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資料  作者: 神威 遙樹
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NO,19: The illusion forest

 なかなか思う様に進みません。未熟ですね……はい。

 月が空に輝く深夜、学院を取り囲む森の中。本来なら人の気配など皆無な場所だが、今日は異常に騒がしい。木々が風もないのに揺れ、怪しげな空気が立ち込める。


「確実にいますな」


 そんな森を見て呟いたのが錬金術教授、エドワードである。


「生徒にはなんと言いましょうか?」

「城の外から一歩も出るな、なんてどうです? 修練場も含めて」

「理由はどうしましょうか?」

「森での呪力災害発生」


 ジュエリーとユゥが生徒へどう説明するかを考える。

 更にジュエリーは話ながらも手に持っている紐の先に付いている石を見る。

その石はくるくると回り、止まる気配が無い。


「……ダメですね、ダウジングしても森の中の呪力が荒れていて場所を特定出来ません」

「ジュエリーちゃんがダウジングしても無理って事は誰がしても無理だね」


 がっかり言うジュエリーを見て学長、アリスが言う。


「レメティアの人達はどうかな? 大体の場所分かる?」

「残念ながら無理ですわ」


 隣のレイラに話し掛けるがこちらも無理らしい。

指にはめている数個の指輪のうち一つが光っているため何かしたのだろうが。


「取り敢えず、実際森に入って探すしかないわ。決して深追いはしなしようにしましょう」


 レイラがそう言って周りを見る。

捜索するのは学院側は、アリス、エドワード、ユゥ、ジュエリーの四人。レメティア側は、レイラ、マリア、セフィロスの三人で計七人。あまり多すぎると統率がとれにくい為こうなった。


「では、いきましょうか」


 レイラがそう言った途端、七つの人影が一気に消えた。




 ――学院の一室から森を見る者がいた。フィーリア、この森の妖精である。


「気のせいではなかったのですね……」


 哀しげに呟き、後ろで寝ている二人を見る。

二人は安らかに寝息をたてており、起きる気配はない。


「仕方ありません、皆さんごめんなさい」


 そっと窓を開け、外に出ようとするが……


「どちらへお出かけで」

「――!?」


 急にフィーネに話し掛けられた。

 女子の寝るこの部屋には鍵がかかっている。フィーネがミュウに頼まれて付けた物だ。

そして、さっきまでフィーネはいなかった筈。


「いつからそこに?」

「今ちょうど入ったところです。フィーリア様こそ、どこへ行くのですか」


 鍵を付けた本人なら、出入りも自由という訳である。フィーネも女性だからか、出入りの許可はミュウからもらっている。


「少し外に出ようと」

「なりません、つい10分前に城からの外出は一時禁止となりました」

「何故10分前に決まった事が分かるのですか?」


 普通に考えればおかしい。こんな夜中に決定した事が10分やそこらで伝わるのも、そもそも夜中に決定する事自体が変だ。


「森の状況、貴女なら分かると思います」

「……」

「それに私はオートマタです。学院が決定した事が瞬時に分かるすべを持っています」


 無機質な声でさらっと言う。見た目は完全に人なのに、こういうとこを見るとやはり機械なのかもしれない。


「現在職員の方々が森に入っています。我慢を」

「……分かりました」


 しぶしぶ、といった感じだが了承したフィーリア。確かに自分が行ってもどうにもならない。


「辛いでしょうが、今は我慢です。私もセイラ様達もいます、何かあれば言って下さい」


 相変わらず無機質で無表情だが、その言葉には優しさが感じられた。


「はい」


 不安なのは変わらないが、焦っても仕方ない。朝皆に相談しよう、とフィーリアは思い寝るのだった。




「……厄介な」


 頼りない月明かりに照らされて浮かび上がる銀の髪。ジュエリーである。


「相手はケルト系と聞いてたが……まさか森の中の空間がぐちゃぐちゃにされてるとは」


 今この森の空間はぐちゃぐちゃになっている。

それは入学儀礼の時と同じく、道を進んでいると全く別の場所に行き着いてしまう。


「他の方々は……」


 そういってポケットから小さな指輪を取り出す。

 空間が歪められては探しに行っても出会う可能性は低い。が、今回捜索にあたっているのは十組織の首領。もしもの時を考えてこの指輪を全員に配ったのだ。使用法は分からないが、多分全員が空間を歪められている事に気が付いている筈、何かこれにおこっても不思議ではない。

