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就活に失敗した俺がたどり着いたのは魔法学園でした  作者: 沙羅夏津
第一章 予科1年前期
15/23

再会と歓迎

いつからこんなに弱くなったんだろう?出会って間もない人になんでこんなにも心を揺さぶられるんだろう?毎日思っていた疑問。


脇目を見ずに必死に努力して努力してきた。周りの期待に必死に応えてきた。結果こそすべて。だから友達なんかもいなかったし、必要なかった。すべては没落してしまった家『山吹家』のために。


かつての山吹家は高い魔力と膨大な富を持ち、有名な家であった。しかし、そんな生活も長くは続かなかった。ある事件を境に血筋が途絶えてしまったのである。


その事件というのは、『山吹家焼き払い事件』山吹家に恨みを持った家系が夜な夜な山吹の家を訪れ、火を放った。


その当時の家の主である山吹吉宗、その妻桜、そして子供も火事に巻き込まれてしまった。


残ったのは吉宗と桜の子供の一人、山吹牡丹の母である山吹菖蒲やまぶきあやめであった。


家は全焼、築き上げた信頼と富はすべて消え、菖蒲は一人残ってしまった。許嫁がいたのでその家でお世話になり結婚、そして牡丹が産れた。


菖蒲はかつての山吹家のあるべき姿に戻すために必死に牡丹に物事を教え込んだ。しかし、牡丹のもともとの魔力は低く、汚名返上とはならず今に至る。


誰ともかかわることなく、学園も最後の年になったとき、牡丹の目の前に現れたのが伊吹である。


何度も突き放したがしつこくついてくるこの男にどこか心を許してしまった部分があったのである。


初めてできた『友達』と言える存在。先輩と後輩ではあるが、友達というのも過言かもしれない。


がしかし、クラスメイトとも最低限の会話はあったものの、ここまで仲良くなった人は伊吹が初めて出会った。


そんな伊吹が先日魔力欠乏症により生死の境をさまよったとなるとそれは動揺するに決まっていた。


「甘えてるのかな・・・私。」


方向音痴で頼りなくて、でも笑顔だったり、わけ隔てなく自分に接してくれる。


「あーもうやめやめ!!もう寝ましょ・・・明日も早いんだから・・・」


頭をぶんぶんと振って彼のことを無理やり頭から離れさせまどろみに身を任せた













今日もいつものごとく彼がやってくる。顔はにやけていないかしら。頬を触ってみる。うん、大丈夫いつもの私だ。


彼が男子寮から走って自分のところにやってくる。頭にはいつも通りサファイアを乗せて。


いつも一緒にいるサファイアに嫉妬を覚えつつも朝のあいさつを交わした。


「おはよ、伊吹君。」


「おはようございます、牡丹さん。」


「それじゃあ始めましょうか」


その合図とともに私は走り出した。そう、友達・・・いい後輩ができても私のやることは一つ。


両親の期待に応えること


「今日から一応学園復帰するんですけど、部活も普通に出てもいいですよね?


というかまだ入部届すら提出してないんですけどね。」


「今普通に走っているけれど、フラフラとかはしない?スタミナがもともとないのにさらに今回の件でスタミナが落ちてるから無理は禁物よ?


