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閑話 勇者の戦い

日曜日の更新ド忘れしてました。すみません。

 辺り一面血で真っ赤になっていた。本来緑に囲まれているはずであろうこの魔王城直前の森は人間も魔物もお互いに殺し合い、ひどい状態だった。ここを抜ければ魔王城。そこで魔王を倒せばクロード達の旅は終わりを迎える。

しかし魔王城直前で、魔王城へ行かせはしないと、ここぞとばかりに魔物が押し寄せてきていた。


「クソがぁああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」

仲間の戦士の一人が魔族に死にもの狂いで斬りかかる。


クロード達は魔界領に入ってから何度も何度も死にそうな目にあっていた。しかし、そのたびに仲間の数を減らしながら進んできた。最初仲間が死んだ時には思い悩み、散々泣いたものだが慣れとは恐ろしいものだ。総勢23名の仲間が6名になった今では、仲間が死んでも落ち込まず戦えている。俺は魔物と戦っているうちに人間の心を無くしてしまったのだろうか。


ズシャァ!!という音と共にまた仲間の戦士が大きな芋虫のような化け物に殺された。

殺された戦士は大きな芋虫に食べられている。あぁ、また死んだ。これで5人か。


「ひぃいいいいいい!!ひぃいいいいいいいいいい!!」

高潔と名高かかった聖騎士の男は四つん這いで魔物から逃げながら失禁している。右足は無くなっており、顔は涙と血と鼻水でグチャグチャだ。助けに行きたくとも絶えず魔物がやってくるため助けに行くこともできない。

目の前の大きなサソリのような化け物を何体も何体も何体も何体も何体も斬り殺し、魔法で焼き尽くした。それでもなお後ろには大型のオーガやオークが迫ってくる。


あぁ、ここは地獄だ。とクロードは一人思う。だけど、諦めるなっていうんだろう?なぁリッケ。お前はどうしてる?会いたいよ、リッケ。また一緒に馬鹿をやりたい。


「ったく何やってんのよ!あんたらそれでも国王から選ばれた戦士どもなの!?」

アイナはクロードが思っていたよりずっと強かった。持ち前の光魔法で敵を蹴散らしていく。それでも攻めてくる魔物の量からしてジリ貧でしかなかった。


「クロード!!こいつらをいくら相手にしてもキリがないわ!!魔王城へ突っ込むわよ!」

アイナは切羽詰まった顔で言う。


「敵が多すぎてとても逃げられない!!」

俺は必死に叫ぶ。


「そのための勇者護衛戦士でしょうが!!ミッシェル!!デンドルン!!根性見せなさい!!私も手伝ったげるから勇者の道を作るのよ!!私たちがクロードを魔王城に連れていかなかったら誰が連れて行くの!ここで魔王を倒せなければあんたらの大事な人も皆いずれ魔物の進行で死ぬわよ!!死んでも道を開きなさい!!」

アイナは生き残っている戦士に発破をかける。自身もいたるところから血を流しているというのにここまで度胸があるとは…。最初はただのお荷物だと思っていたのに…。

まるで女版リッケのようだった。


「ったくよぉ。アイナ、人使い荒いぜ。しかし確かにそうだ!クロードを行かせなきゃ話にならねぇ!!。」

頭から血を流しながらデンドルンは持ち前の巨大な斧をクロードの前の魔物に振り下ろす。


「クロード!!ここは任せてアイナと先に行っちまいなぁ。あいつの光魔法は魔王戦で役に立つ。」


「カッコつけすぎですよ、デンドルン先輩。本来魔王討伐に加わる必要のないアイナさんを生き残らせようとして!でも私!先輩のそんなところ嫌いじゃないです!!!」

ミッシェルは特大の炎魔法でクロードとアイナの道を作る。


「さぁ、ここは私たちに任せて行ってください!!私たちの分まで頼みましたよ!!」

ミッシェルはこちらに親指を立てて言った。


「バカ野郎!!行けるわけないだろ!!!!」


アイナはクロードの服を引っ張る。


「行くわよ!!あいつらの勇気を無駄にしたいの!?アンタが魔王を倒さなかったら誰が倒すのよ!?」


「クソッ!!!!!」

クロードとアイナは目と鼻の先の魔王城へ向かって走り出した。


「ミッシェル。ここは俺だけで十分だ。お前も行け。」


「なぁ~にいってんですか先輩。先輩が死ぬときは私が死ぬときって約束したじゃないですか。」

そういってまた特大の炎魔法を魔物の群れに放つ。


「あぁ、そうだったな。ミッシェル。お前は最高の女だ。愛してるぜ。」

デンドルンはボロボロの身体を引きずって戦う。


「私もですよ、先輩。」

ミッシェルも残り少ない魔力も気にせず魔法を唱え続ける。


二人の戦士はクロードとアイナが行った後も、後を追わせまいと死にもの狂いで魔物を殺していく。


デンドルンは思い出す。沢山の仲間と一緒に飲んだ酒の味を。いろんな奴がいたのだ。いろんな奴が。


ミッシェルは思い出す。一緒に旅した仲間との恋バナを。いろんな人がいたの。いろんな人がいたのよ。


二人の実力からいえば、それはありえないほどの戦果だった。しかし、それだけの戦果を残してなお死んでいった仲間の事を思い魔物を殺していく。とうに限界など超えていた。

だが、それでも限界は残酷にも二人の下へ訪れる。


「はぁ…。はぁ…。ミッシェル、大丈夫か?」


「先輩、ごめんなさい…。私、もう魔力が…。」


「いい、十分だ。ゆっくり眠れ。ミッシェル。」


「先輩…。ずるいですよ…。最後までそんなに優しいだなんて。」


「婚約者さえも守れない弱い男でごめんな。でも、それでも愛してる。ミッシェル。愛してる!!!!」

デンドルンは涙を流す。


「私もです…。私も…。」


二人は抱き合い、キスをする。


その後ろから、巨大なオーガが二人を棍棒で覆い尽くした。






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