NO,50: 覚悟無くして護る術無し
護
る
と
奪
う
は
紙
一
重
仁さんに連れられて辿り着いたのは、大きなお屋敷。寝殿造りとか言う様式の建物で、確か平安貴族の家とかがこんなやつだったと思う。
……こんなのがこの集落の中にあったんだね。
「ここは?」
「ここに来た人達が話し合う場として使ってる場所やで。この周りの家とかで今は生活してて、井戸には水があるし、何故か食料もあんねん」
「貴族とその従者がここで生活しとる。どれだけ時間が経っても太陽の位置が変わらんから日にちは分からんけど、来てだいぶ経つらしいで」
中を見回す。
無駄に広い和風庭園には池があり、朱塗りの橋がある。なんか、歴史の教科書の見開きとかに載ってそうな光景だね。
日本人ではないセイラ達には新鮮なんだろう、かなり興味深げに辺りを見ている。
っていうか、俺もこんな場所来るの初めてだし。
「見てアレン、庭に橋があるわよ」
「それならあれ見ろ、橋の先は島があるぜ」
「中島て言うねんで」
松が植えられた道を歩き、本殿に入る。中は土足禁止、靴を脱ぐ。
隣に何人分かの靴があるから、誰か中にいるらしい。
草鞋とスニーカーというミスマッチな組み合わせだけどね。
「お邪魔するでー!」
「ちゃんと挨拶しろや由佳」
適当に挨拶をしてズンズンと中に入っていく大宮さん。そしてそれを諌める仁さん。なんか、彼氏彼女と言うよりは兄妹みたいだね。
冷静な兄と元気な妹、なんかそんな話なかったっけ?
「――!」
「……? どうしたのセイラ?」
急にセイラがビタッと張り付いてきた。
思いっきりしがみついてきて、柔らかいし、シャンプーか何かの良い香りが……って、変態か俺は。
セイラが震える指で床の隅を指す。
……蜘蛛?
「蜘蛛がどうしたの?」
「いえっ、あのっそのっ、わ、私、く、蜘蛛が苦手とうか弱点で……! 蛇とか大丈夫なんですけど、く、蜘蛛だけは!」
「嫌いなんだね」
「……はい。なので蜘蛛の魔神も喚べないんです、強力なのに」
涙目のセイラ。
意外なところで女の子っぽい弱点が分かったね。
蜘蛛が苦手なんだね。
そりゃ苦手かもね、足八本だし、目が多いし、ネバネバの糸出すし。
……でも、あの蜘蛛って家蜘蛛って言って日本人には結構大切にされてる蜘蛛なんだよね。主に害虫駆除してくれるし。
我慢するしかないね。
「どうした? そんなに二人で抱き合って?」
「こらアレン、最近ちょっとセイラは欲求不満なの。空気読みなさい」
「――!!!?」
「抱き合ってって、そんなのじゃないからねアレン。それにミュウさんも変な事言わない、欲求不満って……ねぇセイラ……って、あれ?」
カチーンと固まっていました。顔赤いし、目が物凄く見開かれてるし。
そんなに欲求不満って言われた事に衝撃を受けたの?
張り付いたままで固まられたら動けないんですけど!
「私はそのっ! えっと! く、蜘蛛がそこに! いない!? あれ!? おかしいな!」
ハッとして物凄い勢いで飛び退き、歯切れの悪い説明をするけど上手くいかない。
何故かミュウさんのニタニタ笑いが広がっていく。
顔が悪役みたいになってますよ。
お代官様みたいだね。
ガシッとセイラの肩を掴み、連行。何事かをコソコソと耳打ちする。
なんでこっちをそんなにチラチラ見るの?
ミュウさんが最後に耳元で何かをセイラに呟いた。
するとセイラの顔がボンッと爆発、真っ赤になる。
……何を言ったのかな?
「……何言ってるのかな?」
「俺は純粋にユウキが羨ましい」
「……なんで?」
アレンは一人、ミュウの苦手な物って何があるっけな、とかなんとか言って考えだした。
……脅かすイタズラでもする気なのかな?
