NO,12: A questioner, respondents,& Porson of respondents interests
長かったので前話と分けたんですが、くっつけた方が良かったかもしれません。短いです。前話と比べると、およそ二分の一です。
マジックタイムズという校内新聞を書くためにやって来たお二方。
片方はフィーネさんにべったり。何しに来たんだ?
「さっき君には言ったけどね、君達についてを記事にしたいんだ」
そう切り出したのは、浅黒い肌に、黒髪のテセウス先輩。
この人は真面目に新聞を作る気だね。
「良いわよ!」
そう言ったのは我らがミュウさん。
この人は絶対に良いって言うと思ってた。
「待って下さい。上級生はまだ最優秀班を知らない筈です。何故知っているのですか」
聞いたのはフィーネさん。ほっぺたをプニプニしているミラ先輩をものともせず言いきった。
っていうか、機械なのにほっぺたプニプニしてるんだ。何でできてるの?
「それはね〜学長に聞いたんだよ〜」
答えたのはミラ先輩。
質問には答えたが、ほっぺたをプニプニするのは止めない。
「どのようにして」
「ケーキで買収〜」
……あの人本当に学長なのかな?
「副学長に言います」
そう言ってフィーネさんはバッと立ち上がって部屋を出てしまった。
ミラ先輩はその瞬間に後ろへ跳び、何事も無かった様にソファーに座る。
「本人の許可も出ましたし、質問を始めます」
許可したのはミュウさんだけなのにね。
「まず名前をお願いします」
左から順番に名前を訊いていく。
ちなみに俺は右端。
先輩方は三人の名前を聞いて驚きの表情をする。
そりゃそうだ。家が凄いからね。
「最後に君、名前をお願いします」
「えっと、北藤悠輝です」
「日本人!?」
日本人はここでは珍しい
らしいが、こんなにデカイリアクションされるの?
「凄い班だね。名のある組織の直系二人、その組織の腹心の一族の直系、更には未知数の日本人」
……いつの間にか俺に未知数って付いている。
それって凄いの?
「ついでに悠輝君、どんな魔術を使うのか教えて欲しい」
三人にはしなかった質問。何で俺だけに?
あぁ、皆有名だから分かるのか。
「陰陽道ですけど……」
「オンミョードー!?」
『陰陽道』ってちゃんと言える人、セイラだけなのかな?
先輩は驚きながらもメモの上でペンを走らせる。
その速度は、F1並み。
「ユウキ君って凄いね〜日本人なんて一人しかいないでしょ〜」
ニコニコなミラ先輩に話し掛けられる。
この人は、何もしていない。本当に何しに来たの?
「まぁ……一応江原さんがいますけど」
あの人、学院の人じゃないからね。
「では四人には今年の入学儀礼がどんなものだったのか、また、どのようにして圧倒的な早さで合格したのか訊きます」
それから始まる質問攻め。
テセウス先輩は真面目に質問するけど、ミラ先輩は聞いてるだけ。
いる意味無いよ?
「じゃあこれくらいにするよ、ありがとう。最後に、先輩として後輩の君達に学院に関しての、質問に答えよう。何か気になる事があったら訊いてくれ」
お礼のつもりなのか、先輩としてアドバイスをくれるらしい。
「えっと、授業ってどんな感じなんでしょう?」
先陣切って訊いたのはセイラ。
真面目な彼女は授業について。
「普通に教授が前で話をしたり、魔術書を読んで論文書いたり、実技で試合をしたりする。表の学校と基本は変わらないと思う」
「俺もいいですか? えっと、学長が食事に来る度にあんな空気になるんですか?」
あの空気はダメだ。
あんな空気でずっと食事をするのは嫌だ。
「新入生は『小さい』って言葉がタブーなのは知らなかったんだよね。あれで三日間機嫌悪くなるんだよ、学長。明日には変な空気が流れないと思う」
良かった……
けど、誰も口に出していなかった筈。
思う事すらタブーなのか……
「まだ何かある?」
そう言って周りを見るが、誰も訊かない。
「じゃあ僕達は」
「待ちなさい!」
帰ろうとした先輩をミュウさんが止めた。
しかも命令口調。
「最後に訊いとくわ。ここで一番強い生徒は誰かしら?」
「……セイラさんだろうね」
なんて質問してるの!?
っていうかセイラなの!?
「確かにセイラは血も、それを操る才能も一級品ね。けど、魔術師の『腕』っていかにして、自分よりも強大な血の差を覆すって事じゃない? まぁ、それもセイラが一番かも知れないわね、入学儀礼で見る限り血に頼った戦い方じゃなかったから」
魔術師の『腕』
それは絶対的な血の差を覆す為に、どの様にして魔術を扱うかを指す。
才能も努力も長年の研究も、いくらしたって血の差を埋めることにはならない。否、埋める事は出来るが少しだけなのだ。
だからこそ、いかにして戦うか、経験や慣れによって培った『腕』が重要になる。
「……」
「答えられない質問かしら?」
ミュウさんの質問に詰まる先輩。
さっ、とミラ先輩を見た。
「あたしだよ〜」
そう言って、ニッコリ微笑むミラ先輩。
どこかしら、雰囲気がさっきと違う。
「ここには誰が一番強いか、そんな事を決める行事は無い。だけど、実技の成績、実績、能力を見たら彼女だ」
「へぇ、ありがとう、教えてくれて。またその実力を見てみたいわ」
ミュウさんは不敵に微笑む。
まるで、自分が越えると言わんばかりの態度。
「では、帰るとするよ」
先輩方はそう言って部屋から出ていった。
「なんて質問してんだ、お前!」
「良いじゃない、私は『最強』って言葉に惹かれる年頃なの」
「あのなぁ……」
アレンがミュウさんに怒っているが、効果は無し。はっきり言って、ミュウさんは最強になるつもりだ。
「別に最強になるつもりは無いわ。ここにはアレンとセイラがいるから、私じゃ無理よ」
「……」
訂正、ミュウさんは自分の実力を分かっていた。
それだけでも十分強いと思う。過信する人は弱いからね。
俺は明日の授業を決める為に、フィーネさんに渡された紙を見た。
……あ、フィーネさんまだ帰ってきてない。
「あの子、ミュウちゃんだっけ? きっとあたしより強いよ。多分、他の三人も」
「……どうして分かる?」
「フフッ、勘かなっ?」
「いつもの口調じゃなくなってるぞ」
「あっ、そう? いけない、つい興奮しちゃった」
「……相変わらずだな」
「強い人見るとワクワクしない?」
「しないな、無謀な事はしたくない」
「人生つまんないよ?」
「そんな事はない」
「そうなの? あっ、面白い話聞けたね。教授達もビックリだよ!」
「そうだな、良い記事になる」
「あぁ〜あ〜、あたしもあの子達と授業がしたいな〜」
無限の期待を彼等に寄せて、ここにもまた、彼等に興味を持つ者達が現れた。
神威です。 本当は、前話とここまでで一話だったんですけど、長そうだったので分けました。……微妙に後悔。 取り敢えず、さっきと授業の話も終わらせて、次の話に行きたいです。 ではまた次回!