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骸骨姫は朝日を拝めるか?①

序章を合わせて全部で4章の予定です。

1章5話~8話位になると思いますのでよろしければどうぞ楽しんでいって下さい。

転移した先にあったのはだだっ広い草原だった。あたり一面どこを見渡しても無限に草原が続いていて、その草原のど真ん中にはとてつもなく大きな廃城が建っていた。全体的にどんよりとした雰囲気を醸し出すその城は明らかにこの緑の世界において異質な存在であった。


何が待っているかは分からないが、とりあえずこの廃城にの中に入ってみるしかない。


「幽霊が出ませんように。」

願掛けをしながら廃城の中に入ると、どこからともなく現れた骸骨が話しかけてきた。


「いらっしゃいませ。リッケ様、私はリッケ様の試練をサポートするために遣わされている、ドックルと申します。そしてここは悪魔に滅ぼされた天界一の城ヴェルムンドキャッスルでございます。今は見るも無残な状態ですが。」

さっきの大柄な天使との会話でも思ったがなぜ俺の名前を知っているんだろうか。天使には何かそういう不思議な力があるのだろうか。目の前のこいつは骸骨だが。いや骸骨って…。

「骸骨までしゃべるってもう何でもありかよ…。」


思わず口に出してしまった。


「下界ではしゃべらないのですか?」


「しゃべってたまるか!」

村のじいちゃんばあちゃんがひっくり返るわ!


「では、本題に入りましょうか。リッケ様にはここで第一の試練を受けてもらうことになります。」


「おう、それで試練の内容は?」


「言えません。」


「何でだよ!!」

「リッケ様があまりにも弱すぎるからでございます。せめて私に勝てる程度でなければ、試練など到底始めることなどできません。それぐらい今のリッケ様は弱いのです。ご理解ください。ぷぷぷっ…。」

こいつ…。わざとらしく口に手を当てやがって。これで可愛い女の子とかだったらまだ可愛げがあるが、骸骨に笑われると無性に腹が立つ。

「笑ってんじゃねぇ!!ようはお前を倒せば試練が受けられるんだろ?」


「ええ。ですがあなたが私を倒せるようになるまで、どれほど死ぬんでしょうね?数回死んだあたりで諦めると私は予想しております。」

実際さっき大柄の男に殺されたときは一瞬だったから未だに現実味が湧かない。死ぬってあの死だよな?殺され始めたら恐怖を感じ始めるんだろうか。分からない。死ぬほど痛くて二度と味わいたくないってのは分かるんだがまだまだ経験不足だ。いや、死の経験不足ってなんだ。だがまぁとりあえずやらなければならない事には変わりないのだ。


「言ってろクソ骸骨、てめぇをぶったおすまでノンストップで生き返ってやるよ!骸骨のてめぇよりよっぽど骸骨らしくな!!人間様なめんなよ!」


「そうですか、ではどうぞどこからでもかかってきてください。」

そういってドックルは槍を構えた。


「ちょっと待った!俺にも武器をくれ!剣術一本でやってきたから剣を使わねぇと戦えねぇよ!」

小さいころから剣の申し子と言われてきたクロードと磨き続けてきた剣術は俺の数少ない取り柄と言っていい。剣があれば俺は戦える。


「ご愁傷様です。」


「え?」


「リッケ様は人間ですよね?元々私達とは土台が違うので武器とか意味がないんですよ。私たちは人間ごときが人間の世界で作られた武器を持ってきたところで傷一つつきません。文字通り次元が違う存在なんですよ。それを人間のリッケ様は無限吸収装置の力で無理矢理私たちレベルまで能力を引き上げるわけです。逆にいうとですね、リッケ様がいくら私たちのレベルまで近づこうと天界や魔界の武器は使えません。要は縛りプレイってやつです。張り切っていきましょう?」


「よくわからないんだが、俺は武器を使えないってことなのか…?」


骸骨はヤレヤレといったポーズをとりながら言った。

「だから言ってるじゃないですか。そうです。」


態度が癪に障るやつだ。天界に住んでいるのはこんなやつらばっかりなのか。先が思いやられる。


「まぁいい!ならこの身体で勝負するだけだ!」

そういってドックルに殴りかかる…が、当然のように当たらない。というか避けたというより消えたという方が正しいレベルだ。

「ナメクジでももっと早く動きますよ?」

ドックルはそういって一瞬で槍を俺の胸に突き刺したようだった。

刺された事が認識できないレベルなのだ。


合計蓄積値、4ポイント

基礎能力値 力2 敏捷2 防御1 耐久1 反応1

特筆すべき能力値、無し。特筆すべき才能、無し。

称号判定 【クソ雑魚】 


自分のステータスを読まれた直後に生き返る。今ポイントが増えていたぞ!

