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資料  作者: 神威 遙樹
22/86

NO,21: Obscurite ciel

『キャラの元になった人達』

第二話


「なんや神威、眠そうやな。昨日なにしとってん?」

「なんとなくBSでサッカー見てて寝不足〜」

「おっ、神威も見とったん? 俺も見てたで!」

「やっぱヨーロッパのサッカーは半端ねぇな」

「当たり前や! 一昨日は見たか? あれも凄かったで! 今この地区では〜のチームの○○がヤバくてな、これがまたアルゼンチンの代表なわけや! それから△△の□□はこうやし、◇◇のあれはこうやし☆☆のこれも……etc」

「へ……へぇ?」


江原、サッカー好きは彼譲り。

 月の光がうっすらと辺りを照らしだし、風が森の木々を揺らし、ざわざわと音が鳴り続け、一つの影が浮かび上がる。


「……狩猟場テリトリーに獲物が……意外と多いな、増援か? まぁいい、今夜は楽しめそうだ」


 その影――木に寄り掛かった男が笑う。その声は人とは思えない程冷たく、狂気を含んでいていた。






「今晩は昨晩と違い、二人組で動きましょうか。そちらの方が何かと便利です」


 そう言って周りを見渡すのはレメティア首領、レイラである。

昨日の反省をいかして二人組にするらしい。これなら何か一人では対応出来ない事が起こっても大丈夫、との事である。

 その指示に従い全員が二人組を作る。今日は人数が偶数なので余りはでない。


「それでは行きましょうか」


 自信たっぷりな声音でレイラがそう言うと、昨日と同じく集まった人影が一斉に消えた。




「……近くにくると嫌な雰囲気だな」

「だから俺は嫌だと言ったんだ……」


 レイラ達が森に消えた一時間後、ミラに率いられて悠輝達が森の前にきた。

 森を見てテセウスはボソッと呟き、ルイスは愚痴って頭を抱える。


「うわぁ……」

「こりゃヤバそうだ」


 悠輝も不穏な空気を感じとり、ちょっと後悔する。アレンはのんびりそんな事を言っているが、顔はちょっと引き吊っている。


「んじゃ〜皆、ここからは班行動だよ〜。生きてまた会おぉ〜」


 クルッと後ろを振り返り、そんな事をのたまう。

彼女の目は、新しい玩具を買ってもらった小さい子供も様にキラキラと輝いていた。


「そりじゃあね〜!」


 そう言い残して全速力で森の中へ走って行く。

それに続き無言で後を追うテセウス。


「ちょっと待てよ!」

「それじゃあ皆、気を付けてね」


 シンは急いでその後を追い、ディアナは全員にそう言い残して走って行った。


「さて、先輩達を見送ったし、帰るか!」

「何言ってるのルイス。私達も行くのよ」

「いやいや、それはごめんだ……っておい!? 待て、引っ張るな! アァァァ〜!」


 踵を返して城に帰ろうとしたルイスの襟元をアーニャが掴み、引き摺りながら森へ入る。その後に残りの二人も続いて行った。


「さて、私達も行きたいところなんだけど……なんでフィーネさんが居るのかしら?」


 ミュウの視線の先にはフィーネ。いつもと変わらず無表情で立っていた。


「ミュウ様達の行動はある程度読めました。止めても無駄と判断し、ならばついていこうと考えました」


 そう言って一歩前に出る。どうやってもついて来る気だ。


「……仕方ないわね。フィーリア、森の中の案内は貴女に任せるわ。森の中で一番おかしい場所に案内して。この呪力災害の元凶、『禁忌』を叩きのめすわよ」


 何気に物凄い事を宣言して、ミュウは森へ入って行く。フィーリアも今まで隠れていたローブのポケットから飛び出てセイラの頭の上に乗る。


「ほら皆! 早く来なさい!」


