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就活に失敗した俺がたどり着いたのは魔法学園でした  作者: 沙羅夏津
第一章 予科1年前期
12/23

おしかけ女房

「んん・・・」


目を開けるとまぶしい光が目に飛び込んできた。


あまりのまぶしさに目を細め、腕で光を遮った。


寝ていたようで、立ち上がろうと手を地面に着こうとした時・・・


ふにょん


なにか柔らかいものに手が当たった。


「なんだこの柔らかさ・・・」


もみもみ。ひと揉み。ふた揉み。


手によって形を変える豊満なそれは今まで触ったことのない感触だった。


「んんっ・・・」


頭上からなにか声が聞こえた気がする。


はっと目を見開くとそこには視界を覆い尽くす美少女の顔が迫っていた。


「山吹・・・さん?」


もしかして、さっき柔らかかったあの感触は・・・!


「ほんと寝ててよかった。」


安堵のため息をつきつつも状況を確認する。


目を横に向けると制服。下に向けると腹の上ですうすうと寝息をたてるサファイアが。


そして後頭部に感じるこの柔らかい感触・・・


「これはもしかして!?夢にまで見た膝枕というやつですか!?」


つい大きな声が出てしまい、その声で牡丹は目を覚ましてしまった。


「あ、よかった。目が覚めたのね、伊吹君」


柔らかな笑みを浮かべて思わずドキっとしてしまう。


美少女に膝枕をされながら笑みを浮かべられさらに胸まで触ってしまった。


自室だったら身もだえているところだった。


「えっと・・・ここは?それに俺はどうなったんですか?」


名残惜しいが膝枕とバイバイして寝ているサファイアを抱えて頭を撫でつつ牡丹に尋ねた


「ここは魔弓場よ。あなた、数時間前のこと覚えているかしら?」


「えっとたしか朝早く山吹さんとランニングして、シャワー浴びて、そのあと魔弓場で試合形式で山吹さんと・・・あっ・・・」


気が付いたらしい。伊吹の視線の先にあるものはそびえたつ300本のガーディアン。


「そうか、俺はーーー」


「倒れたのよ。あなた。魔力の使い過ぎでね。」


「それで俺はずっと寝ていたんですね・・・。ほんとご迷惑ばっかりかけてしまてすみませんでした。


これ以降は調子乗らないようにします。


助けてくれたんですね、ありがとうございました。山吹さん」


「いえ、方法を教えてくれたのは校長先生よ。私はただ・・・」


そう言いかけてなぜか顔を真っ赤にした牡丹。よくはわからないがとにかく助かったらしい。


「立てるかしら?まだ魔力が完全に回復していないからこれから学園内の保健室に行くわよ。


そこで校長先生が魔力回復のポーションを作って待ってくれていると思うから。」


「わかりました。よっと・・・。っととと」


立ち上がろうとすると、魔力が回復していないことを意味するかのように立ちくらみに襲われ思わずふらついてしまう。


「大丈夫?無理はしないでよ?」


そういって抱きとめてくれた。


「いえ、大丈夫です。立ちくらみがしただけなんで。ほら、サファイア起きろ。


それじゃ学園行きましょうか。編入そうそう学校を欠席するなんてなあ・・・。」


サファイアを頭に乗せて二人で魔弓場を後にした。


学園の保健室を開けるとそこには葉月一人しかいなかった。


「あれ、保健の先生は・・・」


「今日に限って休みらしくて。僕一人で魔力回復ポーション作ったよ~久々に作ったけど本当めんどくさいよねぇあれ。


それはそれとして、よかった伊吹君。目が覚めたんだね。それから、もうあんなことしちゃだめだよ?めっ!」


腰に手を当てて人差し指で胸をツンとつついてきた


「肝に免じておきます・・・」


「それじゃ、このポーションをささ、ぐいっとっそーれ一気!一気!」


フラスコのようなガラスの容器にはいった緑色の液体がどうやらポーションらしい。


どこか粘度がありドロっとした液体を意を決して一気飲みした。


喉にはりつきそうになる濃厚な緑色の液体は胃に到達し、腹部がじんわりと温かくなるのを感じる。


「おえ・・・マッズ・・・」


「まずいほうが効き目があるって感じがするじゃん?


