『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』所見《ネタバレ御免》
初出:令和元年12月24日
『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』を観てきた。『フォースの覚醒』、『最後のジェダイ』に続く3部作の完結編であるとともに、9作品あるスター・ウォーズ(以下、SW)全体の完結編でもある。
ただ製作者側のディスニーはこの後、SW10以降も作り続けると発表。SW3公開後、ルーカスフィルムがもう続編は作らないと発表したのと対照的だ。
ディズニーは2014年、約40億円でルーカスフィルムを買収。この買い物は結果的に”お買い得”だったようだ。
1.レイの正体わかる
前回、『最後のジェダイ』の感想で私は、レイとカイロ・レンは双子の兄妹だと書いたが、これは間違い。実はレイはパルパティーンの孫だったのだ。
ところでパルパティーンって誰? と思ったのはオールドファンで私だけではないはずだ。映像を見れば一発で誰のことかわかるが、字幕スーパーでは”闇の帝王”、”暗黒卿”と訳されていたあのラズボスキャラのことである。
SW3公開時、SW1から6まで全編出演した唯一の俳優とのことで、パルパティーン役の俳優が話題になったのを覚えている。
そもそも最初の作品SW4の字幕スーパーではフォースは”理力”、ジェダイは”騎士”と訳されていた。またダークサイドという語が出始めたのはSW1~3の新シリーズからだ。
2.SW4~6のオールドファンサービス
他界したレイア役のキャリー・フィッシャーだが、撮影は間に合ったようで、かなり長時間出演している。映画の中盤ぐらいで、役の中でもレイアも死んでしまう。もしかしたらキャリー・フィッシャーが亡くなったことで、ストーリーを作り替えたのかなとも思えたが、それほど不自然な死でもなかった。
前回死んだルークが今回登場することは、映画のサブタイトルからして想像できたが、ハン・ソロがちょっとだけ出てきたのは驚いたし、オールドファンにはうれしかった。
しかし、それ以上のオールドファンサービスはランドの登場だろう。ランドはSW5と6に出てくる準レギュラーメンバーだ。今回の三部作ではローズぐらいの存在感だろう。私はSW7から彼が出てくるものと思っていたがSW8にも出てこない。だからSW9でも出てこないだろうと思っていたら、今回は大活躍だ。ただし、昔の字幕スーパーではランドの名前は”カルリシアン”と訳されたいたように思う。
3.スカイウォーカーの夜明け、の意味
レンは物語の最初の方で子供から名前を聞かれる。レンは苗字がないただのレンだと答える。これが伏線になっている。その後、レンは本名はレン・パルパティーンだと知らされる。ラストシーンではレンがルークの故郷の惑星に行き、ルークの形見のライトサーバーを土に埋める。すると通りがかりの人から名前を聞かれる。レンは「レン・スカイウォーカー」と名乗り、物語は終わる。
ルークの実子でなく、養子縁組をしたわけでもなく、勝手にスカイウォーカーを名乗ったレン。
これはレンがジェダイマスターをルークから襲名した意味とも解釈できるし、それ以上にSWの主人公をルークから襲名したともとれる。
クライマックスシーンではカイロ・レイがダークサイドから改心して善玉のジェダイになり、レンとともにパルパティーンと戦うのだが、これはSW6のダースベーダーを彷彿とさせるストーリー展開だ。
4.意味づけよりドンパチものこそ真骨頂
しかしながら、こうした解釈はSWには似つかわしくない。
最新SFXを駆使した映像とアクション。開始から終了まで観客を飽きさせず、二時間半の時間が一気に過ぎてしまう。これがSWの真骨頂なのだ。
実はSW4日本公開の半年後から、評論家のSWバッシングは盛んだった。SFマガジンではキューブリック監督の「2001年宇宙の旅」を傑作SF映画とし、SWは中身のない子供だましだと酷評した。
その後、「ブレード・ランナー」が公開されると、またしてもSWは悪いSF映画の典型とされ、「ブレード・ランナー」をほめるための比較材料にされた。
バブル時代になると、ルキノ・ビスコンティ監督やビクトル・エリセ監督などのヨーロッパの文芸映画が多数日本に入ってくる。すると今度は文芸評論家たちがSWを酷評しはじめた。
SWは深い意味があるのでなく、ただのドンパチものだからだ。意味のないドンパチものの映画ばかり見ていると頭が悪くなる。こうした論調が一般的だった。
その一方、「未来世紀ブラジル」や「12モンキーズ」のようなカルトSFはともかく、メジャーなSF映画として、フィリップ・K・ディックの不条理ワールドを描いた「マイノリティー・レポート」やサイバーパンクを忠実に映像化した「マトリックス」シリーズが登場する時代になると、難しすぎてSF映画を敬遠する観客も出てきたのではないか。
SW1が公開される頃には、もうSWもその酷評も知らない世代が多くなり、SWは”懐メロ”映画の感があった。そしてそれから月日は経ち、今年でSWは42周年。時間が経てばどんなものでもレジェンドになり、ビンテージになる。
SWはSF映画の中で、のめり込むほど好きになれないが、万人が嫌いになりづらい映画シリーズだと思う。
(了)