能力値は上がっていないがそのうち上がってくるだろう。

正面には骸骨がいた。どうやら死んだ場所で即時に生き返るらしい。タイムラグとかないのだろうか。


「あらら、ノンストップでしたっけ?なら生き返った直後に殺さなければいけませんよね?」

そういって骸骨はまた俺の胸を突き刺した。今度はドックルの姿が見えていたからだろうか。しっかり痛みが残った。


合計蓄積値、4ポイント

基礎能力値 力2 敏捷2 防御1 耐久1 反応1

特筆すべき能力値、無し。特筆すべき才能、無し。

称号判定 【クソ雑魚】 


蓄積値上がってねぇ! 経験を積んでいないからか!?死ぬ痛みを受けて何も得られていないとか耐えられねぇ!

とりあえず、突っ込んで一発当てに行くか。


生き返った直後に突進をかます。

すると骸骨はまるで突進を読んでいたかのように槍をまっすぐこちらに突いてきた。

「あらら、下界の民は考えが浅はかですねぇ。手に取るように考えがわかっちゃいますよ。」

どこまでもムカツク野郎だ。


合計蓄積値、8ポイント

基礎能力値 力2 敏捷2 防御1 耐久1 反応1

特筆すべき能力値、無し。特筆すべき才能、無し。

称号判定 【クソ雑魚】

おっ行動を起こしたおかげでポイントが増えている。やれることを最大限やったならば、すぐにやられたとしてもポイントが付くのか。なら、自分にやれることを続けるだけだ!!


生き返った後に突進は駄目だった。ならば次は様子見が正解だろう。

生き返ってすぐ後ろに下がった。


「あららぁ、遅すぎますねぇ。もっとなりふり構わず頑張った方がいいですよ?」

認識できないうちにまた殺された。


 合計蓄積値、12ポイント

基礎能力値 力2 敏捷2 防御1 耐久1 反応1

特筆すべき能力値、無し。特筆すべき才能、無し。

称号判定 【クソ雑魚】 


この後も様々なことを試したが、骸骨には通用しなかった。しかし、合計蓄積値は徐々に上がっていく。このポイントが貯まれば基礎能力値が上がるはずだ。


そしてようやくその時が来た。

合計蓄積値、30ポイント 

基礎能力値 力4 敏捷4 防御3 耐久3 反応3

特筆すべき能力値、無し。特筆すべき才能、無し。

称号判定 【クソ雑魚】

きた!!結構上がってる!!多少は見えるようになるんじゃないかこれは!

 


「リッケ様、これで10回目の死でございます。そろそろ諦めたほうがよいのでは?正直に申し上げますが、無理ですよ。リッケ様は巻き込まれただけのただの一般人です。どれだけ頑張ろうと魔界の奴らに勝てるわけがありません。それになるべく痛みがないように配慮しておりますが、それでもとても…とても痛いでしょう?本当は泣きたくなるほど辛いのでしょう?いいじゃありませんか。あきらめても、誰も咎めませんよ?」


「うるせぇ、ようやく希望が見えてきたところなんだ。水を差すなよ。」

そういってがむしゃらに突進をかます。

身体がめちゃくちゃ軽い!いける!!!


「おや?能力値でも上がりましたか?でも残念です…。さようなら。」

そういって骸骨はまた認識できないうちに俺の胸を突き刺した。


はっきりいってその後も酷いありさまだった。

死んで死んで死んで死んだ。何回死んだのだろうか。もう分からない。確かに俺は強くなっているんだろうが、骸骨との差が埋まる気がしない。後何回死ねばいいんだ?いつこの死のループは終わるんだ?


「リッケ様、もう十分です。ご覚悟を十分見せていただきました。もうやめましょう。私はもうあなたを殺したくありません。」


「いや、まだだね。」

嘘だ、本当はもう嫌だ。死にたくない。能力値が伸びるたび、耐久と反応が伸びるからか死への実感が増すのだ。一瞬で死ねなくなり、耐え難い痛みが残るのだ。なのにドックルの攻撃はいまだに一回も防げていない。


「身体が震えてますよ。」


そう言われて初めて自分の身体が震えていることに気が付いた。

死への恐怖が、無意識に身体にまで影響を与えていたのだろう。

生き返るとわかっていてもこんなにも怖いんだな。そりゃ…そうだよな。死ぬのは怖い。当たり前の事だ。誰もが一番遠ざけたいものだ。生きているものが、絶対に遠ざけたいもの。それが死だ。あの大柄の天使が言っていたように俺は死を舐めていたんだろう。だが、その分俺は覚悟もしていたはずだ。諦めるのか?ここで?


