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就活に失敗した俺がたどり着いたのは魔法学園でした  作者: 沙羅夏津
第一章 予科1年前期
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嵐の予感

昼休みの出来事だった。石榴とすももと3人で学食で昼ごはんを食べ教室に戻ってきた時その異変に気が付いたのである。


「なんか人だかりができてんなあそこ」


石榴が指さしたその先には机を大勢のクラスメイトが囲んでいる状況だった。


野次馬根性丸出しで石榴がそれに近づいていき、伊吹に声をかけた


「おい伊吹!見たことない女の子おるで!!」


「ん・・・?」


もしかしてと思い、とある名前を口にした。


「紅葉?」


「あっ!お兄ちゃん!!」


椅子をガタっと音をたてて立ち上がり、涙目になりながら伊吹の懐に飛び込んできた。


むにゅっと当たるたわわに実ったそれが胸元に押し付けられ思わず顔を紅潮させる。


「どうしたんだよ?転校生の宿命だろ?あんなの。それからいつからこの教室に来てたんだよ」


「さっきだよ~校長先生が教室教えてくれて、時期にお兄ちゃんも来るでしょっていうからとりあえず空いてる席に座らせてもらってたんだけど、そしたらクラスの人が私を見て集まってきちゃって・・・」


「なあ伊吹、だれやそのおっぱい大きい子。お前の知り合いか?すももに負けず劣らずのおっぱいやぞ」


「誰がおっぱいおばけじゃ!!」


ぺしんと平手で胸元にツッコミを入れた。


「おばけとはいっとらんじゃろおばけとは!!」


「まぁ、俺の妹だ。ほら、挨拶しろ」


「四月一日紅葉です!何か知らないですけど私もこの愚兄のようにこの世界にやってきました。


よろしくお願いします」


ご丁寧に頭を下げたところ、クラス中からよろしくねと各々の口から発せられた。


「それでねそれでねお兄、私魔法使いになったの!回復に適正があるんだって~」


「ほ~よかったじゃ・・・ッ!!」


和やかな雰囲気をぶち壊してドアを開け入ってきたのは光輝とその取り巻きだった。


「おや、初めましてかな。僕は天王栖光輝。君は?」


「四月一日紅葉って言います!愚兄が迷惑をかけてないでしょうか」


「あははっ!迷惑だなんて!!」


取り巻きと光輝は腹を抱えながら大笑いを初めてた。


「光輝くん、この子回復魔法使えるらしいよー?パーティー入れてあげたら?」


っち、あいつ余計な事を・・・!


