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資料  作者: 神威 遙樹
52/86

NO,48: Cruce hilom

   結   交  

 故 べ 絡 差 糸

 に ば ま す と

 結 共 れ れ は

 婚 に ば ば 繋

 と 道 友 出 が

 い を と 会 り

 う 歩 な い を

 の む る   表

 だ       す



 鬱蒼と繁る森の木々。

その中を駆ける影一つ。

首を動かし左右を見ているから、何かを探している様に見える。

暫く何かを探して森の中を駆け回っていたが、急にビタッと停止する。

男にしては長く、ボサボサで上に逆立っていたりする髪を掻き上げ、はぁ〜っと息を吐く。


「……おらへん、仁も由佳も全然や。村っぽいとこにおらへんから森ん中に入ってみたけど、迷たな」


 手に持ったフライパンをクルクル回し、薄暗い森の中を見回す。

勿論誰もいない。

鳥の囀り《さえずり》すら聞こえない、静寂なる森の中。


「……アカン、やっぱ運尽きたな。今日の目覚ましテレビの血液型占い、O型は一位やったんやけどなぁ……」


 やれやれと首を振り、ラッキーカラーのピンクのもんを持ってへんからかなぁ、とか呟く。

そんな男――龍の真後ろの草がガサガサと動き、音を立てて誰かが出てきた。


「おぉ仁やん! ……って、最悪や」


 パッと直ぐ様振り向き、適当に名前を呼んでみるが相手が違う。

彼が今最も出逢いたくなかった存在、即ち呪力災害で出てきた落武者である。

しかも三体、刀を振り上げガシャンガシャンとボロボロの鎧で音を立てて歩いてくる。


「……あかん、今は春照すいじょもおらへん。こりゃマジで運尽きたな」


 フライパンを先頭の落武者に叩き込み、後ろの二体に札を放とうとする。

が、先に矢を射ってきた為未遂に終わる。

追撃で放ってくる矢をフライパンで叩き落とし、振られる刀をギリギリで避ける。

動きは悪くないが、これでは持ちそうにもない様に見える。

案の定数分後には膝に手を置き、肩でハアハアと息をするハメになっていた。


「……アカン、やっぱ運尽きた」


 肩に手をついた時点で勝負は見えた。

一人の落武者が刀を大上段に振り上げ、龍を真っ二つにするべく斬りかかる。


「……なんちゃって♪」


 刀が振り下ろされるその瞬間、三本の雷が落ち、落武者に直撃。

落武者は炎に包まれる。

 悲鳴も上げずに崩れ落ちる落武者を見ながら、龍がニヤリと笑って呟いた。


「大丈夫ですかぁ!?」

「……やっぱ血液型占いは正解や。今日はついとぉ」


 クルリと振り返ると、一人の高校生くらいの少年と、犬だか馬だか分からない生物が一匹、こちらに慌ててやって来るところだった。


「……さて、本日の騎士ナイト様は彼やな」


 少年に見えない様に、ニヤリと唇の端を吊り上げて笑う龍なのだった。










「……まだなのかしら?」


 大宮さんに着いていって十数分。村みたいな場所を通り抜け、村の周りにさながら学院の森みたいにぐるっと囲う様にある、やっぱり森の中に入ってしまった。魔術関係の物の周りにはどうしてか森が絶対ある気がするね。