そんな事したらアレンはミュウさんにぼこぼこにされそうだ。
「何しとん? 早よ来いや〜」
奥の座敷だろうか、広い部屋の中から大宮さんが顔だけヒョコッと出して呼び掛けてくる。
そういえば何か色々と話を聞く為に来たんだっけ。
四人同時に中に入ると、無精髭が厳つい着物を着た男の人がどかっと座り、その隣にはTシャツやジーパンを着た若い男の人と女の人、多分カップル、更には奥に烏帽子を被った人と釣竿を持ったおじさんまでいる。
座布団が四つ丁寧に置かれているので、これは座るしかないだろう。
「これで全員です」
「了解した」
仁さんが無精髭の人に話し掛け、無精髭の人はゆっくりと頷き、こっちを向いた。
そして両手を拳にし、床、畳につけて口を開く。
「儂は直江信吉、下級の武士じゃ、以後宜しく頼む」
なんか時代劇みたいな感じで名前を言ってくれた。
あ、本物の武士なんだっけ、リアル侍なのか。
そういえば隣に刀置いてるし、ちょんまげだ。
外国人なら「OHー! SAMURAIネ!」とか言って喜びそうだけど、アレン達はどうなのかな?
「見なさいアレン、サムライよ! 本物よ!」
「そりゃ本物だろ、なんたってチョンマゲだぜ?」
「侍……。悠輝さん、侍と武士の違いってなんですか?」
……やっぱりテンションは上がるんだね。
でもちょんまげで侍かどうか判断するのは間違いだと思うな。昔は町の人だってちょんまげだったかもしれないじゃん。
あと武士と侍に違いは無いと思うよセイラ。
「異国の方でござろうか?」
「せや、えっと……どっからやった?」
「イギリスやイギリス、しっかり覚えときぃや仁」
「いぎりすとな?」
いつの時代の侍から知らないけれど、イギリスは知らないらしい。
さっき下級って言っていたし、そもそも外国なんて知っている筈がないか。
江戸の上級武士なら開国云々で知っているかもしれないけどね。
「イギリスからわざわざ来たのに、こんなのに巻き込まれるとは可哀想ね。あ、うちは中畑亜里沙、こっちが」
「中畑大輔だ」
奥に座っていたカップルらしき人達が自己紹介をする、カップルじゃなかった、兄弟かな?
「中畑夫妻、いぎりすとはそんなに遠い場所なのか?」
「遠いわよ〜、海渡らないとダメだもん」
夫婦でした。
若い夫婦だね、新婚さんかな? 新婚さんいらっしゃい?
新婚でいきなりこんな事に巻き込まれる方がよっぽど試練だと思いますよ。
「俺は矢部隆史、見たら分かるやろうけど釣りに来たらこうなった。記念すべき犠牲者第一号やな」
自虐的に笑う矢部さん。
釣りの時に着る、なんだろう、ジャケットとかを着て、釣竿を隣に寝かせているおじさん。
中年ぐらいかな?
「……私は道兼様に使える少将の柳田という」
烏帽子を被った男の人、古典の授業で出てくる絵巻物に書かれている着物にそっくりな物を着ている。
結構小柄だけど目付きは鋭いね。
少将とか言っていたから、軍人なんだろう。
「そうだ。由佳殿、道兼様を見ませんでしたか?」
「見てへんで?」
思い出した様に大宮さんに質問を飛ばし、大宮さんの答えを聞いてガッカリしている。
……なんかこの人も苦労人のオーラを感じる。
今までとは違い、上司に振り回される新タイプだね。
「まったく……また何処かへ勝手に行かれて……。私の気持ちを察していただきたいものです」
「……だそうだ、反省せぇや道兼さん」
「うむ……麿が悪かった」
「……いえいえ、察してくださるのなら――って、のぉっ!?」
今この場にいた人全員が驚いた視線を部屋の一角に向ける。
そこには最初からいましたよ、って感じの雰囲気を出しながら龍さんと、これまた烏帽子を被った人が座っている。
のんびりと二人してお茶を啜っているね。
……いつの間に?