そのクラスメイトはこっちを向いてにやりと意味深な笑みを浮かべた。


「へぇ・・・ねえ紅葉ちゃん、僕のパーティーに入ってくれないかな?僕は君のお兄さんよりもこの世界について詳しいし、なによりお兄さんよりも強い。どうだい?」


「おい紅葉、やめておーーー」


「なにか言ったか?伊吹ぃ・・・」


目を細めてにらみをきかせる男、大河だ。


スキンヘッドに眉間にシワを寄せて肩を揺らしながら近寄ってくるあたり、ほんとにやーさんのようだ


「そうだよ、兄である君に決める権利はない。すべては紅葉ちゃんが決めること。そうだろ?」


「私は・・・。もしよかったら天王栖さんのパーティーに入れてほしいなって思います。


私はこの世界に来て右も左もわからない状態です。よく知ってる人が一緒にいてくれるのは大変心強いことだし、強い人がいればもっと心強いです。だからお願いします」


「ちょ!!紅葉!!」


手を伸ばして紅葉を止めようとするが、光輝の元に歩いていき差し出された手を握ってしまった。


伸ばした手は空を切った。こちらを見て勝ち誇った笑みを浮かべ


「うん、よろしくね紅葉ちゃん。それから僕のことは光輝でいいよ


ほら、お前らも挨拶をするんだ。」


取り巻きの4人に挨拶をせかした。


伊吹は我慢できずに教室から飛び出してしまった。行くあてもなくただひたすらに走る。


兄として止めることができなかったふがいなさを後悔しながらひたすらに走った。


キィィィ


たどり着いた先は屋上。昼休みはもう終わっていて屋上には誰もいなかった。


「っくそっくそ・・・くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


鉄の柵に手をたたきつけて叫んだ。ひたすらに叫んだ。


「ったく、授業サボってなにやってるんだか。それから授業中だよ?もう少し静かにしなさいな」


「えっ・・・?」


声がする方向を向くとそこにはベンチでサンドイッチをむしゃむしゃと食べている葉月の姿だった。


「ちゃろ~☆で、どしたのそんな取り乱してさ伊吹君。


あ!あとねあとね、君の妹ちゃんは魔法使いで回復に適正があったんだよ~」


「それが問題なんですよ!!それが・・・そのせいで!!!」


その言葉を聞いてなんとなく察しがついたのか複雑な顔をしていった。


「・・・光輝君のパーティーに誘われて入っちゃったのね。大変な事をしでかしてくれたなあ・・・あの人も・・・。僕は止める権利はないけど、無茶させなきゃいいんだけど・・・。


この学校にクエストボードがあるのは知ってる?」


「はい、知ってます。俺はまだやったことないですけど、学校はいったすぐのところにある大きな掲示板に貼ってある依頼状からクエストを受けるんですよね。」


「そうそう、それであの人達はしょっちゅうそれを受けてるんだ。もちろん討伐クエストもね。


彼らもレベルが高いからね。無茶なクエストを受けてなんとかしてでも上のクラスとカテゴリーを上げようとしている。


まだ全然経験がない紅葉ちゃんをもしも討伐クエストなんかに誘ったりしたら・・・」


「・・・俺には止める権利なんかないですよ。あいつは自らあいつらのパーティーに入ったんだ。


見ず知らずの連中なのにあいつらを頼って。はぁ~兄ってなんなんですかね。


紅葉ならこっちに来てくれると思ったのに・・・。」


「まぁ、なにもないことを願うしかないよね・・・。」


二人して黙り合ってしまった。しばらく時間がたつと屋上のドアが開かれた。


「お、ここにいたんか伊吹。さがしたでほんま。ほら、教室戻ろうや。」


「あ、校長先生、部屋はどうすれば・・・?」


「まぁ、それはいいんじゃないかな。部屋を魔法で拡大させてベット一つと家具とか二人分にはしておいたけど、他に部屋がない限りあの子はあそこに必ず帰ってくるよきっと。」


「わかりました。それじゃ、ごめんね石榴。探し回ってもわっちゃって・・・。飲み物買いに行こうぜ。


それじゃあ校長先生また。」


ぺこりと頭を下げて石榴と伊吹は屋上を出て行った。


「はぁ・・・やっぱりあの連中をDクラスに置いておくわけにはいかないかな・・・。」


葉月はそうつぶやいて気分は曇り空でも晴れ渡る空を仰いだ。














二人は屋上を出て自販機で飲み物を買い、中庭に出た。


カシュッ


「んくっんくっぷはぁ・・・なぁ伊吹、お前はどう思ってるんだ紅葉ちゃんのこと。


いいのか?あんな連中に渡しちゃってよ。」


「いいわけ・・・ねえだろ。でも、俺だけじゃあいつらには勝てないし、正直逆らえもしない。


かといって俺に紅葉を止める権利もない。ただあいつらがなにもしないことを願うしかない・・・。」


「確かに、俺と伊吹、すももの3人じゃあいつらには到底かなわないだろうな・・・。」


珍しく関西弁?広島弁?いろいろな方言が混ざったしゃべり方をしていないあたり真面目に悩んでくれているってことだろう。


「あぁ、もっと、強くならなきゃな・・・。なぁ、石榴。俺らもクエスト受けてみないか?


俺自身の実力を試してみたいんだ。もちろん討伐クエストで。」


「んじゃあ今日部活見てからクエストも見ていくか。そうと決まれば!」


立ち上がって中身が空になった缶を缶入れに投げ入れ言った。


「あぁ、行くか」







しかし、その日の夜、紅葉が部屋に帰ってくることはなかった。

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