あ、牡丹ちゃん君は普段通りこれから授業ね?僕は伊吹君を部屋に運んでおくから。


明日の朝練習はなし!それから伊吹君は明日ももう一日休むこと!いいね?」


「はい、わかりました」


ここはおとなしく従っておくことにしよう


「わかりました、ありがとうございました校長先生。伊吹君、お大事に。」


そういうとぺこりと頭を下げて保健室を出て行った。


「それじゃあ僕の体に触れて?移動魔法を使うから」


「はい」


そういうとなんの迷いもなくその平坦な胸に手をーーー


「はいダメーぶぶー!させませーん伊吹君の考えは見え見えですー残念でしたー」


これでもかってくらいに煽られた。ゲスな顔をしながら。金髪ロリに。なんか屈辱である。


「はぁ・・・これでいいですか」


「うん♪それじゃあ、いっくよ~エーラ!伊吹君の部屋!」


地面に魔法陣が広がり、光り輝き二人の姿は消えた。


気が付くと伊吹の部屋の中にいた。


「さ、寝る寝る~僕はもう帰るけど、ほしいものとかあるかな?」


「えっと・・・ママ」


「死ね!!魔力欠乏症になって死ね!!」


「ちょ、ま!俺病人っ!アーッ」


連続パンチを腹に食らい続けそのままベットに倒れた。
















「んん~」


次に目が覚めた時にはちゃんと布団の中にいた。横を見るとサファイア。


こいついつも寝てやがるな・・・。


「俺たしかポーションを飲んで、はーちゃんと一緒に部屋に来てそれから・・・うっ頭が・・・!」


思い・・・出せない!頭が重要なところだけにモヤがかかったような状態で思い出そうとするとズキンズキンと頭が痛む。


「まぁ、いいか。」


外を見ると夜になっていた。ミーティを確認するとまだ日付が変更されるまで4時間も早かった。


すると廊下からコンコンと控えめなノックが聞こえたので、


「開いてます、どうぞー」


と声をかけた。


すると現れたのはお盆を持った牡丹であった。


「よく眠れたかしら?ご飯まだかなと思って持ってきたんだけど・・・」


そういうと枕元の机の上にお盆を置いた。


「冷蔵庫開けるわね。飲み物はっと・・・」


手慣れた感じで2人分のお茶を用意すると自分用の椅子を出して座った。


「どう?体調は。それからご飯は食べれそう?」


「もうお腹ぺこぺこだよ。ありがとうございます山吹さん。」


「・・・牡丹でいいわよ、伊吹君。」


「え?」


「だから!牡丹でいいって言ってるの!!私だけ下の名前で呼ぶのもなんか変だし!!」


顔を真っ赤にしてそっぽを向いてお茶をズズっとすすった。


「えっと・・・牡丹さん」


「・・・うん」


なんだろうこのこそばゆい雰囲気。向こうの世界では感じたことのないリア充の波動。


こっちに来て青春しているなーと思う瞬間でもあった。


「それじゃ、いただきます。牡丹さん。」


作ってくれたものは胃にやさしいようにおひたし、おかゆとスープだった。


まずはおひたしを一口。根菜のうまみとダシの味がうまくマッチしていて濃すぎず薄すぎず、ちょうどいい濃さである。


次におかゆだが、スプーンですくってみると若干塩気が足りないかなと思い、スープを飲む。


こちらは少し味が濃い目に作られており、おかゆの薄さをフォローしている。


「どれもすごくおいしいです。ありがとうございました。牡丹さん。ごちそうさまでした。」


夢中になって箸をすすめてすぐに完食してしまった。


「お粗末さまでした。それじゃあ私は戻るから。朝ごはんとお昼によかったらこれ食べてね。冷蔵庫に入れておくから。」


そういってかごのようなものからサンドイッチを取り出して冷蔵庫にいれた。


「それじゃあお大事に。また明日の夜、ご飯持ってくるわね。」


「すみませんなにからなにまで。ありがとうございました。おやすみなさい」


「うん、おやすみ」


パタンとドアが閉まり静けさが部屋を包み込む。


「はぁ~牡丹さん・・・か。」


まだこの学園に通い始めて一週間くらいだが、始めよりもかなり距離が近くなった気がする。


仮にも本科2年の先輩ではあるのだが・・・


それでもニヤニヤが止まらない伊吹であった。


「あーもう寝よ寝よ!おやすみ!」


枕元に置いた杖をドアに向かって一振りするとカチャリと音がした。多少の距離でも鍵を解錠、かけることができるようになった。


布団をかぶってまどろみに身を任せる。


腹も膨れていたせいか、すぐに夢の中に落ちて行った。

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