「確かにこっちの森ん中に入って行ったって聞いたんやけど……」

「獣道よ、ここ。これじゃあすれ違っても気が付かないじゃない」


 森の小道を歩いているのだけど、獣道。

木の枝とかが服に当たる。

人が歩いたことない道だと思うね。


「せやけど道言う道はここぐらいしか無いんやし」

「魔術師にそんな常識通じないわよ。ここに入ったのなら多分、浄化が目的の筈よ」

「どういう意味や?」

「要するに世間一般の『道』で行ける様な場所に核があると限らないの。ロンドンではテムズ川の中だったでしょ?」


 核のある場所なんて適当だ。それは実際に体験した呪力災害でもそうだし、人から聞く話でもそう。

嬉々として話すミラ先輩が頭の中で蘇る。ミュウさんの誕生日に何故か沢山聞かされた。

内容は『ドカーン』とか『ザバーン』だとか擬音ばっかだったため今一理解出来なかったけどね。


「……確かに。せやったらどうやって探すねん?」

「アレン!」

「……やっぱり俺か。自分も出来るのに……」


 素直に認め、ならばと質問してきた大宮さんにミュウさんはすかさずアレンの名前を呼んだ。

呼ばれたアレンはため息をつきながらポケットから小さな穴が空いた石を取り出した。

それに糸を巻き、プラーンと手に吊るした。

小言を言っているけれど、実は本心では頼られて満更でもなかったりするんだよね。


「……何しとん?」

呪的探索ダウジングよ。水脈あてる為に鉄の棒持ったりするでしょ? あれと一緒よ」


 プラプラと揺れる石を見るけど、そんな何かを探索してる様には見えないね。

ホントにちゃんと探してるの?


「ついでよ、セイラ、カイムを飛ばして。ユーキ、モモ出して」


 ピッピッと指示を飛ばすミュウさん。

別に誰がこの班のリーダーとかは決めてないけど、間違いなくミュウさんだね。

勝手になんかそうなってるし、一番向いてると思う。

リーダーシップは抜群だ。

……アレンの組織はミュウさんが継いだ方が良くないかな?

いや、どうせ華やかにゴールインしたら実権はミュウさんが握るか。

 名指しの指令が飛んで来たのでセイラはカイムを再び喚ぶべく歌の様な呪文を紡ぐ。

何度も聞いてるけど、未だに何語か分からない。

 そんなセイラの隣で俺も一枚の札を取り出して宙に放る。

セイラの様に長くて複雑な呪文が要らないのはラッキーだ。

逆に言えばセイラの魔神みたいに特化した能力は持って無いって事だけどね。


「うにゃ〜〜」

「顕れなさいカイム、地獄の鋭敏なる総裁よ」


 セイラの周りの風が巻き、一羽の鴉が姿を顕す。

その隣ではポンッという音と共にモモが出てくるけど、カイムの顕現と比べれば全然迫力が無い。

地味というか、強そうに見えない。大陰もそうだけど、もう少し凝った登場は出来ないのかな?

あまりにも地味過ぎる。


「カイム、お願いします」

「……了承した」


 セイラはさっさとカイムに指示を出して空に放つけど、モモはどうすればいいのかな?

森の奥にでも行ってもらって視覚共有するのかな?


「ユーキはモモと視覚を共有して探すのよ」

「やっぱり?」


 何も動かない俺を見てミュウさんが言う。

予想通りだから別にいいけどね。

それに普段はモモを放し飼い状態で、それに視覚を共有したりする練習もしている。失敗は……しないでしょ、多分。


「それじゃあモモ、森の――」

「なんこいつ!? めっちゃ可愛ええ!」

「うにゃ〜〜〜〜!?」


 ……指示を出そうとしたけれど、モモの全世界の女子に通用すると思われる『可愛さ』という能力が大宮さんのツボにドストライク、思いっきり抱き着かれて身動きが取れない。

モモ本人、もとい本虎は嫌がっているんだけどね。


「た……助けてマスター! 死ぬにゃ! 窒息死するにゃ!」


 声が出せてる時点で窒息死の可能性はゼロだよ。

刑事ドラマとかで絞殺される被害者は皆、声も出さずに目を見開いて死んでるでしょ?

そもそもモモは俺が死なない限り何度でも復活出来るしさ、死ぬ事は無いんじゃないの?


「喋るんや!? うわっ! この猫欲しい!」

「と、虎にゃ……!」


 本虎曰く窒息死寸前なのに、そこはしっかりちゃっかり訂正するんだね。

そんなに猫と虎って違うものなの? どっちも猫科じゃん。

虎猫って種類もあるしさ。


「そっか〜、虎なんかあんた、嘘は泥棒の始まり言うからあんまついちゃアカンでぇ」

「……! 嘘じゃないにゃ! ま、マスター! 訂正をぉ!」

「……大宮さん、こいつ虎ですよ。後そろそろこいつ返してくれませんか?」


 そろそろ止めて欲しいよねこの展開。

マイワールドからカムバックして欲しいよ大宮さん。

モモが涙を流してるからね、自分は『虎』だって。


「……しゃあないなぁ。はい悠輝君」

「……どうも」

マスター〜!」


 猫、じゃない虎だ。

……ともかくモモは虎にあるまじき格好で俺にしがみついて泣く。

ホントに虎なのかな?

