NO,11: Goodbye halcyon days, Welcome disturb days
何故か長くなります。 学院内と授業については説明が多くなってしまいます。ごめんなさい。
霧の街、ロンドンの朝。その郊外にある森の奥、少し小高い丘の上にある城。周りを霧に覆われ、美しい尖塔が突き出ているその光景はまるで絵画の様。
しかし城の中にいる人は、城程優雅ではない。
「起きろ、ユウキ!」
「ガハッ!?」
鳩尾に鋭い痛みが走り、北藤悠輝は飛び起きた。
「朝から何するの!?」
起こし方が鳩尾に一撃。昨日ミュウさんには鼻と口を塞いでいた。アレンの人の起こし方は変だよ……
「起きなかったから仕方ないだろ! ほら、早く着替えて朝飯だ」
「むぅ……」
納得いかないね。
ちゃんと起こしたの?
ぶつくさ言いながらも着替えを済ませ、クローゼットから指定のローブを取り出し、羽織る。
背が低い悠輝には少し長い。
「うわっ……地面に擦れる」
また長さ合わせてもらわないと……
「何してんだ? 行こうぜ!」
「あっ! 待って!」
さっさと部屋を出ていくアレンに慌てて付いて行く。
広間には既にセイラもミュウさんもいた。
「遅いわよ」
「いや、ユウキが寝坊してな」
いきなり挨拶無しで文句を言うあたり、ミュウさんらしさがでている。
それよりアレン、確かに寝てたけど、まだ寝坊って時間でもないでしょ?
「言い訳は見苦しいわ。あ、ユーキ、おはよう」
「ちょっと待て!? 何で俺には挨拶無いんだ!?」
「仕方ないわね、オはヨウアレン」
「何だその言い方!?」
朝から元気だねアレン。取り敢えずミュウさんに挨拶を返してソファーに座る。
「おはようございます」
「おはよ〜」
するとセイラが近付いて来て挨拶してくれたので、それに返す。どこぞの二人と違い、彼女は静かだ。
今思うとセイラもミュウさんもローブを着ているが、俺の様に地面に擦れていない。
なんで? 女子専用?
「ローブ長くなかった?」
「長かったので、仕立て直しました」
「……頼んでもよろしいでしょうか?」
非常に悔しい。
なんか敗けた気がする。
でも、擦るのは嫌なので、セイラに頼む。
朝ごはんに牛乳あったらいっぱい飲もう。
「分かりました。では、今日の寝る前に渡して下さい」
そんな気持ちを知ってか知らずか、セイラは快く引き受けてくれた。
ごめんなさい、牛乳飲んで背、高くなります。
「ほら、そこの二人! 朝から仲良しなのは良いけど、ご飯食べに行くわよ」
ミュウさんに言われ慌てて部屋を出るが、貴女達二人の方が仲良しだよ?
朝から痴話喧嘩なんて、そう出来るもんじゃないよ?
「……仲良し……」
あのーセイラさん?
何呟いているんでしょう?何赤くなって首振ってるんでしょう?
――セイラの反応に困りながらも大広間に到着。
昨日よりも更に多くのテーブルが並べられ、上級生らしき人達もいる。
適当な場所に座り、料理を受け取る。が、牛乳は無かった。
「何時から学院内の案内?」
「朝飯の後、新入生だけここに残って指示を受けるそうだ」
食べながら学院内にどんな物があるか考えてみる。まず、地下牢は外せない。城だし、絶対ある。
魔術に使う物が大量に置かれた倉庫もありそう。箒とか一杯あるだろうね。
他には……秘密の部屋?
いや、あれはフィクションであって……いや、でもここ魔術師の学校だし。
「秘密の部屋ってあるの?」
「ないんじゃねぇか?」
聞いてみたら、あっさり否定された。
悲しいね。ロマンを分かってないよ、アレンは。
モソモソ食事をしていると、急に大広間の空気が変わった。
何だろ? そう思って周りを見ると、ちょうど学長が入ってくるところ。
鼻唄とスキップをしているあたり、ほんとに大人なのかな、と思う。
見てるだけなら微笑ましい気がするけど、何故か空気は緊張している。
よく周りを見ると、新入生数人が震えていた。
昨日のあれか……
そんな空気はどこ吹く風。学長は自分の席に座り、食事を始める。
――学長の登場により、なんか張りつめた空気になってしまった朝ごはん。
この空気のせいか、上級生の人達はさっさと食事を済ませ、足早に出ていったりもした。
これから卒業するまで、食事はこんな感じなのかな?それは嫌だ。
そんな感じでこれからの生活、特に食事に関して不安ができた悠輝である。
「さて、では学院の中を見に行ってもらう。広いから迷うなよ」
そう言って指示を出すのはエドワード教授。
近くで見るとゴツい人だね。
「案内役は、昨日と同じだ、上級生は授業をしている。騒ぐなよ」
昨日寮に案内してくれた、オートマタの人がこちらへ来る。
量産型とセイラは言っていたが、顔は皆違うので、同じと分かる。
「では、案内します」
驚く程無機質な声。
やはり機械なんだなぁ、と思ってしまう。
見た目は完全に人。
歩く度に揺れている長髪は人工物なのかな?