「どうした? 麿達が何か変な事を言うたかの?」
「み、みみみみみみみ道兼様!? いつの間にそちらへ!?」
「はて……いつだったかの龍殿?」
「イギリスとはそんなに遠い場所なのか? って辺りからやな」
……結構最近に来たんだね。
のんびりとお茶をズズーッと啜り、隣の人にこれ何て茶、とか訊いている龍さん。目の端の方で大宮さんが拳を握ってプルプル震えてるのが見える、これは終わったんじゃないかな?
「龍! あんた一体今までどこほっつき歩いて――」
「こちらが由佳の旦那の仁や。尻に敷かれている様に見えるけど、実は主導権は仁が握っているという侮れない奴やな」
「ほほぅ、これが由佳殿の旦那かの? 成程、確かにちと侮れぬ雰囲気を持っておるな」
「旦那やない」
「――話聞けや!」
思いっきり叫んで怒鳴って大変な大宮さんを空気の如くスルーして、二人の会話は止まらない。
この二人凄いね、怖い物知らずだ。
スルーする二人に更に激昂する大宮さん、拳を振り上げたところでやっと龍さんが動いた。
「若奥様、道兼さんが旦那とは上手く行っているか訊いてるで」
「え? そりゃまぁまぁ上手い事行ってるで、って何言わせんねん!?」
「やったな仁」
関西名物ノリ突っ込み、大宮さんの毒気をどんどん抜いていく龍さんはただ者じゃない。
ケタケタと笑う龍さんを呆然した感じで見る俺達残り組。仁さんのみ頭を抱えてため息しているけどね。
「……もぉえぇわ」
「……勝った!」
何を言ってものらりくらりとかわす龍さんに、大宮さんはガックリと白旗を上げる。
ニヤリと笑う龍さん、大宮さんも仁さんも、龍さん自身も慣れている模様。
付き合い長いからこその空気だね。
「ほら、ここに来たのなら何か訊きたい事でもあるのだろう? 何でも訊きんしゃい!」
「龍は黙っといてくれへんか?」
おぉ手厳しいと笑い、お茶を啜って黙る龍さん。
ニタッとした笑顔は顔に張り付いたままだけど、どうやら黙る気はあるらしい。
充分に楽しんだもんね。
「今のを見て察するに、何事かあるのか仁殿?」
「……ある、めっちゃある」
「先ずは、ここにはなんも攻撃して来ぉへんねんな?」
侍の直江さんが仁さんに問い掛け、仁さんが頷く。
すると隣に座っている大宮さんが質問を投げ掛ける。
「……うむ、確かに森に出る物の怪はここでは出ぬ。道兼殿は見た事すら無いそうだ」
「如何にも、麿はその様な物を見た事など無いぞ」
この村は呪力災害の真っ只中にあるっていうのに、全く被害とかは無いらしい。エアポケットみたいな役割をはたしているのかな?
ここに一番最初に来たあの貴族が知らないのなら、一度も現れていない事になるしね。
「森へ誰か今入っとんか?」
「由佳の言う通りや、普段はここでどうするか話し合とぉって言ってたやんな? 数が全然足らへん」
どことなく仁さんも威厳を放ちながら、侍の直江さんに訊く。
相手に呑まれない様にしているらしい。
すると直江さんが困った様な顔つきになり、ため息までついた。
「……如何にも、二人入ったでござる。儂らも止めたのじゃが……」
なんでも森に入って行ったのは直江さんの知り合いの武士二人だそうだ。
その他の人達は、各自自分達が今生活している家に戻っているそうな。
なんでも慣れない事ばかりで疲れているらしい。
……そりゃそうだろうね、普通に生活していたらまず体験出来ない事だしね。
「して由佳殿、陽野殿がいるという事は出会えたのですな?」
「お陰様でな、ありがとうな」
どうやら大宮さんは陽野さんの情報をここで手に入れたらしい。
ニカッと笑ってお礼を言う。それに疲れた感じの顔ながらも答える直江さん。
武士とはいえ一般人、呪力災害の中では流石に危ないだろう。
中に入った人達は大丈夫なのかな?
