イメチェン
翌日あたしは美容院に行く事にした。朝からシャワーで髪を洗い昨日の高級トリートメントを使おうとしたが何故か無い?変わりに安そうなチューブに入ったトリートメントが置いてあった。
(はて?何かあったのか?まぁいいや)
久しぶりに美容院へ、伸び放題の髪は毛先バラバラで腰まである。毎日ゴムで1本縛りをしてただけなので痛みが半端ない。ここは、ガッツリ切ろうと決心。
美容院で待ちながら、彼の好みはどんなのか?ベリーショート?いやちょっとそれは男ウケが悪い。セミロング?やっぱりロングでパーマをかけてふんわりカールの茶髪?(持ち金3000円無理!)雑誌のヘアスタイルを見ながら妄想は続く
「未来ちゃん、可愛いくなったね」
「あら、そんな…」
「とても、似合うよ、その髪型」
なんちゃって…
順番が来たので席に座る
「どうなさいます?」
「あっ…あの…」(有村架純風に…)
「…………肩より少し長めに」
元ヒッキー急に気が弱い、それしか言えなかった。
そしてカットの間、最近、寝不足気味なあたしは、ウトウトし始めた。
(ハッ!寝たらアカン!)
と思いつつ、ジッとしていると睡魔が……
”ガクッ!!”
「ああ!」
美容師の声と共に目が覚める。
(ん?)
「ああ!」
前髪が!!見事にざっくり切れてしまった!いわゆるオンザ眉毛
(うぉい!)
「あのあの…すいません…前髪は、この長さに切り揃えるしか…」
ひたすら謝るスタッフ。しかし、タイミング悪く寝落ちた自分が悪い、何も言い返すことは出来ない首を縦に振り
「すいません…それでお願いします…」
出来上がった。ヘアスタイルは、サイドはセミロング、前髪はクレラップだった。トボトボと家に向いながら
(どうしよう、今日は行くのやめようかな…)
流石に気が重い、しかしこの前髪が元に戻るまで、一ヶ月はかかるだろう。
(そんなに、耐えられない!)
そうだ、帽子だ!またも、弟の部屋に行き探す。あった!新品だ!
(ん?GEP…?)
怪しいバッタもんだが、致しかたない…。結局、髪は1本縛りで帽子を被り鏡の前に立つ。帽子にほぼ見えない髪。完ぺきな野球小僧だった。
(眼鏡…)
仕方ないので、お宅御用達の度のない黒縁メガネ(お揃いか!)をかけた。
(もう…どうしたらいいか、わからない…)
ドツボにハマりながら影を背負って、彼の所に向かった。
暫く迷いながらも、勇気をだしてポチ。
「こんにちは…」
心なしか声も暗い。
「こんにちは!今、行くよ」
相変わらずの声
(ズキューーーン!)
いつも通り、エレベーターから降りて来ると走ってあたしの側に来るテン。彼は変わり果てたあたしにちょっとびっくりした顔をしたが何も言わず散歩に出かけた。
「あの…髪の毛…失敗しちゃって…」
とオズオズしながら言い訳。
「でも、何だか前より明るくなったよ」
(なんて、優しい!)
流石にあたしの惚れた男だわ。急に心も軽くなり散歩終了。彼の部屋でお茶を飲んでると安心したのか疲れてたのか、また、猛烈な睡魔が………。結局、寝落ち………
「未来ちゃん、未来ちゃん…」
(ハッ!!)
「もう、夕方になっちゃうよ」
(ガガーーン!)
「帰ります…」
名前どころか、ほぼ喋れず家へと帰り着く。玄関を開けると弟に出くわした。あたしの顔を見たとたん
「ブッッ!」
と吹いたかと思うと慌てて口を塞ぎトイレに直行。笑い声が聞こえてるんだけど!
そして、夕御飯。他3名、口も聞かず飯を食う。時折、カタカタ食器が震え笑いを堪えてるのが伝わる。
(何がおかしいってのよ!彼は明るくなったって言ってくれた!)
ワナワナ、震えたら
(バキッ!)
箸が折れた。途端に弟が隣で震えだす。
「まっ…まぁ、未来。そんなに力を入れて食べなくても…」
「ごちそうさま!バイト行ってくる!」
そう、食卓を出ると背後で大爆笑の嵐が…
傷心を抱えバイトに行くも…
「おはようございます…」
「佐藤さんおは………」
店長も肩を震わせ静かに去った。そして、やはり笑い声が…
(彼は笑わなかった!)
やはり、彼はあたしにとって運命の人!明日こそ!名前を!