「こちらのフロアは全て授業で使う教室となっています。皆様もここで授業を受ける事になります。このフロアの上下ツーフロアも同じようになっています」
まず案内されたのは教室が並ぶ階。
教室が並ぶ、と言っても数は少なく、扉が大きいので中は広そう。 それから色々なところに案内された。
魔術書が一般公開されている図書室、奥は非公開なので立ち入り禁止らしい。
薬草や魔術に使う草木がある温室。
屋上、魔術師も天体観測をするらしい。
地下牢、何かの薬などを作る時に使う道具が置いてあるらしい。その存在にちょっと感動。
他にも呪物の倉庫など色々。
……しかし、一つおかしい。
「ねぇ、魔術を実践する場所は? まさか、教室でするの?」
魔術を使う為の場所が無い。
教室でやったら、それこそセイラなんかが使うと、消し飛ぶ気がする。
「あぁ……それなら」
「ここは修練場。実技の時に使い、また、休みの時間にも使用可能です。正し、使用する場合は事前に許可が必要です。決戦も可能です」
「ちょうど着いたな」
着いたのは城のすぐ隣にある広い空地。何も無い。
「フェーデ?」
「魔術師同士の対戦、まぁ模擬試合だな」
魔術師も試合するんだね。俺は絶対にしたくない、怪我する。
さらに案内された場所、それは……
「学長室、通称、秘密の部屋です」
「……あったね」
「……あったな」
秘密の部屋。
名前だけなら気になるが、学長室なら嫌だ。
あの人絶対危険だよ。
「ここが最後です。ここは通称サークルフロア。所謂サークルで使う部屋です」
サークル……部活みたいなものか。
まだ午前中なのに話し声が聞こえるのは何故?
「サークルには絶対入らないといけない事はありません。入って無い人の方が多いです」
通りすぎざまに中を見ると、何か怪しげな活動をしてそうな部屋から普通の部屋まで様々だ。
「あ〜フィーネじゃん! どうしたの〜?」
突然声が聞こえて、先頭を歩いていたオートマタの人に誰かが抱きついた。
「……放してくれませんか?」
「もぉ〜釣れないね〜」
抱きつきながら会話をしている。
が、対するオートマタの人の声は無機質。
放して、と言っているが感情は皆無である。
「……放してくれませんか?」
「むぅ〜良いじゃん、フィーネここに滅多に来な……」
会話の途中で抱きついている人と目が合う。
表情が固まっているあたり、後悔しているのかな?
「……もしかして、フィーネ仕事中?」
「はい」
「ご、ごめんね〜」
そう言って、飛ぶようにして部屋に入って行ってしまった。
「今の何?」
「いや、俺が知ってる筈ねぇだろ」
「あの方は3年のミラ・フィオーレ様です」
「フィオーレ……」
「知ってるの?」
「イタリアの魔術組織の首領一族の名前です」
「『フォルトゥナート』ね、AAの」
流石は学院、なんか有名人が多い。
「これで案内は終了です。昼からは明日受ける授業を決める用紙を渡しますので、決めて、私に出してください」
――案内が終了し、昼食をとる。が、やっぱり学長が登場した途端、空気が変わる。もうやだ……
オートマタの人、改めフィーネさんから用紙を貰い、寮で話し合って決める事にしたんだけど、
「なんでフィーネさんがいるの?」
「言い忘れましたが、私は悠輝様達専属のオートマタですので」
「どの班もそういう人がいるの?」
「はい」
非常に無機質な声だから、なんか話すのに緊張する。
取り敢えず、受ける教科を決めるのだが、
「俺って何受ければいいのかな?」
他の三人は西洋魔術であり、基本的に何を受るけかは決まっている。
が、陰陽道は違う。
日本の魔術は秘密主義。学院には陰陽道に対応した授業も書物も無い。
「何かねぇのか?」
「待って! 今探ってるから!」
必死に記憶を探るが、全然見付からない。
「あった!」
「見付かったか?」
「天文学!」
陰陽道も星の廻りと関係はあり、惑星などは重要である、と記憶の中でじいちゃんが言っていた。
「……一つか?」
「うん……」
全然足りない。
明日は最低五教科受けなければならない。
「まぁ後は適当に俺らに合わせろ。セイラさんの幾何学とかは関係無いのか? オンミョードー」
「……?」
「わかんねぇか。まぁ適当にうめとけ」
素晴らしく適当だが気にしない。誰かと一緒になるように教科を見る。
ちなみに、天文学にはセイラがいる。
『コンコンコン』
急に、寮の扉にノックがされる。まだ知り合いはいないのに、先生かな?
「はい」
フィーネさんがいち早く反応して扉に向かい、開ける。
「こちら、マジックタイムズと言う、所謂新聞です!今年度の最優秀班のあなた方に質問が……って、フィーネ♪」
バン、と音がして見に行ってみると、先程フィーネさんに抱きついてた人と、後一人いる。
「……放してくれませんか?」
「いや〜」
どうすれば良いのか全く分からない。
すると、抱きついている人、確か、ミラ先輩と一緒に来た男の人が気がついてフィーネさんから引き剥がす。
「一旦止めろ」
「オヨ!?」
取り敢えずフィーネさんは解放された。
「俺らはマジックタイムズっていう学院内の新聞を作ってる者だよ。今年度最優秀班の君達に話が聞きたくてね。申し遅れた。俺は、テセウス・アレキサンドラだ。よろしく」
……凄い名前だね。
何かの英雄伝説とかにで出てきそうだよ。
「はぁ……」
取材って事だよね?
なんかまたキャラ濃い人達出てきたよ。
こんにちは、神威です。 予定してなかった人が何故か登場。なんなんでしょう、あの新聞記者達は? いつの間にか登場してました…… 説明がややこしいですが、ごめんなさい。もうちょとでそれは無くなると信じてます。 ではまた次回!