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資料  作者: 神威 遙樹
14/86

NO,13: A huge shadow

長いです。だらだらしてます、ごめんなさい。

 先輩二人による質問攻めがあった日の翌日。

 悠輝達は早々に朝食を済ませ、昨日と同じように指示を待っていた。

ちなみに悠輝のローブは昨日の晩、セイラに仕立て直して貰おうとしたら、フィーネさんがやると言ってくれたのでやってもらった。その時のセイラの目が少し残念そうだったのは気のせいだと思う。


「ねぇ、俺一時間目何にしたっけ?」

「喚起魔術です。喚起、使役に至るまでのプロセスを学び、実際に使役する授業です」


 ……これ、陰陽道関係無い気がする。

昨日は式神って喚起するもんだろ! ってアレンの言葉を聞いて選んだけど、式神って漫画とかだったら紙から創ったりしてるよね。完全に間違えたね。


「……どうしよう」

「式神を創ったらそれを喚起した様に見せ掛けるしかないですね」


 意外に黒い事言うね、セイラ。


「お楽しみ中すまないんだが、これを君に渡したいので少し時間をくれないか?」

「えっ?」


 突如後ろから声がして振り向くと、そこにいたのは江原さん。

連盟所属の日本人だ。


「お祖父さんからの届け物だ」

「じいちゃん!?」


 渡されたのは黒い箱。

全然重くは無いので中身は軽い物だと思う。


「んじゃあ俺はこれで。あ、同じ日本人のよしみだ、何か気になる事とか相談はのろう」


 そう言ってさっさと立ち去ってしまった。

広間での食事は終わったのだろうか、席について何か食べる込めてもなく、広間から出ていってしまった。


「なんだろ?」

「開けてみようぜ!」


 アレンは興味津々といった感じで身を乗り出して箱を見る。


「……札と、何これ?」

「何かの術式ね、あいにくオンミョードーは分からないわ」


 入っていたのは大量の札と何かの術式が描かれた、やっぱり紙。

札とはちょっと形が違う。


「この術式、私が使う魔方陣に少し似てます」

「セイラの?」

「やったなユウキ! セイラさんのと似てるなら、喚起系統かもよ!」


 不思議な紙にみんな首を傾げる。


「いやっほぅ〜皆おはよ〜! ミラ先輩だよ〜」

「「「「……」」」」


 そんな声が空気をぶち壊す。同時に、何故かフィーネさんが上に跳ぶ。

かなり高い、5メートルはあるね。


「うぉっと〜!?」


 飛び付く相手が消えた為、ミラ先輩はテーブルに体当たりを……


『ガシッ』


「うにゃ〜!?」


 しなかった。

フィーネさんが着地と同時にミラ先輩を後ろから支え、事なきをえる。


「危ないですので軽率な行動はお止め下さい」


 さらっと無機質な声で言う。なんか格好良い……無機質な声も今はクールに聞こえる。


「ご、ごめんね〜」


 謝り方をみるとまたしそうで怖い。

……絶対にまた繰り返すよ。


「……構いません。お怪我は無いですか」


 格好良い、何か執事みたいだ。


「うわぁ〜ん」

「……」


 突然フィーネさんに抱き付く先輩。

泣き真似だろうね、絶対抱き付きたかっただけだろうね。


「そういえばさ、フィーネさんって俺らの授業中はどうすんの?」

「寮の掃除をしています」


 抱き付く先輩を完全に無視して答えるフィーネさん。凄いよ。


「そろそろ時間です、皆様教室へ。その箱は私が寮へ持って行きます」


 そう言うと先輩に抱き付かれたまま、朝食の乗っていたお皿をワゴンに入れ、箱を持ち、大広間から出ていった。




 ――教室の中に入ると中はやはり広い。

一番前には大きな黒板。席は横に繋がっていて、大学の教室みたい。

 決定的に違うのは周りの壁や部屋の角に意味の分からない文字や図形で書かれた紙が壁や黒板に貼ってあったり、使い方が見た目では全く検討のつかない物があるぐらい。


「思ったより綺麗ですね」

「変な物置いてあるけどね」


 セイラはどんな場所をイメージしていたんだろう? 取り敢えず空いてる席に二人並んで座る。

アレンとミュウさんは別の授業。ケルトに喚起系統は無いらしい。


「ようこそ、私は――」


 どこからか鐘が鳴り、授業が始まった。







「いやぁ〜授業って最初はやっぱり説明が多くてしんどいな」


 授業が四つ終わり今は昼食である。

昨日テセウス先輩が言った通り、学長がいても変な空気は流れない。


「喚起魔術の授業はよかったよ。いきなり何か喚んでみろ、とか言われなくて」

「そりゃまだねぇだろ」


 授業はどれも今までの学校と変わらない。

教授が説明して、それをノートにとる。

図形が多かったり、聞いた事の無い単語が出てきたりもするが、そこはセイラ達が教えてくれる。


「後一時間、なんだっけ?」

「魔術史、文字通り魔術の歴史です。必修教科なので皆様御一緒です」

 フィーネさんがすぐに答えてくれる。

絶対秘書になれるよ。


「……なんか眠くなりそうだな」


 そんな事を言うアレンはどの授業でも寝てそうだね。


「ほら、そこの二人! さっさと行って場所取るわよ!」


 ミュウさんはいつでも元気だね。






「魔術史の授業を始めます。本当は私、ケルトの担当なんですがこのクラスの魔術史も担当する事になりました。ジュエリー・ミホークです」


 まさかのこの人。

ジュエリー教授。

「ジュエリー教授なら大丈夫よ、眠くならないわよね? アレン」

「そうだな」


 一体どういう事なんだろう?

