン、岩に攻撃してみて」
「……やっぱり俺か」
ため息をつきながら、アレンがいかにも魔法って感じの杖を出す。
ケルトって杖使うんだ。
意外とベタだね。
呪文を紡ぐ。テレビで聞いた事がある言葉。
北欧の言葉だったと思う。スウェーデンあたり。
「砕けろ!」
アレンが叫んで杖を投げる。って投げるの!?
投げられた杖(ほんとは投げ矢)は一直線に岩に飛んでいき突き刺さる……事は無く、弾かれた。
「マジかよ!?」
「アレンが無理なら、私も無理ね」
冷静に判断するミュウさんと、落ち込むアレン。岩は変わらず鎮座している、かと思いきや、黒い何かが岩から吹き出した。
「何あれ!?」
「汚れた呪力、日本でいう邪気ですね」
邪気とは妖怪が放つ気とされる。
だが実際は、汚れた呪力。妖怪ではない。
「何か来るわね」
ミュウさんが言ったと同時に、岩から出てきた邪気がこちらに飛んできた。
「あれも、念から生まれた怪談の類いでしょうね」
「岩に呪力が溜まって何かが起きるのは、ケルトの類いね」
「俺のが効かない訳だ。耐性がある。皆、こっちに来い!」
三人であの岩の正体を見抜く。流石だね。
アレンの周りにに全員が集まると、すかさず四本の投げ矢を四方に突き刺す。
「囲え!」
瞬間、周りに不可視の壁が張られ、邪気を防ぐ。
所謂バリア。
「どうする? 俺とミュウはケルト系だ。耐性持ってるぞ、あの岩」
「私がいきます」
「ダメよ、フラウロスじゃ壊せないわ。投げ矢が刺さりもしなかったから」
「では、他の魔神を」
「ユーキ! 行ってきなさい!」
「うぇっ!?」
セイラの提案を華麗にスルーして、俺を使命。
絶対セイラの方が良い。情けないけど。
「オンミョードーなら関係無いわ!」
確かに西欧魔術と陰陽道は接点が無い気がする。
「いいから見してみなさい! 陰陽道!」
「うわっ!?」
最初に見せた筈だよ。
ってあぁ……バリアの外に出された。
「ミュウ!? 何してんだ!?」
「ミュウさん!?」
事情を知ってる二人はいきなりの行動に驚く。
完全に俺は行かないものと思っていたんだろうね。
なんか悔しい。
あの岩絶対に潰してやる。
「えっと……」
岩を潰せそうな術はないか、頭の中を探る。
「何してんだ!? こっちに早く戻れ!」
アレンが必死に叫んでるけど、俺だってやる時はやる。
邪気が此方に飛んでくる。まず、防御だね。
札を四枚すかさず取り出し、先のアレンじゃないけど四方に飛ばす。
瞬間、結界が出来上がり邪気を防ぐ。
「破っ!」
邪気を防ぎ、すかさず反撃に移る。
黒い札を取り出し、岩に向かって放つ。
「黒天水行」
黒い札から膨大な水が吐き出され、瀑布となって岩を呑み込む。
「うわっ! すげぇ」
「やっぱり派手ね」
「凄いです」
三人とも素直に感嘆し、バリアを消して悠輝に近づくが、
「――!? 全員、下がりなさい!」
突如としてミュウが叫び、咄嗟に全員後ろへ飛ぶ。 飛んだ刹那、今いた場所に邪気が立ち込める。
「しぶといな」
岩は罅が入るもまだあった。
溢れ出す邪気の量が増え、禍々しさが増す。
「あれを!」
セイラの視線の先には、先程まで中庭にいたゾンビ達。
「まだいたの!?」
「気味わりぃな」
「あの岩……何かの文字が刻んであるわ」
「墓石か……」
黒い岩は岩ではなく、墓石。
その下には死者が眠っているのか。
「ゾンビはあそから出てるのね」
「あれは俺等が片付ける。セイラとユウキは岩を」
「分かった!」
作戦を決め、挑む。
これで封筒無かったら訴えてやる。
「フラウロス、焼きなさい」
セイラが命令する。
瞬間、フラウロスの体が燃え上がる。
「えっ!?」
「元々フラウロスは炎を操る魔神です」
そんな事を言い、セイラが前に一歩出る。
さっきと同じく、圧倒的な力を感じる。
「行きましょうか」
――同じ頃、アレンとミュウもゾンビを駆逐する為に、呪文を紡いでいた。
「願おう、ヤドリギの加護の下風を巻き、切り裂け」
「発火」
アレンは樫の木ではなく、ヤドリギの枝を取り出し上に投げる。
瞬間、ヤドリギが砕け、風が巻き、ゾンビを切り裂く。
ミュウは驚く程澄んだ声で呪歌を歌い、最後に呪力を乗せた言葉を言った。すると、周りのゾンビが燃え上がる。
「悠輝さん、私が道を開けます。その間に岩を!」
他の人に頼ってはいけない。
自分も力にならなければ。
「分かった!」
返事に満足したのか、セイラは微笑み、燃え上がる豹に指示を出す。
すると、雄叫びを上げ、フラウロスが岩の周りにいるゾンビを焼き払った。
「今です!」
「ハァァァッ!」
全力で岩に向かって走る。
札を取り出し、五芒星を描き、術を繰り出す。
「破邪煉火!」
――古城の前に一人の男が宙を浮き、何かの紙を見ながら呟く。
「今で6時間か」
男……エドワード・ティーチは学院の職員であり、今年の入学儀礼をどの様なものにするか決めた男である。
制限時間を24時間と設定のも彼であり、6時間程度ではまだ誰もここに来るとは思っていなかった。
しかし――突如として扉が開かれた。
「ほぅ……?」
扉から現れたのは男女二人ずつの四人組。
真ん中にいる黒髪の少年の手には封筒が握られている。
「封筒、持って来ましたっ!」
その少年が握っている封筒を掲げ、自分に向かって言う。
「全員、名は?」
合格者の名前を聞き、持っている紙に書かれた受験生の名前と照らし合わせ、エドワードに笑顔が浮かぶ。
「おめでとう、合格だ。その封筒の中身に入学に関しての説明が書かれた紙が入っている。校舎に着いてから読むといい」
自分がそう言うと、四人の顔が嬉しそうに輝く。
その後すぐに、校舎に向かって歩いて行った。
「予想よりも随分早いな。今年は面白そうだ」
静かに呟くが、すぐにきり替えて次の合格者を待つ。
が、次の合格者はその7時間後だったという。
――エドワードが四人を送り出した数分後、校舎にいる職員達にも一組の合格者達が出た事が伝えられた。
「随分早いな、入学儀礼が簡単だったのか?」
「例年より難しめだぞ」
「ほぅ? では相当な者達だな」
「雑談は構いませんが、準備をして下さい! まだ何もして無いです!」
エドワードと同じく、彼等もまた、まだ見ぬ合格者に期待と興味を寄せるのだった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。 神威です。 まさかまさかの連日投稿、理由は私が風邪引いたからです。学校に行ってないですから、時間ができたんです。 未だに一話がどれくらいの長さにしたら良いか分かりません…… こんな駄目作者ですが、これからもよろしくお願いします。