部活参加すること自体は全然かまわないのだけど、昨日の約束もちろん覚えているわよね?」


「もちろんですよ。もう無理はしないです。地道に力をつけていくつもりですので、よろしくお願いします!」


「それじゃあ、今日の朝練習はなしで、放課後からやりましょうか。竜胆さん達も今日は連れてくるのよ?」


「はい!」


大体1時間くらい軽くランニングをしてから二人でストレッチ、シャワーを浴びに戻り、教会へ。


「それじゃあ私はお祈りをしていくわね。伊吹君もすればいいのに」


「いえ、俺は別に・・・」


そ。と短く答えると十字架の近くに行き、膝をついて祈りをささげる。


伊吹は入り口付近で壁にうつかりその姿を見る。


祈りをささげ初めて数分後のことである。突然十字架があるあたりからまばゆい光が放たれる。


そして現れたのはーーー


「ここどこ・・・私の部屋は・・・?それに私パジャマだし・・・」


きょろきょろと周りを見渡してみるとだいぶ頭が冷えてきたのか冷静に分析を始める


「クラスメイトが言ってたなぁ・・・。異世界転生っていうんだっけこういうの。」


そんなことを思いながらある人物が目に入った。


お祈りをしている制服姿の赤い髪をした女性だ。


「綺麗・・・ん?後ろの人はお祈りしないのかな」


後ろの人はただ突っ立っているだけで、その女性の姿を見ているだけだった。


「あの、すみませんちょっといいですか・・・?」


「はぁ、何度目よあなた・・・お祈り中に声をかけないでって・・・女の子?」


「いや俺後ろにいますけど・・・って紅葉!?」


「え?」


名前を呼ばれた人の方向を向くとどこかでみたことがあるような顔というのは認識できたが、誰かとまではわからなかった。


その人はこちらに駆け寄ってきて両肩に手を置いた


「紅葉じゃないか!!どうやってこの世界にこれたんだ?俺もイマイチよくわかんなかったけど・・・。


でも、よかった。心配してたんだ。」


体に触れられたせいか、一気にモヤがかかっていた記憶が晴れていくのを感じる。


「お・・・にぃ・・・?お兄!?お兄!!やっぱり・・・お兄だ・・・よかった・・・。」


「え?なんで泣いて・・・ほら、泣くことないだろ」


服の袖で涙をぬぐってやった。そして牡丹の方を向き紹介した。


「なんでかわからないですけど、召喚されたみたいです。これ、俺の妹の紅葉って言います。」


「あら、妹さんなんかいたのね。よろしくね?紅葉ちゃん。」


「え?あ、はい。よろしくお願いします。」


「あなたの妹さんならあなたが責任もって校長室に連れていくことね。私は学園にいくから。」


「ちょっと待ってくださいよ!僕も一緒に・・・っていっちゃったか。


困惑するかもしれないけど、ここは異世界なんだわ。いうても俺も最近きたばっかりなんだけどね。」


「ほんと・・・心配したんだから・・・バカ兄ぃ・・・」


胸元に飛び込んでまた涙を流した。それをぽんぽんと背中をたたきながら伊吹はこういった。


「バカ。お前を一人にするわけないだろ?たった一人の大切な妹なんだから。」


うん、うんとうなずいて兄がいる実感を、兄の声を、兄と存在を確かめたのであった。













学園に向かって二人して歩く。二人して登校?するのはいつぶりだろうか。


「ねえお兄。ここってどこなの?私、家にいて私の部屋に入ろうとしたらここにきちゃったんだけど。」


「俺も実は部屋に行こうとしてドアを開いたらこの世界に。たぶん異世界なんだと思う。その証拠にほら」


頭の上で寝ているサファイアを紅葉に突き出した。


「ん?なにこれ。かわいいじゃん」


「レヴィアタンっていう竜型の魔物の幼竜らしい。わけあって俺が育ててるんだわ。」


「へ~」


そういうと興味津々にツンツンとサファイアをつつく。すると羽を伸ばしてサファイアが起きた。


「ピィ~」


「おはよ、サファイア」


「ピィ!!」


サファイアは自分の顔を伊吹の顔にこすりつけた。


「ずいぶん懐かれてるのね」


そういって手を出そうとしたらもちろんサファイアは威嚇という態度で返した。


「あはは・・・ごめんよ。なんか俺以外には触れさせてすらくれないんだわこいつ。」


そういうと撫でまわしてみせた。目を細めて気持ちよさそうにする姿を見て紅葉は眉間にシワを寄せながら悔しがった。


「っと、着いた着いた。ここが学園『海月学園』だよ。」


「へぇ~大きな学校だね。お兄、こっちきてからこんなところに通っていたんだ。大学みたいだね。」


「まぁ、そうだな。とりあえず校長室に行こう。きっとはーちゃんはいるはずだから・・・」


「はーちゃん?」


聞きなれない名前に首をかしげる紅葉。その様子を見てとっさに訂正した。


「葉月先生。苗字は鳳仙院とか言ってたかな・・・」


「すごい苗字だね・・・なんかお金持ちっぽい苗字してるよ。」


「金持ちかどうかは知らないけど、すごい魔法使いなんだ。校長室着く前に軽くこの世界について知ってる限りで説明するよ」


伊吹は紅葉にこの世界について教えた。学園のこと、寮のこと、学園外のこと、部活のこと、牡丹のこと・・・


「へぇ~さっきの綺麗な人、山吹牡丹さんって言うんだ?すごいねお兄。向こうの世界じゃ浮いた話なんかなにもなかったのにこっちの世界じゃリア充だ!あんな巨乳でかわいい人と仲がいいんだもん」


ジト目をしながら兄に毒突いた。苦虫を噛み潰したような顔を伊吹はしながらも久々の妹とのコミュニケーションに喜びを感じた。


























































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































































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