うようよいたけどね、あの落武者。
それを知ってるのかは知らないけど、きっと心配なのだろう。
「一旦俺らは生活する家決めた方がえぇやろな。由佳はここに来てどんくらいや?」
「まだ時間的には半日やね」
「なら俺が皆さんを案内します」
大宮さんもまだここでは一日過ごしていないらしい。
どうするかと困る仁さんに陽野さんが自分に任せてと言い、すまんなぁと仁さんがお礼を言う。
直江さん達に挨拶をして出ていくのだけど、龍さんはお茶を啜って動かない。
「おい龍、行くで」
「俺は後でえぇ。今は道兼さんと雑談や。でもなんか決まった事があれば後で教えてくれや」
ヒラヒラと手を振って断る。
この人ってどこまでも自由だね。
決まった事は教えろって言う辺りは抜け目が無いけどさ。それでもなんか、不思議な雰囲気纏ってる。
仁さんはそれを聞くと了解や、とか言ってさっさと出ていく。
俺も慌てて出るけど、間際に龍さんが手を振って言った言葉に立ち止まる。
「落武者に気ぃ付けてな」
落武者はここには出ない筈だ、今の言葉はおかしい。出ない事を龍さんは知ってる筈だし、何かあるのかな?
立ち止まった俺に、どしたと訊いてくる龍さんになんでも無いですと答えて部屋を後にする。
なんかまた、嫌な予感がまたしてきたよ。
悠輝達が出た後の部屋。取り残されたというか、残った人達が話し合う。
話し合う事は一つ、以下にしてここを脱出できるかである。
こんな得体の知れない場所に居たら何が起こるか分からない。事実、森には落武者なんかが出てくるのだ。
「……陽野殿もそうだったが、彼らもやけに落ち着いておったなぁ」
「龍を見てみるがよい、呑気に茶などを啜っておる」
「道兼さんよ、俺は呼び捨てで由佳は殿付けか?」
この中で最も若く、最もここへやって来て時間が浅い龍に自ずと視線が集まる。
昌享にせよ由佳にせよ、何故か高校生ぐらいの子供の方が落ち着いているのは些か不自然なのだ。
まるで何度も経験している様な。
「龍君はどうしてここに来たのかしら?」
「俺っすか? 俺はずっと危ないから近寄るなって言ってたここに由佳が入ってったから、しゃあなしに追っかけて来たんです。なんせ神隠しが起きてる場所だったんで」
新婚さんの妻の方、亜里沙が龍に問い掛ける。
ため息混じりに返ってきた答えに嘘らしき物は無いが、しゃあなしでも危険と分かっている場所に追い掛けて来るのは何故だろうか? 警察などに任すという手段もある筈だ。
「危険と分かっていても追い掛けて来たんだね?」
「当たり前やないっすか、仲間ですもん」
今度は夫の方の大輔が訊く。
するとさも当たり前の様な顔をして龍は答えを返す。
どれだけ危なかろうが行く、仲間だから。
当たり前に見えて実は殆どの者が出来ないそれを、この青年は当たり前にこなす。仁と名乗った由佳の彼氏ならまだ分かる。付き合っているのならお互いに大切に思っているから。
しかし、龍は彼氏ではなく友達だ。
そこまでするのか?
「他の奴らも来る言ってたんですけどね、危ないから止めました。全く骨が折れる作業でしたね」
ズズーッとお茶を啜ろうとするが、今まで何度も啜っていたのだ、中身は殆ど無い。
急須を手に取りお茶を注ぎ、今度こそ啜る。
のほほんとした顔だが、しかしその目は修羅場を何度も潜り抜けた目をしている。鷹なんてものじゃない、名の通り、龍の目だ。
「よい心構えよの」
「関白殿に言われるとは、ありがたいっすね」
「麿は関白ではないぞ? 今は兄上がしておるし、伊周殿もおる。麿は摂政じゃ」
関白にもなってみたいがの〜、そう言って道兼もまた茶を喉へ流し込む。
そんな道兼を見て、龍はニヤリと笑って言った。
「体に気ぃ付ければいつかはなれると思いますで?」
「言うな小童、麿もそのくらい分こうておるわ」
二人して笑う。
それを見ている周りの者は、ただ黙るばかり。
何故か会話に入れない。
上級貴族の放つ無形の存在感に圧されているのかもしれないが、ならば何故この青年は普通なのか?