泣き声『にゃ〜』だし。


「モモも開放されたし、そろそろユーキ、仕事お願いね」

「分かってるよ」

「……いや、ユウキは別にモモを使わなくてもいいぜ。見つけた」


 未だ泣き喚くモモを使えというミュウさんは鬼かもしれないけど、元々そのつもりで出したんだし断る事は出来ないし、しない。

が、どうやら先にアレンが発見した模様。

よく見ると糸の先でぶら下がっていた石が森の奥の方を指している。

重力に逆らって、指したまま宙に浮いてるのは流石は魔術だね。


「魔術行使中か? 呪力を使ってるな」

「……カイムから連絡が来ました。なんでも魔術師に攻撃されたそうです」

「大丈夫なの、カイム?」


 攻撃されたって……完全に敵と思われてるよね。

確かに魔神って言うくらいだからカイムも普通の鴉よりも厳つく見えるけどさ。紛らわしいのかな?


「まぁ魔神みたいに反則級の『使いアガシオン』じゃ間違われて攻撃されるのも仕方無いわね」

「退くように言いました、間違って殺してしまうかもしれませんので」


 間違って殺すってなんだろね。

恐るべし魔神、格が違うね。伊達に『神』って文字が入ってないよ。

上から何かの羽ばたく音がして、一羽の鴉が下りてきた。勿論カイムだからね。

優雅にセイラの肩に乗り、危うく本気で消しに行きそうだったと呟く。

恐ろしいね。

 カイムが戻って来て直ぐに歩き出す。

目標の魔術師がどこに居るか分かったんだから当たり前か。

カイム曰く、若者だったそうだ。

 歩き始めて数分、狭い道が開いて広場の様な場所に出た。

ここだけ木が生えておらず、キャンプファイアーとかをする場所に最適だよ。

その広場の中心に二人の男の人と一匹の何かよく分からない生物が立っている。

……って、あれ龍さんじゃないの?

カフェ・ルミナリエの。


「あぁ!? なんで龍がおんねん!?」

「……! 由佳やん! お前いきなりなんやねんそれ!? こっちは命懸けてお前探しに来てんぞアホ! 仁なんてお前、心配で胃に穴空くんちゃうかと思うくらい焦ってたんやぞ!」


 いきなり大宮さんが驚きの声を上げながら疑問をぶつけ、龍さんが跳ね返す。

……全面的に由佳さんが悪いと思います。


「訳分からん落武者に囲まれて危うく死ぬところやってんぞ! ってか仁どした!?」

「仁も来てんの!?」


 広場の真ん中とはしっこで言い争う二人。

なんとも言えない空気だよ。


「見っけたぁ!」

「仁!?」

「おぉ、流石は幸運の女神にベタ惚れされてる仁や、こんな訳分からん森ん中にいる由佳とばったりなんて」


 更に広場の別の場所から一人の男の人が現れた。

頭の上に枝だの葉っぱだのをくっ付けている辺り、道とは呼べない場所を走って来たのだろう。可哀想に……


「龍やん!? お前無事やったんか!」

「おぉ! 死亡フラグをへし折って生きてるで! 代わりにフライパンが重症やけどな!」


 手に持ってるフライパンを掲げて龍さんが答える。

確かにボロボロだ、絶対に調理に使っちゃいけないだろうね。

 仁さんは良かったぁ、と言いながら胸を下ろす。

そしてこっちへ猛ダッシュ、由佳さん目掛けて跳躍、神速の踵落としを見舞う。

それを由佳さんは手に持ってる薙刀で受け止めた。

……いきなり修羅場ですか?


