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第52話「異界(5)」

 圧倒的な光景だった。


 単体で数百から数千の人間を平然と殺戮しては消えていくディアーボが、数えきれないほどの数で、見渡すかぎりの視界を埋め尽くしている。


 俺たちを不気味に見下ろすあの怪物の群れのなかに、マナウスやベネズエラのジャングルで人びとを狩り尽くし姿をくらませた個体も混じっているのだろうか。


 絶望的な状況にありながら、なぜか俺はそんなことが頭に浮かんだ。


 そのときすぐ隣にいるケンジが、聞きとれないほど小さな声で、襲ってこないのか、と疑問を口にした。


 確かに奇妙だった。


 なぜヤツらはあの砂漠の大群と違い、俺たちを狂ったように襲撃せずああして高みからこちらを凝視しているのだろう。


 何かを待っているのだろうか。


 妙に統制のとれた人外の怪物の振る舞いに、ぞっとした。


 ゼンもその違和感に気づいたのか、静かに高揚しながらも、連中へ飛びかかろうとはしない。


 耐えがたい膠着状態だった。


 俺たちを見下ろす邪悪な数千、いやそれ以上の視線を全身に感じながら、ふいに、俺はあの鎧の怪物のことを思った。


 ヤツがまた現れるかもしれない、そう期待している自分に気づいた。助けてほしい、と考えたわけではなかった。


 切実に、もう一度会いたい、俺はそう感じているのだった。


 一点の希望の光もない、死を約束された状況で、他の何よりも頭に浮かんだのがあの怪物だということを俺は不思議だと思わなかった。どうしてか、それが当たり前のように感じていた。


 バケモノどもは変わらず、身じろぎひとつせず物音ひとつ立てずに、俺たちを見ている。

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