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就活に失敗した俺がたどり着いたのは魔法学園でした  作者: 沙羅夏津
第一章 予科1年前期
18/23

緊急任務!

ピリリリリリリリッ


騒がしいアラーム音とともにベットから飛び起きた。


朝目が覚めても隣のベットはもぬけの殻だった。


寝ぼけ眼でミーティを開き目を見開いた。


急いで身支度をして部屋を飛び出した。


教室に着いた頃にはクラスメイトは大体そろっていてあとは先生待ちといったところだろうか。


伊吹は怒りをあらわにした形相をしてある席へと向かった。


「おい、紅葉をどうした。紅葉をどうしたって聞いてんだよ天王栖!!!」


襟首をつかみ力任せに持ち上げた。バランスを崩しながら立ち上がり、にらみつける光輝にもう一度大きな声で怒鳴った。


「俺の妹をどこにやったって言ってんだよてめえ!!お前のパーティーだろうが!お前の取り巻きだろうが!!お前の取り巻き4人全員揃っててなんで紅葉だけいねえんだよ!どういうことか説明しろ天王栖!!」


右手で握りこぶしをつくり、顔面に拳をたたきこんだ。


鈍い音とともに机を蹴散らしながら床に転がった光輝に馬乗りになり、何度も顔に拳を振り下ろす。


「てめえ、俺の妹を!!俺の妹を!!!」


「おい、伊吹やめろって!!」


「離れろって!!」


クラスメイトが伊吹を止めようとするがそれを振り払ってそれでも何度も何度も顔を殴り続ける。


荒い息を繰り返しながら血が出るほど唇をかみしめる姿をみてニヤッと光輝が笑った。


「おいてきたさ。あんな使えねえ女はよ。満足にパーティーメンバーを回復できねえポーションより役に立たねえ魔法使いなんかいらねえよ!」


狂ったように笑い出した光輝を見てさらに火が付いたように殴り続ける。


「やめなさい伊吹君!!」


教室のドアを開けて入ってきたのは葉月だった。


「みんな席について。これから緊急任務に向かいます。任務の内容は伊吹君の妹の紅葉ちゃんの救出。


それから光輝君と4人、それから伊吹君。来なさい」


いつもののほほんとした雰囲気はなくものすごく怒っているのは目に見えてわかる。


「なんですか校長先生。」


「あなたねえ!!なにをしたかわかってないの!?」


「光輝はなにもしてないっすよ学園長。あんな使えない魔法使いが回復に適正なんか持ってるのがいけないんすよ」


「ゴミはゴミ箱にってねケケケッ」


「まったく、光輝さんのパーティーに入れたことだけでも光栄なことなのになんて子なのかしら。」


「・・・どうかしてるわ」


勇者パーティーの面々は口々に紅葉の愚痴を葉月の前で言った。


「昨日あなたたちが受けたクエスト、『バーンホーンテイル』の討伐クエスト。なんであんなAランククエストなんか受けに行ったの?あなたたちの実力で勝てるとでも?」


「あぁ、勝てると思ったさ。あたりまえだろ。俺は勇者だここにいる雑魚どもとは違う。今ここでお前を殺してみてもいいんだぞ鳳仙院の落ちこぼれが!!」