「お前どんだけ皆に心配掛けたと思っとんねんダボ!」

「ちゃんと心配せんでいいってメール送ったやろ!」

「誰ん所にも来てへんわ!」

「嘘や! ちゃんと送った……ってあれ? 送信失敗しとる……」


 ガヤガヤと言い合う中、メールを送ったか送ってないかの話題となる。

送ったと言い張っていた大宮さんだけど、携帯を取り出して確認してみると送信失敗だったらしい。

やっぱり俺は大宮さんが悪いと思うよ。


「おかしい、私が掛けた呪い《まじない》をすり抜けて来るなんてあり得ないわ」


 そんな言い争いの中、ミュウさんが一人疑問を口にした。

確かに森には呪いが掛かっていたし、俺達が入った時にはまだ龍さん達は森に到着していなかった。

となると呪いを突破して来た事になる。


「ちょっと! 貴方達はどうやってここの中に入ったの!?」


 腑に落ちないミュウさんは遂に言い争いのただ中に突入、何かの会話を中断させて質問を飛ばす。

まぁ確かに不思議だ。一流の魔術師たるミュウさんの呪いを突破したんだ、偶然では少し説明不足だと思う。


「俺とこいつは一緒に先頭を歩いてたんやけど、何故か皆はぐれて、結局辿り着けたんわ俺達二人だけなんや。まぁ中にこんな村とか別の森とかと繋がってる訳分からんダムがあったんや、幸運の女神にベタ惚れされてる仁のお陰で来れたと言ったらえぇか?」


 サラッと龍さんが答える。そういえばさっきも仁さんは超幸運体質みたいな話は出てたけど、ホントなのかな?


「仁は確かに凄いで。私がロンドン行けたんも仁にクジ引いてもらったからやしね」


 大宮さんも続けて言うが、それはどうかと思うよ大宮さん。

利用したらダメでしょ。

せめて仁さんもロンドンに連れてこればよかったのにね。


「それでも無理よ。私を嘗めてもらっちゃ困るわ、ねぇアレン?」

「俺もこいつの呪い解けないからな……」


 アレンがいつか言っていた事がある。

攻撃や防御などの戦闘においてはアレンの方が確かに勝る、だけど補助や呪い、その他補佐的な術はミュウさんの方が高度で複雑な物を使えるそうだ。

一概にアレンの方が強いとは言えないらしい。

総合力ではアレンの方が強いとミュウさんは言っているが、アレン曰くミュウさんと戦うのは遠慮したいそうだ。別に惚れてるからじゃなく、自分もただでは済まないから、っていうかぶっちゃけ勝てるか分からないかららしい。

まだまだ二人共に未熟だから潜在的な物は眠っている、埋蔵量はアレンの方が上とも。

俺としてはこのレベル、この実力で未熟なんて言わないでほしい。

ともかく、呪いではミュウさんの方がアレンより上なのだ。


「あの〜、俺を置いてきぼりにしないで下さ〜い」


 ここで当初の目的である魔術師(多分)の人が気まずそうに声を上げた。

……龍さんと仁さんの登場ですっかり忘れていた、ごめんなさい。

 改めてよく見てみると、どこかの高校か中学の制服を着ている辺り学生なんだろう。

見た感じは高校生かな?


「あぁ……すっかり忘れとった」

「……やっぱり……」


 龍さんも隣に立っているのに忘れていたらしい。

物凄く可哀想だ。

ホントにごめんなさい。

ガックリ肩を竦める魔術師(あくまでも予想)の人に心の中で謝りたおす。


「この人は陽野昌享ひのまさゆき君、俺の命の恩人やで!」

「……それ俺の台詞じゃないですか?」


 龍さんが高らかに隣の人、もとい陽野昌享さんを紹介する。

人の台詞を奪ってはいけません。

困ってるじゃん陽野さんが!


「命の恩人て、やっぱお前何があったんや!」


 命の恩人というフレーズにピクッと反応する大宮さん。

自分を探しに来て死にかけたって事だから、やっぱり申し訳なく思ったのかな?


「あぁ、それはですね――」

「な〜んか得体の知れん落武者に囲まれてな、助けてもらった訳や」

「――どうして俺の台詞取るんですか?」


 ことごとく陽野さんの台詞を奪って話す龍さん。

絶対わざとだよこの人。

顔笑ってるし!


「オチムシャ?」

「死んだ武士の事だよ」

首無騎士スリーピーナイトみたいなものか?」

「……なにそれ?」


 落武者を知らないアレン。そりゃそうか、イギリス人だしね。

……ところでスリーピーナイトって何さ?

なんの妖怪?


