変態兄貴と完璧妹
コンコンッ
・・・
コンコンッ
「あれ、いないのかな」
校長室前に着き、ドアをノックするが、中からの反応がないのでドアを開けようとしたが鍵がかかっていた。
「仕方ない。あれを使うか」
「え?あれって?鍵かかってるじゃない。どうやって入るのお兄ーーー」
カチャリ
「失礼しまーす」
「な!?なにしたのお兄!!不法侵入だよそれ!!」
「ちょっとした魔法をね?」
ドヤ顔をしながら得意げな顔を紅葉に向けてするが、睨まれてしまった。
まぁ、やってることは犯罪だしね。
「はーちゃ・・・校長先生いないんですかー?」
中にはいるがもぬけの殻で人っ子一人もいなかった。
「ほら、誰もいないじゃん。校長室なら中に人がいれば鍵なんかかけないよ。なんかしてない限りは」
「それもそうだな。・・・どうするかな。このまま紅葉を放っておくわけにはいかないし・・・。
とりあえずちょっとここで待っててくれないか?」
そういうと校長室内に紅葉を置いて廊下にでてミーティで葉月に連絡を取る。
数コール後に葉月がでた。
「はい~伊吹君ちゃろ~どしたの?」
「今日は校長室にいないんですね・・・今どこにいますか?」
「ん?ここだよ?」
「え?」
トントンと肩をたたかれ、後ろを振り返るとそこにはミーティを持った葉月が立っていた。
「伊吹君ちゃろ~☆」
「ほんと神出鬼没ですね・・・。いるなら校内にいるって言ってくださいよ・・・」
「ごめんごめん。で、僕になんか用事?」
「校長室入ってみればわかりますよ」
「あのね~伊吹君?校長室に鍵かけてあったでしょ?いくら君が解錠の魔法を使えるからと言ってむやみやたらに魔法を使って鍵を開けちゃいけないよ?
僕がいるときはいつも鍵開いてるんだから余計な事しちゃだめだよ?」
ロリに怒られてしまった。でもこれはこれで・・・すごくいい!!
ドアを開けると、紅葉がソファーに座っていた。
「あ、初めまして!!」
葉月に気が付いた紅葉がすっと立ち、頭を下げた。
「ん?小学生?」
「誰が小学生じゃ!!」
なぜか横にいた伊吹に蹴りをいれる葉月
「痛ってぇ!!なにするんですか校長先生!!」
「だって女の子蹴ったりたたいたりはしたくないじゃん?」
「だからって俺をーーー」
「まーいいじゃんいいじゃん減るもんじゃなし!!」
「はぁ・・・もういいです。ご褒美としてもらっておきますよ」
にやっとキモイ笑みを葉月に向けてしてみせた。
その笑みを見て葉月は顔をひきつらせて指をパチンと鳴らした。
すると、伊吹の頭上には金たらいが出現した。
「同じ手はくわないですよ!!」
そういい素早く前によけた。が、なにかに足をとられて盛大にずっこけた。
「あははははははは!!上ばかりみてると足元をすくわれるよ?」
ぐぬぬと葉月の方を見ると足を前に出した葉月がいた。
たらいはフェイントで本命は足に引っかけることだったらしい。まんまと引っかかってしまった。
「あの~?」
「あぁ、ごめんごめん!で、君は誰かな?」
「すみません、大変申し上げにくいんですが、そこで寝っ転がって校長先生のパンツを見ようとしてるクズ兄ぃの妹で紅葉って言います。ほんとこんなゴミ兄ぃでごめんなさい」
ずっこけたままの寝そべった態勢で葉月のスカートの中を必死に覗こうとしている兄の頭を思いっきり踏みつけてやると「あふんっ」と気持悪い声を漏らしたのでそのままひたすら蹴り続けてあげた
「ほんとこんなお兄ちゃん持つと苦労するよねえうんうん。君も異世界からきたクチかな?
まぁ、ようこそ!我が海月学園へ!僕は歓迎するよ~」
そういって兄を蹴り続けている紅葉に近寄って背伸びをして頭を撫でようとするが、手が届かないので手をとってブンブンと振り回した。
「紅葉ちゃんもこの学園に通うことになると思うから、これに記入お願いね~
それとごめんね、寮なんだけどもう空きがないんだ。お兄ちゃんと相部屋でもいいかな?僕がベット一つ追加しておくから」
「はい、構いません。むしろ感謝しかないです。こんなゴミィちゃんを預かってもらってて・・・。」
「にゃはは、そういわないでよ。あんなのだけど彼もなかなかやるんだよ?