鳳仙院の落ちこぼれという言葉を聞いた途端、目を見開き、平手で頬をひっぱたいた


乾いた音とクラス内に訪れる静寂。我を取り戻した葉月がつぶやいた。


「この後11時にクエストに向かいます。伊吹君は校長室に。」


葉月の跡につづいて教室を出て校長室に向かった。


「動揺するのも無理はないよね。クエストの難易度については知ってるかな」


「はい、石榴から聞きました。」


任務のランクはD~S、さらにその上のSSランクがある。


「Aランクの『バーンホーンテイル』の討伐は火山に棲むバーンホーンテイルを討伐するクエストなんだけど、おそらくはそこに紅葉ちゃんが。


それで、今回は救出のみ。バーンホーンテイルについてはなるべく鉢合わせないようにすること。


僕もバーンホーンテイルは相手にしたことがないからわからないけど、僕一人じゃなんとかならない。


無事でいるといいね、紅葉ちゃん。」


「・・・そうですね。教室に戻ります。」


そういい、伊吹は校長室を出て行った。
















Dクラスの面々が学園前に集合した。各々各職業の服装に着替え、準備が整った様子である。


「それじゃあゲートを開くから順番に入っててね。」


学園近くに設置された任務移動用のゲートをくぐり、いざ火山へ向かった。





「ここが火山・・・」


うなるような暑さとふきだす汗。一日もこんなところに居たら命の危険も見えてくる。


「ったくよ、なんであんなのの救出をしなきゃいけねえんだよ・・・。」


「ほんとだよなあ光輝。勝手にやってくれっての」


前の方で光輝率いる勇者パーティーが愚痴をたれながら歩いているのを追い越して伊吹は先を急いだ。


しばらく歩いて異変に気が付く。


「・・・おかしい、バーンホーンテイルがいない」


火山には魔物一匹もおらず、かといって魔物の亡骸もない。


嵐の前の静けさか。


「しっみんな静かに。」


目の前にあったのはバーンホーンテイルの巣だろうか。草が敷かれており、いくつか大きな卵もおいてある。


卵の大きさは人間以上の大きさであり人ッ子一人隠れるくらいのスペースはあるようだ。


「いるならここのはずなんだけど・・・。伊吹君、巣の様子はどう?」


「なにもいませんね・・・。巣の方に入ってみても?」


「うん、気を付けて。ほかのみんなは周囲の警戒、石榴君とすももちゃんも伊吹君と一緒に巣内を探してみて」


3人で巣の中を探すと卵に隠れて紅葉が見つかった。はぁはぁと荒い息を繰り返して全身から汗を流している。脱水症状を起こしていかねない。


「石榴、水を」


「あぁ、ほら伊吹。」


ペットボトルに入った水を手渡し、開いた口から水を流し込む。


「お、兄ぃ・・・?」


「よかった、無事だったんだな。よかった。帰ろう、俺らの帰る場所に」


「先生!!空から巨竜が!!!」


巨大な翼を羽ばたかせ上空から巨竜が全員がいる火山へと降りてきた


「嘘、なんで!?バーンホーンテイルじゃない・・・!SSランクモンスター『タイラントホーンテイル』!?みんな、ゲートに急いで走って!!伊吹くん、紅葉ちゃんを背負って走って!!」