「死んだブシね、それってあれの事かしら?」

「そうそうあれ……って何暢気に指差してるの!?」

「じぃーん、後ろに一体なぁ〜!」


 先程の疑問に答えられないまま話題が移ってしまったミュウさんだが、あまり気にしていないらしい。

突然仁さんの後ろに現れた落武者を指差してあれかと訊いてくる。

あれだけど……いち早く気付いたなら仁さんを助けないと!

 龍さんが声を掛けて仁さんも気付く。

既に刀を振り上げた状態の落武者。

間に合うか分からないけど札を放とうと懐に手を入れようとする。

が、ミュウさんに止められた。


「なんで止めるの!?」

「あのリューさんが助けられたという事はあの人は魔術師よ。どんな魔術師か見極めるから、ユーキはじっとしといて」


 なんでやねん!?

人の命懸かってますから!

しかも大宮さんの彼氏だから!

ミュウさんに一瞬止められた事により、絶対間に合わなくなった。

ヤバい、そう思ったけど事態は意外な方向へ。

 仁さんは気付いた瞬間に一気に跳躍、まさかの落武者を飛び越えて後ろを取った。一般人かこの人?

勿論刀は空を切り、落武者は前のめりになる。

その背中に仁さんはあろう事か拳を撃ち込む。

それも何発も。

数発で鎧の鉄の部分が砕け、仁さんは留めとばかりに回し蹴りをお見舞い。

落武者は凡そ五メートルは吹っ飛んで霧の様に霧散した。


「……死ぬかと思た」

「格好良いで仁! 流石は少林寺拳法五段!」

「六段や、龍」


 大宮さんの彼氏は強かった。伊達に大宮さんの彼氏をやってないね。

規格外だよ。

彼女が彼女なら彼氏も彼氏、薙刀の達人と少林寺拳法六段のカップルって……


「……ユカがユカなら彼氏も彼氏ね。あれ一般人なのかしら?」

「……全くだ」

「凄いですね……」

「うにゃ〜〜」


 道理で大宮さんが全く心配した様な顔をしてなかった訳だよ。

普通彼氏の真後ろに刀振り上げた落武者がいたら何かしら心配するよね。

全く心配してなかったよ。


「すっげぇ……」

「おい昌享、ちょっと耳貸せ」


 なんか陽野さんは連れてる生き物と喋っている。

……喋れるんだね、あの何かよく分からない生き物。

使いアガシオンかな?


「……本当に?」

「あぁ、間違いねぇ。あいつらは呪術師だ。見ろ、あいつらの中の一人の肩にさっき飛んできた鴉が乗ってやがる」


 コソコソと話していらっしゃいます。

かなり真剣な表情だから何か気になるけど、ここからじゃ聞こえない。


札か何かだけど、こちらに届く前に不可視の壁にぶち当たって蒸発した。


「なっ!?」

「あら、ラッキーね。これであの人が魔術師って分かったわ」


 何を暢気な!

いきなり攻撃してきたんだよ!

理由は知らないし、そもそもまだちゃんと話してもない。

攻撃される理由が見当たらない。


「ほらな昌享、やっぱ呪術師だ」

「……ホントだ……」

「……なんや? いきなりこの展開?」


 大宮さん、この展開ってどの展開ですか?

それになんで攻撃されたのか分からない。

もしかしてずっと放置されてた事に怒ったのかな?


「魔術師だって事は分かったけど、いきなり攻撃されるとは癪ね」

「保険かけといて正解でしたね」


 セイラはいつの間に結界を張ったのか知らないけど、何はともあれ助かった。

……もしかして肩に乗ってるカイムが原因じゃないの? さっき攻撃されたって言ってたし。

絶対そうだよ!

 そんな事まで考えていないミュウさんは、ハープを持って曲を奏でる。

完全に本気だ……


無言呪歌リーダ、術縛り《ブロケイド》」

「――!?」

「何してんだ昌享! 術使え!」

「――! ――! (喋れないんだよ!)」

「……あら? 意外とあっさり術に捕まったわ」


 恐るべしミュウさん。

二秒で封殺。

どれくらいの実力なのかは知らないけど、見た感じこの様な術に慣れてない気がする。

対魔術師は初めてかな?