寝てたらチョークが飛んでくるとか?


「では、いきましょう」




 ――眠くならない意味が分かった。

教え方がうまいのと、年齢が近いからか質問しやすい。

特に女子から質問を多く受けて答えている。

 しかも、最後の方になると教授自体の質問に変わっている。結局教授が最後の5分は自分への質問タイムとした。


「教授! 彼氏はいましたか?」


 誰だよ、こんな質問した奴?


「いませんでしたよ」


 律儀に答えた!?

良い人過ぎるよジュエリー教授……


「好きな人は!?」


 お前もしつこいよ!?

プライバシーだろそれは!


「いましたよ」


 またもや答えた!?

しかもいるの!?

 ――結局この質問が最後になり、授業は終了。放課後となる。


「キタフジ君」

「はい?」


 部屋を出るときに、急にジュエリー教授に呼び止められた。


「タケ……じゃない。江原は朝、君になんて?」

「えっ? あ、いや、届け物を。どうしてですか?」

「そうなの、あいつ昔から変な事ばっかりしてるから気になったの」


 そう言って少し遠くを見る教授。

なんとなく居心地悪い。


「じゃあ、俺はこれで」

「呼び止めて悪かったわ」


 部屋に着くと早速アレンに質問をくらったが、中身を聞くとがっかりしていた。なにを期待したの?


「アレン煩い。ユーキ、あの箱どうするの?」

「札はまぁ使うと思うけど……あの紙はどうしよう?」


 あの紙、何に使うのか全く分からない。


「記憶に無い?」

「無いです」


 じいちゃんから使い方を習った記憶も無い。

あんな紙初めて見る。


「喚起系統だって! 適当に呪力込めてみろって!」「危ないよ……セイラってどうやるの? 似た様な術式使うんでしょ?」

「……えっと、呪力を込めて 「込めてみます」 ふぅぇ!?」


 セイラが言うんだ、間違いない。

 目を閉じて紙を手に持ち、呪力を込め……


「ゴメン、どうやって呪力込めるの?」


 ズダーン、って何かが倒れた音がした。

ベタな。


「集中して手に力を入れて下さい」

「……了解です」


 今度こそ仕切り直し。

再び目を閉じて集中する。そして手に力を込める!


「……ビンゴだな」

「えっ?」


 アレンの呟きが聞こえ目を開けると、手に持っていた紙に描かれた術式が光っていた。


「その紙をテーブルに置いて下さい」


 セイラの指示に従い、テーブルに置く。

すると術式が点滅し始めた。


「……何が出てくると思う?」

「オニよ! 日本といえばオニよ!」

「……それはちょっと嫌かなぁ」


 鬼が出てきたら洒落にならない。

絶対言うこときかないよ。 点滅していた術式が強い光を放ち、皆その光に呑み込まれる。


「……誰や? うちともあろうもんを無理矢理な術で喚び出したんは?」

「「「「……」」」」


 そこに立っていたのは着物を着た少女。

なんで関西弁?


「そこの小僧やろ? うち喚び出したん。なんや? うち喚び出したさかい、返事もできひん程疲れたか?」

 ビシッ、と俺の方を指差す少女。

体のサイズに不釣り合いな大きな着物の袖が、ゆらゆらと揺れる。


「えっと……」

「あれが噂に聞く関西弁か」

「あの着物可愛いです」

「これって、一体なにかしらね?」

「こらぁっ! 四人揃って無視するなぁ!」


 無視はしていない。

反応に困っているだけだよ。


「そこの黒髪の小僧や! あんた陰陽師やろ? うち喚び出したやろ?」

「えっと……はい」

「ほらな、あっとった! なんで無視した、って危な!? なんやねんこのねーちゃん!?」


 少女が喋るなか、今まで無言、無反応を貫いていたフィーネさんが動いた。

殴りかかったのである。


「……敵と判断」

「敵やない! あそこの小僧がうちを喚び出したんや!」

「どこから現れた、何故現れた」

「知るかいな!? うちとて無理矢理喚ばれたんや! うわっ!? このねーちゃん腕に呪力纏ってる!? 危な!? 絶対痛いて!」


 フィーネさんは鋭い攻撃を連続で繰り出す。給仕服でよくあんなに動けるね。


「よぉ見たら、ねーちゃん今日本で流行ってるメイド服やん!? 何? ここどこなん!?」


 メイド服ではない、給仕服だ。

 取り敢えずフィーネさんを止めよう。あの子がなんなのか訊きたい。


「フィーネさん、ストップ」

「了解しました」


 パッと攻撃を止めて、こちらに戻ってくる。

凄い切り替え。

「びっくりやわほんま」

「……ところで、君誰?」

「はぁ!? あんた、うち喚び出しといてなんやねんその質問!?」

「……ごめんなさい」


 仕方ないじゃん!