 ミュウに促され、悠輝達も森へ入って行くのだった。




「あぁ〜もう! なんで私がこんな面倒な仕事しないといけないの!?」


 イギリス、ロンドンのとあるバー。金髪の女性がカクテルを飲みながら愚痴をこぼす。


「まぁそう愚痴ってはいけぬ、仕事なのだからのぉ」

「うわぁ〜ん、だって〜」


 もう一回カクテルを流し込み、隣にいる黒髪を五分刈りにした男に抱き着く。


「こらこらそう酒に酔って抱き着くでない。変に期待してしまうではないか」

「酔ってないわよ〜。それに……別に期待しても良いというか、なんて言うか……」


 男は抱き着いてきた女性の背中を擦りながらなだめる。

対する女性は結構勇気を出して想いを言ってみるが、後半をどもってしまう。


「ふむ……なんか言ったかの?」

「知らない!」

「うむ?」


 男は首を傾げる。

そんな男を見て女性は微笑み、カクテルをもう一つ注文する。


「仕事に行く気ないのぉ……」

「久々に会ったんだからいいじゃない」


 男はため息をついてそういうが、女性はカクテルを飲みながらそんな事を言う。


「それで……わざわざ私に会いに来てくれたんだから何か話があるのでしょう? まさか本当に私に会う為だけに来てくれたなら嬉しいけど」

 幾分かまともな顔でそう言う女性。さっきまでが嘘の様な切り替えである。


「ふむ……察しがいいの、流石だの」


 やっとまともな顔になった女性を見て満足したのか、微笑みながら話を始めた。






 ――森の中、木々を避けながら二つの影が走っている。


「何よこれ……まるで今年の『入学儀礼イニシエーション』だわ」


 銀髪を靡かせてそう呟くのはジュエリーである。全速力で走り、時たま後ろに向かって術を放つ。


「ちょっとミスター江原! 貴方も手伝って!」

「この程度、貴女一人でも問題ないでしょう」


 前を走る江原にそう言って頼むが、返ってきたのは拒否の言葉。

その言葉を聞いた瞬間、ジュエリーの何かがブチりと音をたてて切れた。


「そう……だったらタケシ、貴方も敵よ!」


 そう言って前にも術を放つ。ジュエリーより放たれたヤドリギの矢は江原のすぐ後ろに飛んでいくと、大量の蔦を生やし江原を縛り上げる。


「おおっ!?」


 突然の事に対応出来ず、江原は縛り上げられたまま地面に倒れる。


「さて……タケシ、貴方はどの様に痛めつけられたい?」

「後ろの連中はどうしたのですかな? ジュエリー殿?」

「心配ご無用。当分来ないわ」


 自信たっぷりに言うジュエリーに疑問を抱き、ジュエリーの後ろを縛り上げられながらも首をのばして見る。

 後ろは木々が枝を絡ませ合い、自然の壁を作り上げていた。


「……ぉぉ」

「さぁて、どうして欲しい?」


 ジュエリーの猫なで声に江原は顔を真っ青にする。尋常じゃない殺意だ。


「貴方は昔からいつもいつも……」

「ま、待たないかジュエリー殿! 貴女は学院の教授になるにあたって公私のメリハリをつけるべく、昔の様な気さくな関係かつそんな感じでの会話は止めにしようと言ったではないか!?」


 江原は真っ青になりながらも必死でジュエリーを抑えようとする。

 元々江原とジュエリーは、この学院の卒業生であり同時の最優秀班の仲間である。なので旧知の仲なのだが、ジュエリーは先程江原が言った理由により他人行儀に接していたのだ。

……理由は他にもあるらしいが。


「面倒になったわ」

「何を!?」


 ゆらり、とまるで幽鬼の様に江原に向かって歩いて行く。


「貴方はいつもいつもサッカーの事ばかり……」

「怒る対象が変わっている!?」


 いつの間にか怒る対象が変わっている事に若干戸惑う。怒りのせいでなにがなんだか分からなくなっているのか?