それならドンマイ、相手が悪かった。

初対決の相手がミュウさんなら不幸でしかない。

今まで俺が見てきた魔術師の中でミュウさんが一番特殊な術を使うからね。

音楽と歌なんて反則だ、普通に聞いてたら綺麗な曲とかにしか聞こえないのに術なんだもん。


「しゃあねぇな!」

「……解」

「――! 喋れる様になった!」


 なんかよく分からない生き物が何かしようとする前にミュウさんが術を解除、陽野さんは喋れる様になったっぽい。


「さてと、なんで攻撃してきたのか理由を聞きましょうか。また攻撃してきたら次は首を飛ばして永遠に喋れなくするわよ?」


 仮にも数ヶ月一緒に生活してきたんだ、これはもうミュウさんのペースになったとあっさり分かる。

これになればミュウさんに勝てる人など存在しない。

ミラ先輩だって無理だと思うよ。


「……いや、えっと、そのぉ……」









「ほんっとうにごめんなさい!」


 何故攻撃してきたのか理由を話し、頭を下げて謝ってくる。

攻撃する様に指示を出した謎の生き物、ソウは明後日の方向を見て謝る気が感じないけど、多分元からこんな性格なのだろう。

お前も謝れよと言う陽野さんを華麗に無視。

っていうかやっぱりカイムが原因なんだね。

そのカイムはややこしいからとセイラの手により退去されてここにはいない。


「ホントなんとお詫びをしたら……!」

「……まぁまぁそんな謝らんでえぇて、許したるから」

「本当ですかっ!? って、龍さんじゃないでしょう!」


 陽野さんは高校一年の陰陽師らしい。

高校三年の龍さんには敬語を使っているのは当たり前か。

……それよりも、同じ陰陽師なのになんか感じが違う。

連れてる生き物を比較してみる。

あっちはよく分からないけどなんか強そうな生き物。

こっちは虎の子供。

……ダメだこりゃ。


「マサユキはオンミョージなのよね? ユーキ、仲間じゃないの」

「……俺の方がヘボい気がするけどね」


 比べないでね。

間違いなく俺の方が弱いと思うから。

連れてる生き物見てみなよ! この差は何さ!?


「陰陽師かぁ〜。そうや仁、弟子入りしたら?」

「なんでや!?」

「そりゃ仁が陰陽師になったら面白そうにやからや!」

「俺も推薦や!」


 こっちはこっちでガヤガヤと……

誰でも陰陽師にはなれないらしいからね。

意外と門が狭いよ陰陽師。……でもこの人達ならなれそうだ。


「そういえばまだ俺ら自己紹介してなかったよな。俺は護神龍もりがみりゅうや、厳つい名前やけど強くないからな。名前だけとはこの事や」

葛城仁かつらぎじんや、なんか色々と由佳が世話なってて申し訳ない」

「陽野昌享です。一応陰陽師やってます」


 広場の中心に座って各々自己紹介をする。

勿論こっちも自己紹介を返すのだけど、魔術師である陽野さんはセイラ達の名前を聞いても驚かなかった。

新鮮だよ。


「……それで? マサユキはなんでこんなとこに?」


 年上を呼び捨てのミュウさん。

何て言うか、ともかく敬語を使おうよ。

龍さん達には敬語なのに……


「実はこいつが――」


 陽野さんが後ろで寝ているソウを指差して話始める。

曰く、瘴穴しょうけつが開いてるから封じに行けばか野郎と言われて来たらここに飛ばされたらしい。

瘴穴って何さ?


「瘴穴?」

「恐らく霊穴かと……」

 日本人じゃないのにセイラはこの言葉の意味が分かったらしい。

日本人でも分からなかったのにね……

 『霊穴』

それは世界各地を走る霊脈の穴。呪力が噴き出すポイント。英語ではパワースポット、日本語では神佑地しんゆうち

もっと簡単に言えば大きな霊穴がある山は霊山、土地なら聖地。

これが沢山ある街は栄え、その国の首都や主要都市となる。

ロンドン、パリ、ローマ、北京、東京、京都など数を挙げればキリがない。

全部ジュエリー教授が最初の授業で言っていた。

それを封じるのって良いのかな?