いきなりじいちゃんから送られてきたんだよ!?


「まぁええわ。うちは大陰だいおん、十二天将の一角や」

「……?」

「知らんのかい!? 小僧

ほんまに陰陽師か!?」


 悪かったね、知らなくて。

つい最近なったばかりですよ。

「十二天将っつーんわな、陰陽道の占術で使う方角を――」

「あ、もういいです」

「なんでや!?」


 絶対にややこしい話をしようとしてたね、間違いない。


「取り敢えず、もっと簡潔にお願いします」

「……あんたがうちを喚んだんやったら、一応式神になる」


 式神だそうだ。って、えぇっ!? 式神?


「やったな、ユウキ。式神ゲットだ」

「ゲットってなんやねん、そこの茶髪小僧!」

「……強烈だな」

「んで、あんた。名前は?」

「俺か? 俺はアレン・グ……」

「あんたちゃう!」

「北藤悠輝です」

「悠輝か、あんた、どーやってうちを喚んだ?」

「えっ? あの紙で」


 そうやってテーブルを指差す。

上には、紙がポツンと置いてある。ヒラヒラと直ぐに風に吹かれて何処かに飛んでいきそうだよ。


「これか……」


 大陰さんがその紙を持ち、眺める。


「……!?」

「どうしたんですか?」

「いや、なんでもあらへん」


 紙を見て少し目を見開いたので訊いてみたが、意味は言わなかった。


「……悠輝がうち喚んだのもなんかの縁や、なんか大変な事があったらうち喚びぃ。それ以外では喚ぶなや」

「はい……」


 なんか、式神になってくれた。

あれ? 式神って喚ぶものだったっけ?


「ほんじゃあな」


 そう言うと大陰の体は光に包まれ、消えた。


「なんだったんだろ?」

「知るか、もう一度喚んでみたらどうだ?」

「絶対嫌だね」


 大変な時以外喚ぶなって言われてるし。


「本来と立場が逆ね、ユーキ」

「そうかな?」

「逆ですよ、悠輝さん」


 ……この先が思いやられる。


















 ここは極東の島国、日本。


「ほんま焦ったわ、いきなり喚び出されたんやからな」

「……こんな朝からパス繋いで、何かと思えば愚痴か?」

「ちゃうわ! その、うちを喚んだ小僧の事や」

「少年なのにお前を喚ぶとは、不幸な」

「どういう意味や?」

「冗談だ、要件を言え」

「あの小僧が喚び出しに使った紙、桔梗紋があしらわれとった」

「……晴明のか?」

「晴明の小僧のや。十二天将のうちが言うんや、間違いないで」

「名前は?」

「北藤、下の名前は伏せとく。一応主やからな」

「調べとく。にしても、ヨーロッパに少年陰陽師とは面白い」

「うちを喚んだんは晴明の小僧とあんた、あの小僧の三人だけや。何者や?」

「知るか、十二天将を喚ぶとはな、恐れ入る」

「晴明の小僧もうち喚んだんは二十歳越えてや」

「でも十二天将全部従えたんだろ?」

「一応や。四神は扱いきれてへんかったし」

「それは初耳。ではその少年は晴明を越えるな、いや凄い」

「あんたが言うか? 十八のくせして」

「悪かったな、まだ若くて」

「あんたも十分少年や。でもまぁ、一番びびったんはあんたに喚ばれた時やな」

「何で?」

「アホ、七歳やったやろ?」

「知るか」

「四神があんな従順に従うんも初めて見た」

「いいやつらだろ、あいつら」

「神も仏も、そがな簡単に従わへん」

「知るか」

「謙虚なんかアホなんか、よう分からんなあんたは。まぁ、うちはこれ伝えに来ただけし、帰るわ」

「はいよ、さっさと行け」

「失礼な」


 気配が消え、部屋に一人だけになる。


「北藤ね……面白そうじゃん」


 ニヤリと笑い立ち上がり、窓にかかったカーテンと閉じていた窓を開け放つ。 まだ日本は夜中と朝の間ぐらい。空には太陽ではなく、月が輝く。


「いい月だな」


 そっと呟く。

次の瞬間、その者は窓の側から消えていた。

こんにちは、神威です。  サブタイは洒落です、つまらない洒落です、ごめんなさい。         今回出てきた大陰ですが、実際に安倍晴明が使役していた十二天将の一角だそうです。少女の形を好む女神、それが彼女です。  関西弁なのは私、関西人なので標準語で書くの苦手なんです。なので関西弁にして、ちょっと息抜きを。  式神はどうすればいいか分かんなかったので凄いのを喚起するで落ち着きました。  授業は面倒だったので、カット。描写は今後もされますけど。最後に、感想なんか送ってくれればありがたいです

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