「正直ここまで持つとは思いませんでした。あなたは強い方です。勝てないであろう相手に何度も立ち向かうのは簡単な事ではございません。それでもあなたは何度も何度も私に向かってきた。もういいのです。死んでいったものたちの魂を生贄に何度も人間を生き返らせる。いくら追いつめられているとはいえそれはもう私からすれば悪魔とやっていることは変わりません。これはもう死への冒涜です。もういいのですよ。天界は滅びる運命なのです。リッケ様もゆっくり天界で余生を送られてはいかがでしょう?私から神様に無限復活装置との切断を申請いたしますよ?」


言われていることはもっともな事だと思う。諦めたほうがいいのかもしれない。死ぬというこの世で一番つらいことを繰り返す事の意味を俺は何度も死ぬことによって理解しかけている。とても耐えられるものではない。諦めることを考えると急に心が楽になった。あぁ簡単な事だったんだ。諦めてしまえばこんなにも楽な気持ちになれる。だが、駄目なのだ。あぁ駄目駄目だ。理解はしても、感情がそれを阻むのだ。だってカッコ悪いだろう?


親父とお袋の俺を小ばかにしたような顔が浮かんだ。アイナちゃんの可愛らしい顔が浮かんだ。クロードの憎たらしい顔が浮かんだ。

身体は震えてしまっている。諦めた方がいいってことも理解した。でも、それでもやることが分かっている、分かってしまっているのだ。なら立ち止まることは出来ない。

これはまだほんの、ほんの始まりに過ぎないのだ。途方もない地獄の始まりに過ぎない。それでも、進み続けなければいけない。

進み続けなければ、何も始まらないのだ。


「余生を送るにはまだ若すぎる、そう思わないか?」

精一杯の強がりを口に出す。これは決別だ。弱い自分への。死を恐れるのは悪いことじゃない。当たり前の事だ。だからこそ、一回一回の生を全力で絞りつくす。それが今の俺のやるべきことなのだ。死んでいった天使たちの魂へ敬意を払いつつ全力で成すべきことを成すのだ。友のため、好きな子のため、両親のためにも。


「配慮が足りませんでしたね。いかんせん骸骨の身ですので。申し訳ありません。」

骸骨の表情など分からない。だが、どうにも表情を変えた気がした。

そしてすぐに遠慮容赦なく、骸骨は襲ってきた。


その後も山ほど死んだ。死んで死んで死にまくった。痛みが増していく。生き返った直後身体に痛みの感覚がフラッシュバックする。それでも死に続ける。精一杯戦って、死ぬ。それしか俺にはできない。繰り返して繰り返して繰り返し続けてようやく、実る時がきた。


合計蓄積値、286ポイント

基礎能力値 力28 敏捷25 防御22 耐久22 反応22

特筆すべき能力値、無し。特筆すべき才能、無し。特筆すべき性格 [不屈の精神]

称号判定 【愚者】


よっしゃ!!ついに雑魚から脱却してやったぜ!長かった...。いやでも愚者はないだろ。能力値を読み上げる奴にまで馬鹿にされる俺の人生って…。


それになんか不思議なものがプラスされてる。性格ってなんだ。それ能力に関係ないだろ!

でも不屈の精神ってめちゃくちゃかっこいいな。


「驚きました。ついに称号が変わりましたか。」

どうやら俺の表情を見て読み取ったらしい。


「人間の身でありながら、よくぞここまで耐えたものです。もう私は何も言いません。あなたを少しだけ信じましょう。できるならば私を倒してください。そして試練を乗り越えて救ってください。天界を。」 


「任せとけ!!」

そういって骸骨に殴りかかる。

そしてまたすぐに殺された。かっこ悪い…。

でもまぁ、希望が見えてきた。後何回死ねばいいのかは分からないが、何回でも死んでやろう。それで皆を救えるのならば、それでいいのだ。この不屈の精神とやらでなんとかしてやろうではないか。


リッケ君は本当に特筆した才能もないですし、剣でも小さいころからクロードに勝てたことは一回もありません。ですがクロードと戦い続けたことによって、徐々に、本当に徐々に強くなっていったという設定があります。唯一小さいころから好きで続けてきたものが剣術だったのです。それもまぁ封じられちゃいましたが。リッケ君の未来に幸あれ。

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