「陽野君が住んでる街はちょっと特別やからね、封じなきゃアカンねん」


 自分達の持っている知識では変な事になる。

一斉に首を傾げた俺達に龍さんがニコニコと付け加える。

なっ、と言って陽野さんに振るが、そうなんですかと返されてるし……


「俺も魔術師やってんねんけど――「嘘やん!?」――仁、黙らせぇ」

「……ハイハイ」


 ここで思わぬビックリ発言をした龍さん。

瞬時にそれに飛び付いた大宮さんを仁さんが黙らせた。

どうやら仁さんは知っていたっぽい。


「あぁでもそんな大層なもんとちゃうで、俺はCCダブルシーの首領や。君らみたいに最高峰の魔術師とちゃうからな。それこそ次元が違う。んで、日本の魔術組織にはある話が広まっとうねん。それは天埜あまのって街は特殊って話やねん。封じるとかなんか言ってんねんから多分天埜の陰陽師なんやろ」


 そやろ? と龍さんが問い掛ける。

すると確かに陽野さんは頷いた。

日本にそんな特殊な街があるんだね。


「じゃあ貴方がジンさんをここに連れて来たの?」

「せや。ぐちゃぐちゃに混ぜこぜになっとったけど俺地元やからな、なんとか辿り着けた。変わりに他の奴らとはぐれてしもたけど」


 あり得へん実力やな、とミュウさんを誉める。

たとえCCの首領の人にとってもミュウさんはヤバいらしい。

そりゃ天頂レベルだしね、この三人。特にセイラ。


「『十組織』やろ? なんでこんなとこに?」


 魔術師である龍さんはやっぱりセイラの事を知っていた。

確かに普通に考えればここに俺達が居ることは変だよね。

ともかく今回の学院の事を話し、理解してもらう。


「聞いた仁!? 魔術師の学校やて! 行きたいわぁ!」

「学院からか。手伝いオッケーなら手伝うで、これも何かの縁や。と言っても俺はヘボやから陽野君の方が役立つで」

「いえいえそんな……」


 ニコッと笑って龍さんが言う。

それを聞いてミュウさんの目が光った。

利用出来る物は全て利用するのがミュウさんだ、間違いなくコキ使われるね。

可哀想に。


「有難いわね。なら先ずはここの片付け手伝ってよね」

「……任した仁、由佳、陽野君」


 ミュウさんが周りを見渡しながら龍さんに言う。

が、それを龍さんは周りの人にパス。自分は弱いからと後手に回る。

 周りにはさっき仁さんを襲った落武者だの、馬に乗った武士だのと日本の侍大集合。

生きた心地がしない……


「源氏の騎馬隊やな」

「切り裂きジャックよりも強そうや、おもろいやんけ!」

「ソウ! 寝てないで手伝って!」


 今まで全員座っていたけれど、一斉に立ち上がる。

ハープやヤドリギの投げ矢を持って臨戦体勢に入る。

勿論俺も札を取り出す。肩に乗るモモが邪魔だ……

セイラはカイムに指示を出し、いつもの超豪華なナイフを取り出す。

大宮さんは薙刀を構え、仁さんは拳を握る。

陽野さんは寝ていたソウに声を掛けて自分も札を持つ。

 一瞬だけ辺りが静まり帰る。が、直ぐに馬が駆けて来る。

それは共同戦線が張られた瞬間でもあった。

作「テスト期間中なのに更新、何やってるのか神威です」

フィ「全く何をしているのか……」

作「今から言う事は大切なので読者の皆様、アンダーラインのご準備を」

フィ「何を企んでるのですか?」

作「今編に登場しております、陽野昌享君は三ノ城先生の『其の身に宿りし力と、思いと、契約と・・・』とのコラボと言うやつであります」

フィ「いつの間に……」

作「色々とお世話になってます!」

フィ「ホント、いくら感謝の言葉並べても足りないですよね」

作「という事で、二作品同時に御拝読すれば更に楽しめるかと。

そしてはい! このタイミングで今作品や現在登場している『平清学園』の元、『平清学園騒動記』などの秘話語ります!」

フィ「……もう何も私は突っ込みません」

作「先ずは平清学園騒動記、あらすじ行ってみよう!」


『平清学園騒動記』

 三笠武みかさたけるはかの平清学園高等部の生徒会庶務である。

忙しい日々だが何だかんだで楽しく生活している。

幼馴染の大和千穂やまとちほは生徒会長、親友の金剛蓮士こんごうれんじは書記、騒がしい事この上無い日常。

その他、副会長の武蔵野雪風むさしのゆうか、会計の長門美羽ながとみう、体育委員長、陸奥新夜むつしんや、風紀委員長、大宮由佳、保健委員長、葛城仁、会計補佐の伊勢憲斗いせけんと山城瑠璃やましろるり、生徒会特別委員、イベント企画部の護神龍に柊木千夏ひいらぎちなつなどの個性的且つ規格外の友人達と織り成すコメディー一直線の物語。テーマは『日常』。