「ほんじゃ、俺も家探してきますんで。皆さんは『絶対』に森には入らんといて下さいね」
そう言ってよっこらせっと立ち上がり、フラ〜っと部屋から立ち去って行く龍。
廊下を曲がり、直ぐに姿が見えなくなると、信吉がふぅ〜っと息をついて口を開いた。
「不思議な青年ですな」
「まったくですね」
釣り人の隆史も同調し、同じく息をつく。
そうかの? と首を傾げる道兼に付き人の柳田がそうですと突っ込んだ。
少しして、廊下をバタバタと走る音がしてきた。
それと同じくガチャガチャとした音もする。
「大変でござる!」
「一大事でござる!」
廊下から二人の鎧を纏った侍が慌ててやって来たのであった。
龍は屋敷を出ると直ぐに屋敷の後ろ側へと周り、隠れる様な感じで空を見上げる。
すると空から一機、紙飛行機が飛んできた。
それを取り、中を広げて墨で書かれた文字を読む。
文を読むにつれて、龍の顔が段々と微妙な顔になっていく。
「面倒くさっ!」
再び折り紙を折り直し、空に向かって投げる。
すると紙飛行機は一直線に空へと吸い込まれていった。
「覚悟無くして護る術無し、面倒やと駄々捏ねたらアカンか……」
ため息一つ、龍はやれやれと歩き出したのだった。
陽野さんに連れられてやって来たのは集落の一角、所謂住宅地みたいな場所。
ところどころの家からは煙が立ち上り、生活感を漂わせている。
「ここら辺に今現在ここへ飛ばされた皆さんが生活しています。柳田さんと藤原さんはあの大きな屋敷ですけどね」
現在空き家になっているらしい家を指差し、ここなんかはどうですかと訊いてくる。
見た目は何も変わらない。
陽野さん曰く、中身も変わらないらしい。
試しに扉を開けて、引き戸だから開けるって言うのか分からないけど、中を見る。
土間の奥に畳の部屋、その中心には囲炉裏、土間には竈があり、陽野さん曰く更に奥には御衛門風呂、裏には井戸と薪置き場。
中々良い家、なのかな……?
「家は江戸ぐらいの造りとちゃうか?」
「やな、ホンマにぐちゃぐちゃや」
相変わらずのインテリな会話。
大宮さんとかはあんまり勉強が凄い様には見えないんだけどね……失礼だけど。
髪染めてるし。
「ニホンってこんな家なのね……。エコね、流石に環境立国は違うわ」
「絨毯とかないのか?」
何を勘違いしているのかミュウさんとアレン。
今の日本の家がこんなのじゃないに決まってるじゃんか!
電気もガスも無い筈無いじゃんか!
普及率99%なんだよ!?
「それじゃあ私と仁はここにするで。一旦休憩してからまた話し合おうや」
「俺はあっちのがえぇんやけど」
「どこも変わらんわ」
仁さんには決定権は無いらしい、手を引かれて家に連れていかれる。
ここら辺はアレンにそっくりだ。
「では、俺の家はここなんで。何かあったら呼んで下さいね」
そう言って陽野さんはソウと震電さん、巽風を引き連れて向かい側の家の中へ消える。
俺達四人だけ取り残されたね。
どうしようかと思う中、急にミュウさんがセイラの肩に手を置き何かを呟く。
「……」
「――!」
何を言ったのかは知らないけど、何故かセイラの目が見開いた。
こっちをチラチラ見たりしてるし……
何を言ったの?
「じゃあ私とアレンはこっちのにするから、セイラとユーキは隣にしなさいよね」
「えっ!? あのっ!? まだ私何も!」
「いいから! ほらアレン! 行くわよ!」
「ふ、二人きり……」
ミュウさんに手を引かれてアレンも家の中へと吸い込まれる。
なんかデジャヴ。
しかもアレン、何を呟いてた? 二人きりなんて珍しくないでしょうが。
「……」
「…………」
「うにゃ〜〜」
何故か生まれた沈黙。
今まで器用に肩の上で寝ていたモモが起きて鳴いた。
この空気をどうしろと?