縛り上げられ、地面の上で身動きが取れない江原の蔦に絡められた胸元を踏みつけて何事かを呟いている。 不気味な雰囲気に呑まれがちな江原だが、ある事に気が付いた。


「……ジュエリー、お前いつの間にかセクシーな下着を穿くように……ってしまった!?」

「――!?」


 顔を真っ赤にして数歩、物凄い早さで下がるジュエリー。

彼女は今、そこまで短くはないが、一般的にはミニスカートと呼ばれる物を穿いている。偶々江原の下から見上げる目線の先に入ったのである。

 江原は見えないが、今彼女は肩をプルプルと震わせ、その顔は人よりも鬼と形容した方がいい。


「いや、あの……なんだ、た、偶々なんだ。不可抗力なんだよ、それについて分かって欲しいなジュエリー……あ、アハハハハ」


 顔は見えなくても雰囲気で分かる。彼女は今本気でキレている。

 必死に和やかな雰囲気を作ろうとするが、空回りする。


「……殺す」


 ……この声だけで子供と老人は殺せそうな程冷たく、殺気が半端ない。

 スッと懐から樫の木の矢を取り出し、倒れている江原の側に突き刺す。

すると矢は一気に成長し、一本の木になる。その途中で縛られている江原を一本な枝に引っ掛け、ちょうどジュエリーの目線の高さに引き上げられる。


「お、お慈悲を。愛しのジュエリー様。そ、そうだお前モンブラン好きだろ? 旨いモンブラン知ってるから今度連れてってやるよ。勿論俺が奢るから」


 ジュエリーの顔を見て、更に顔を青くする江原。


「……タケシ」


 するとニッコリとジュエリーが微笑む。


「……ヒィィッ」

「問答無用!」

「ぎゃあああああああ」


 森に悲鳴が響き渡る。

木に吊るされた江原の顔は真っ赤に腫れていた。勿論、余りの恐怖と容赦無い攻撃により意識は夜空の向こうへ飛んでいる。


「何が『愛しのジュエリー』よ。もっとちゃんとした時に言いなさいよ」


 拗ねた様に口を尖らせるジュエリーとその声は、勿論誰の目にも映らず、耳にも届かないのであった。




「今何か悲鳴みたいなの聞こえなかった?」


 森の別の場所。

江原がジュエリーにしばかれた場所よりももっと西側のところ。

なんとなく悲鳴が聞こえた気がしたので皆に訊いてみた。


「さぁ、気のせいじゃねぇか?」


 アレンがそう言って否定する。どうやら気のせいだったみたい。

 現在俺達はフィーリアによる案内で森の奥へと進んでいる。


「……なんかここ、通った事あるような気がするわ」

「奇遇だな、俺もだ」


 ミュウさんがそんな事を言い、アレンそれにが同意する。


「フィーリア、私達いったいどこに向かってるの?」


 セイラがフィーリアに訊いてみる。セイラもまたそんな感じがするのだろう。俺は全くそう思わないけどね……


「この奥の先に古城があるんですが、そこが一番怪しいんです」


 古城……なんとなく入学儀礼での古城を思い出す。って、この森の中で古城ってあそこしかな無いと思うね。


「あら、一回行った事ある場所だから戦いやすいわね。親切だわ」


 凄い余裕だね、ミュウさん。その胆力に何か表彰状でも贈りたいよ。

ため息をついて空を見上げる。森の中で見る空は、呪力災害のせいかやたらと暗く見えた。







 ――少し前に悠輝達が入学儀礼で使った古城。

そこは今、禍々しい雰囲気を放ち、到着する者を待っている。不気味な黒い影を伴って。

こんにちは、神威です。 ……何も書く事が無い!? っという訳で、感想や評価など気が向いたらして下さい。私のテンションが地味に上がりますので。   ではまた次回!

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