っと、かけたかな。それじゃちょっと血印をお願いね?」
小ぶりのナイフを出現させて紅葉の前に置いた。紅葉はそれをとり、親指を軽く傷つけ枠線の中に親指を押し付けた。
すると用紙が光を放って学生証に変化した。
「はい君のミーティね。手を出して?回復魔法をかけるから」
言われるがままに出血している手を差し出した。
親指の上を葉月の手が通るときれいに傷口が塞がっていた。
「すごい・・・これが魔法・・・」
「にゃはは、紅葉ちゃんもさっきそこの変態がやってるところみたでしょ?鍵を開ける魔法
紅葉ちゃんのお兄ちゃんは珍しい魔法に適正があってね『無属性魔法』を得意とするんだ。
この学園には無属性魔法を使う人なんかいないし、僕が知る限りでも2,3人いるかいないかくらいかなあ。」
「そんなにすごいんですかお兄」
「うん、頭の回転もいいしね。それでこの間ちょっとやらかしちゃったんだけどね・・・」
たははと力なく笑う葉月。
「もー、お兄?校長先生に迷惑かけちゃだめじゃない!もしかしてさっきの山吹さんにも迷惑をかけてるんじゃないでしょうね?」
「痛いとこつくなお前・・・」
ご褒美タイムもとい妹の足蹴りが終わり満足そうな顔をしながらサファイアとじゃれあってる兄ににらみをきかせた。
「やっぱりお兄には私がついていないとなにもできないんだから!!」
「クラスも同じクラスになるから介護よろしくね?紅葉ちゃん。それじゃあ紅葉ちゃんは適正検査をしにいこうか。伊吹君はまだ1限始まってないからはやく教室に行きなさい!」
「はーい、失礼します。それじゃ紅葉またあとでな」
「うん、お兄。」
伊吹が校長室を出て行ったところで紅葉は葉月に聞いた。
「お兄、なにしでかしたんですか?」
真剣な顔つきをした紅葉を見て葉月も真剣な顔つきで答えた。
「魔力欠乏症。魔弓については聞いた?」
「はい、大体ですけど」
「それでね、普通じゃ考えつかないことをやってのけたの。部長である牡丹ちゃんですらも度肝を抜くほどの芸当を。結果的に言うと成功。
あの技をマスターできれば牡丹ちゃんなんか足元にも及ばないと思うよ。それくらい器用な人なんだ。伊吹君は。
でも、その無茶がたたったんだ。彼自身もこの世界にきてまだ数週間。魔力量もろくにない状態でそんな大技使ったらどうなるかわかるかな?」
「それが魔力欠乏症の原因ってことですか」
「その通り。この世界でいうと魔力っていうのは命と同等のものなんだ。もちろん、心臓を一突きされれば死ぬし、魔力もそこ尽きると魂の抜けた人形のようにピクリとも動かなくなるんだ。
外部から魔力を再度供給されるかなんかしないといけないんだけど、一定時間を経過してしまうと存在そのものが消滅してしまう。
死の淵を歩いていたんだ君のお兄ちゃんは。だから、君が来てくれて本当にありがたいよ。紅葉ちゃん。
伊吹君には牡丹ちゃんもいるし、仲のいいクラスメイトもいるけど、それでも心配だ。彼はまだなにかしでかしそうな気がしてね。」
「お兄は・・・案外努力家なところがあるんです。実は、現実世界の方で就職活動に失敗して落ち込んでいたんです。それでもめげずに必死に食らいついて、大学だって単位も危ないのに・・・。
お金を出してくれた両親のためにもってがんばってたんです。でも、時々無茶しすぎることがあるんです。もともとお兄はそんなに体が強くありません。こんな実力主義な世界に来たら変に無茶しなきゃいいんですけどね・・・。」
本気で伊吹のことを心配している様子を見て葉月は一安心した。
「うん、わかった。っと、長話もここまでにして適正検査に行こうか。」
「はい、よろしくお願いします。」
立ち上がり、二人は学園の外のグラウンドに向かって歩き出した。
ーーー私、いいのかな。このままお兄に甘やかし続けて。たった一人の兄妹だけど、お兄ちゃんって呼べるほどの威厳もないし、むしろ私の方がすべての面において上なわけだし・・・。
でも、お兄はお兄だもん。兄妹これからも助け合って、こんな世界だからこそーーー