「と、取り敢えず中に入ろうか?」
「……(ブンブン)」
物凄い勢いで首を縦に振るセイラ。
……何を言われたのかは知らないけど、大丈夫なのかな?
引き戸を開けて土間の奥にある畳の勉強に靴を脱いで入る。
久々の畳は落ち着いて良い感じだけど……
セイラがぎこちな過ぎてなんか変。
あ、土間と畳の部屋の間にある段差に躓いた。
「――!」
「……大丈夫?」
距離が近かったからどうにか受け止める事は出来た。
因みに肩に乗っていたモモは囲炉裏の前で興味深そうに中を覗いている。
中には灰しかないからね。
「――!? ――! ――!!!?」
目を見開いて訳分からない声無き声を上げて、固まった。
顔が真っ赤、そんなに躓いた事が恥ずかしかったのかな?
「……大丈夫? オーイ! 聞こえてますかー?」
「――!? だ、だだだだだだだだだ大丈夫です! 問題無いです! 元気いっぱいです!」
「……そう?」
頬っぺたをペチペチと叩いて生きてるかどうか確認してみる。勿論優しく。
なんかショック死してそうだし。
……うわ、頬っぺた柔らかっ!?
するとなんとか生きていたセイラが覚醒、ズザァッと離れ、大丈夫だと言いながら仕切りに頷く。
なんかそんなに勢い良く離れていったら俺が悪い事でもしたみたいだ……
ちょっとショック。
「ご、ごめんなさい……」
「いや、別にいいけどさ」
シュンとして端っこの方に座るセイラ。
何がそんなに申し訳なかったのかな?
もしかして物凄い勢い良く離れていった事?
「ミュウさんに何を言われたの?」
「……え? あ、えっと、そのぉ……」
珍しく歯切れが悪い。
あちこちに目が動き、なんか隠してる?
「どーもー! セイラちゃんに悠輝くん! 龍やでー! ちょっーと表に出てくれへんかなー? 大変な事になってるから! あ、でも絶賛子作り中なら出なくて構へんでー! 葛城夫妻は現在第二子の子――「「誰がんな事してんねん!」」――グフッ!?」
なんか外から龍さんの声が響いてきた。
大変な事らしいけど、今さっき言った事の方が大変だと思います。
「第二子どころか一人もおらんわ!」
「なんと!? おい仁! あんだけ積極的に行けと言ってんのに! ドSで構へんって言うたやろ!」
「余計なお世話や!」
外から途方も無くどうでもいい会話が聞こえてくる。本当に何か大変な事があったのかな?
ただたんにこれを言いたかっただけじゃないのかな?
「どうするセイラ?」
「……子作り……」
あ、また固まった。
これはダメだ、セイラの方が大変な事になっている。
何が大変ってこれしかないでしょう?
「おぉ!? 出てこぉへんな二人! 申し訳ない! 二人が大人の階段を上って――「んな筈無いやろ!」――ゴハッ!?」
なんかありもしない、盛大な勘違いをされそうで怖い。
セイラを見てみると、未だに硬直状態。
これはダメだ。
セイラー、と声を掛けてみる。するとヒャイ!? という舌を噛んだ様な答えが返ってきた。
……多分これでよし!
「外に出るよ?」
「大丈夫です! まだ私達には早いです!」
「……どっちなの?」
よく分からない答えが返ってきたけど、セイラは靴を履こうとしているので大丈夫なのだろう。
モモを呼んで肩に乗せ、外に出ていく。
大変な事とはなんなのだろう?
新型って嫌ですね。
めっちゃしんどいです。
そんな鬱な神威です。
寝込みながら見た、今はEXILEと合体して無くなってしまった、J,Soul Brothers のFREAKOUT! のPVがめっちゃ格好良いというのを再確認。
あんな風に踊れたらさぞ気持ち良いのだろうな……
さて本編。
なんだか全く迫力も何も無い今回。
取り敢えずこんな感じの人達がいますよーって感じです。
道兼さんの七日関白は有名かもしれません。
体は大切に!
次回からはちゃんと戦闘に入れればいいなと思います。
それでは!
感想などを送っていただければ幸いです。