作「である!」

フィ「長い……」

作「何人かは本編にも名前出てるよな」

フィ「由佳さんとかですね」

作「はい、次!」

フィ「次はなんです?」

作「『Secret people』」


 村上亮むらかみりょうは幼馴染の氷室綾歌ひむろあやかに振り回されて早15年の高校二年である。この幼馴染はくせ者で、普段は優等生という仮面を付けているが、実際はハルヒ団長並みの不思議追っ掛け人間だ。

追い掛ける為に体のトレーニングを欠かさない、勉強に励むなどの努力を惜しまない。

去年の夏休みは一週間ほど連絡が取れず、やっと取れたので何をしていたのか訊いてみると、「ハワイで銃の練習よ。亮も来たかった?」などと答えやがった。

どこに夏休み一週間を銃をぶっぱなして過ごす女子高生がいるんだ?

そもそもそれは必要なのか?

ともかくそんな奴である。

そして高二の一学期、中間テストが終わった頃。

一人の転校生がかなり微妙なタイミングでやって来た。

名前を五十嵐琴音いがらしことねという彼女はかなりの美少女。

なんて漫画的展開だと思いつつ、実は美人の幼馴染を見てみると、珍しく興味深げに彼女を見ているではないか、これはヤバい。

因みにこいつは美人だが、モテはしない。アイドルとは愛想を振り撒くから人気があるのであり、たんにルックスが良ければなれるものではないらしい。

興味を持った幼馴染に拉致されて、転校生と接触を図ったのが人生のターニングポイントだったらしい。

兄と名乗るが全く名前も容姿も違う神原玄かみはらげんだの、へんな黒づくめに追われるだの、俺の平穏は消えたのだった。

テーマは『偏見』と『平等』


作「である!」

フィ「さっきよりも長い……」

作「この二人の関係はミュウとアレンの元になりました」

フィ「主に振り回されている辺りでしょうね」

作「イエス。そして最後に、私が科学のワークを探していたら発見した一番最初に考えた物語も」

フィ「まだあるんですね……」


『Four swords』

 白浜和樹しらはまかずき、黒井サスケ、赤西修一あかにししゅういち青原白夜あおはらびゃくやは同じバスケ部の親友である。

ある時部活の帰りに四人は急に空間にできた穴へと吸い込まれる。

よく小説とかでありがちな異世界へと飛ばされるあれである。

四人は戦国時代の大陸の、別々の四つの国へと召喚される。

そこで出会った王や姫のような王族、それらを守る騎士達、国民の想いや理想を聞き、四人はそれぞれの召喚された国や人々の為に剣を取る。

やがて彼らは戦場で再び出会い、互いの想いの為に剣を交えるのだった。

テーマは『信念』


作「書ききった……」

フィ「最初以外微妙に暗いです」

作「気にするな」

フィ「これのテーマは?」

作「これ? これはな」


『精霊の瞳』

 本編である。

テーマは『絆』と『正義』、あと『善悪』


作「だな」

フィ「一番多いですね」

作「まぁな」

フィ「実は絵もあるんですよね」

作「……うん」

フィ「アップ出来なくて困ってるんですよね」

作「うん……。因みに絵でのキャラの特徴は、ミュウはスカートを穿かない、セイラはワンピースやスカートを穿く事もある。基本的にファッションはテレビに出てるモデルや俳優さんのをアレンジ、プラス、ローブ」

フィ「それではまた。感想などを送っていただければ幸いです。コラボ作品もよろしくお願いいたします」

作「ついでにもう一作品の為に、どなたか東北弁を私にレクチャーしてくれませんか? 教えて下さい東北弁……こちらも気が向いたらお願いいたします」

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