クラスメイト全員でゲートに向かって走ったが、ゲートを目の前にして先回りした巨竜に阻まれた。


巨竜は巨大な尻尾を振り回し、ゲートを破壊する。


「っくそ、あと一歩のところだったのに!!校長先生!!どうすれば!!」


「僕の魔法でゲートを展開する!!だからこっちに!!」


「きゃあ!!先生!ホーンテイルが!!」


「みんな!!落ち着いて!落ち着いて!!」


伊吹が必死にクラスメイトをなだめるが、集団パニック状態に陥ったこの状況下では効果がなかった。


しかし、反応した人が1人


「じゃあお前がなんとかしろよ」


後ろから足蹴りを喰らい、タイラントホーンテイルの前に飛び出した。


「あっ・・・あぁ・・・ああああああ!!」


「グガァアアアアアアアアアア!!」


巨大な咆哮で全身がビリビリと震え、立ち上がることすらもできない。


「伊吹君!?」


ゲートを展開し終わった葉月が駆け寄る。


「ほら、お前がなんとかしてみろよ伊吹。できるんだろ?なあ?」


蹴った本人であろう光輝が取り巻きとともにその光景をクスクスを笑うだけである。


「とにかく、みんなゲートに急いで!!ほら、伊吹君立って!!」


「伊吹ぃ!!俺も加戦するで!!」


「私も!回復はまかせて!」


「サファイア、お前は紅葉と一緒に帰れ」


頭に乗っているサファイアを下ろし、紅葉のいる方向を指さしたが、いやいやと首を振り、小さい口を開けると大きく息を吸い込み、小さい火球を吐き出した。


「ピィ!!ピィィィィィ・・・ピィギャァ!!」


タイラントホーンテイルに向かって吐き出された火球は前足で軽くはらわれて消滅する。


「っくそ、・・・喰らえええええええ!!」


杖を取り出し、縦に振り、マジックミサイルをタイラントホーンテイルに浴びせる。が、まったく痛がる様子がない。


「やめろ!!石榴おおおおおおおおおおおおおおお!!」


「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


重い鎧がガシャガシャと音をたてながら両手で持った剣を構えて走る。


「ガァ!!」


タイラントホーンテイルの前足で軽くはらわれ、石榴は吹っ飛んだ。


「石榴!!」


すかさずすももが石榴に近寄り、回復魔法をかける。


「石榴、すもも、俺はいいからゲートに向かえ!!俺に秘策がある!!だから、先にいけええええええええええええええええええええええええ!!


こっちだ、タイラントホーンテイルううううううううううううううううううう!!」


大声を出してターゲットを伊吹に集中させる。


「でも伊吹!!」


「いいからいけ、紅葉を連れていけええええええええええええ!!」


伊吹が持つ杖の先が光り輝き、タイラントホーンテイルの足を持ち上げ・・・転ばせた


人間を持ち上げるだけでもやっとだが、あの巨竜を転ばせるなど容易なことではない。


たった一回でかなりの魔力を消費する。が、ここで倒れるわけにはいかない。


「伊吹君、これを!!」


すももがバックを放り投げてきた。


「中にはHPポーションと魔力回復ポーションが入ってるわ!!」


「ありがてえ!」


ポーションを一気に流しこみ、魔力を回復させ、立ち上がろうとしたタイラントホーンテイルにすかさず対象者を転ばせる魔法をかける。


「伊吹君!!」


「校長先生!!校長先生も早く逃げて!!俺がなんとかするから!!」


「何言ってるの伊吹君!生徒を置いていけるわけ!!」


「早くいけって言ってんだよ葉月!!紅葉やクラスメイトを連れてはやく!!!」


葉月はうつむき、決心したように顔を上げて伊吹に魔法を唱えた。


「マナエンチャント。僕の魔力のできるかぎりを伊吹君に分け与えたから!!


必ず・・・必ず助けに来るから!!絶対にだよ!!絶対に生きて待ってて!!」


「もちろんじゃないですか、はーちゃん!」


「だから、はーちゃんって言うな・・・。」


悲しい顔と涙を残し、クラスメイト全員と葉月を脱出させ、ゲートは閉じ、消滅した。


「はは、膝が笑ってやがる・・・こんなのなんとかできるわけないけど・・・


やるしか・・・ねえだろ!!」


弓と矢を魔力で形成し、矢を放つ。魔力が込められた矢は回転しながら羽をえぐる。


「ピィ!!」


サファイアがタイラントホーンテイルに向かって火球を吐き出す。


ボンっという音とともにはじけ、多少の目くらましになっただろうか


「サファイア!!お前逃げなかったのか!!」


「ピィ!!」


「わかった、わかったから。今はこいつ。だろ?相棒。力を貸してくれ。俺があいつを転ばせる。


だからお前はあいつの目をめがけて火球をはなってくれ!」


「ピィ!!」


小さく鳴いて火球を放った。


伊吹は残る魔力を振り絞ってタイラントホーンテイルを転ばせる


「俺も!!」


矢を引き、放つ。目にヒットした魔力の矢はタイラントホーンテイルの目をつぶした


「グガアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


「いまだ!サファイア、逃げるぞ!!」


サファイアを抱きかかえてひたすら火山を下る。振り返ることなく下り続ける。


体力が続くまで、下る。


「ッはぁっ・・・はぁっ・・・!出口だ!!」


日光で光り輝く出口を抜けたその先には・・・


「なんだよ、ここ」


目の前に広がる草原、熱帯林。むしむしとした暑さ。熱帯地域にいるようだ。


「はは、ははは。これが地上ってやつか・・・」


タイラントホーンテイルからは逃げられたものの、待っていた現実はそう甘くはなかった。


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