 指輪を取り出して数分、急に指輪は光を放ち、そこから声が響いてきた。


『皆さんお気付きでしょうが、空間が歪められています。一旦退きますので皆さん森から出てください。上空は大丈夫ですのでそこから抜けて下さい』


「……上空って……」


 指輪が放っていた光が消え、また辺りが闇につつまれる。

 ジュエリーはため息ついて天を仰ぐ。

ケルト魔術は空を飛べない。上空からの脱出は不可能。どうすればいいと……?途方にくれてしまう。

 仕方ないので懐から一本の杖を取り出し地面に突き刺す。

すると杖が以上な速度で成長していく。すかさずジュエリーは枝の一本に飛び乗り、それでも成長し続ける杖の木のてっぺんと共に森の上に出てきた。


「ここからどうしましょうか……」


 杖の木の成長が止まる。高さは森の木の高さより一つ抜け出ており、森の全体を見渡せる。

 ジュエリーは森を見渡すが、意外と森の奥にいるようで城は遠くに小さく見える程度。


「ジュエリー殿」


 急に後ろから名前を呼ばれ、バッ、と振り返る。

その視線の先には黒のスーツを着た、確かセフィロスとかいった男がいた。


「飛行出来ない方の回収にあたりました、セフィロスと申します」


 ビシッ、と礼をするが回収という言い方に少し気が触る。


「これはご丁寧に、ジュエリー・ミホークです。わざわざ感謝します」


 少し嫌味がましく言ったのは、まだ彼女が若いからか。


「いえいえ、ではどうぞ」


 セフィロスは歯牙にもかけずにスルーして、さっとジュエリーが乗る場所を空ける。

今までセフィロスに気をとられていたが、彼が乗っているのは巨大な翼を生やし、尻尾が蛇の狼、しかも、なんか口から赤い光が漏れている……炎?


「……ぅぁ」


 ジュエリーも女性である。こんないかにも危なそうな狼に乗る気は退ける。

乗ったら噛み砕かれそうだ。


「この子はマルコシアスといいます、大人しいですよ?」


 嘲笑うかの様な微笑みと共に紹介するセフィロス。 なんで名前はどっかの貴族みたいなのよ!?

そう思いながらも、乗らなければこの男に負けた気がするので仕方なく乗るジュエリー、現在彼女の心は荒れている。

 ジュエリーが青筋たてて渋々乗ると、たちまちマルコシアスは夜空に飛び立ち見えなくなった。




 ――朝、学院の生徒寮の一室。

悠輝達は朝っぱらから思い話題について話し合う。


「……城の外には今行っちゃダメなの?」

「はい」


 発端はフィーネの一言、城の外へは一歩も出てはいけません、である。


「どうしてかしら?」

「森の内部で大規模の呪力災害が発生しました」

「おいおいマジかよ?」

「マジです」


 皆がフィーネさんに質問している。

っていうか、学院の敷地内でそんな事起こっていいのか非常に疑問だと思うね。立地条件がダメな気がするね。


「魔術関連の建物は、霊的意味合いの強い場所に建つんです。なので、たまにこういう事も起こるんですよ」


 首を傾げていたのに気付いたのか、説明してくれるセイラ。ほんといい子だよね。


「呪力災害が起こっているなら、どこの人が浄化するの?」


 呪力災害は浄化しないと大変な事になるらしい。実際どうなるかは知らないけど。


「今回は学院の職員の方々だと思いますが」


 セイラが答えてくれる。授業はどうするのかな?


「浄化は基本的に夜に行います。じゃなきゃ目立つので」


 ……読心術って魔術をセイラは使えるのかな?

なんでこう、思った事に関しての答えを的確に言えるのかな?


「悠輝さん、顔に出てますよ?」


 あっ、そうですか。

顔に出やすいタイプなんだね、俺。


「あのぉ〜すいません。少し話を聞いてもらっても構わないでしょうか?」


 今までずっと窓の外を見ていたフィーリアが、全員を見渡してゆっくりと訊く。

その顔はいつもの様な穏やかなものではなく、険しくて辛そう。


「何? どうかした?」


 皆の代表としてミュウさんが聞き返す。

 フィーリアは何か迷っているのか、何度か口を閉じたり開いたりしている。

が、しばらくして決意したのか話し出した。


「この森で起きている呪力災害、普通の物ではなく、もっと質の悪い物です」

「……どういう意味かしら?」

「えっと……『禁忌』? とかいうのが絡んでます」


 フィーリアの口から出てきた言葉、それはこの場の空気が凍りついた気がする程のものだった。



 ――森の奥、太陽が空で輝いているのに全く光が届かない場所。

影とは違う漆黒の闇が、静かに蠢いているのが見えた。

 神威です。ほんとに上手く進みません。……上手くなりたいですよ。感想、評価、アドバイス、なんでもいいので適当に書いてやって下さい。        なんとなくコメディーな作品でも並行して書いてみようかなぁ……

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