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第一先行部隊の休息

俺がここに転移してからもう25日が経った。もういつ命令が来てもおかしくない。下手したら明日には死んでいるかもしれない。第一先行部隊の皆は張りつめていた。


「今日は休みにしよう。」

俺は早朝、起床時間に寄宿舎で皆に告げた。いつもは率先して皆を起こし訓練に誘うので皆目を丸くしている。


「リッケらしくないな。」

綿のパジャマ姿でウルヴァは言った。。ウルヴァがこの寄宿舎で眠るようになったのはバハムートを皆で倒した後からだった。また一人でいるところを襲われてしまってはたまらないし、俺たち第一先行部隊は出会ってまだ日が浅かったので少しでもお互いの事を知るためでもあった。


「まぁ、そろそろ命令が来てもおかしくないし、皆も張りつめているしな。こういう時こそ休みが必要だろ?」


「あっしも賛成ですぜ。久々に羽がのばせらぁ。まぁ片方しかないんですがね。」


「俺も。母さん、文、送る。」


イゴールとバルログが賛同する。


「よし!じゃあ今日は休みだ!!各自点呼後自由行動!!」

そして、いつも通り集合場所に着き点呼を終える。


点呼を終えるとイゴールとバルログは早々に各自動き出した。俺も今まで模擬戦や、訓練に付き合ってくれた他の部隊の奴らに会いに行くことにした…のだが。


「おい、ウルヴァ、どうして俺に引っ付いてるんだ。」


「いや、お前が一人だと寂しいだろうと思ってな。」

ウルヴァは俺の肩を掴みながら言う。


「男二人が引っ付いて歩いてたらホモに疑われるだろ!!離せ!!」

俺はウルヴァを引き離そうとする。


「誰がホモだ!俺はお前のためを思ってだな!」

ウルヴァは必死に俺の肩に捕まったままでいる。


「さてはお前、他に知り合いがほとんどいないな?」


「うぐっ。」

ウルヴァは固まる。


「俺にも知り合い位いるぞ!ヴェイルとか!!」


「ヴェイルは友達というかお前の保護者だろ…。ったく一緒に行きたいなら素直にそういやいいじゃないか。」

ヴェイルは元々ヴェルムンドキャッスルで王族の護衛をしていた男だ。ほとんどウルヴァの保護者みたいなものだった。


「いや…。今まで友達がいなかったからこういう時どうしたらいいかわからなくてな…。」

ウルヴァは顔を下げながら言った。悲しいこと言うなコイツ…。まぁいい。


「それならこれから知っていけばいいだろ。一緒に他の隊を見に行こうぜ。」

俺がそういうとウルヴァは嬉しそうに顔をあげた。


「あぁ!」


「まずはどこから行く?」


「やっぱ第一遊撃部隊だろ!」

二人は仲良く第一部遊撃部隊の所へ行くのであった。



                 ☆


 バルログは一人、寄宿舎に戻り、文を書いていた。故郷にいる母へ向けての手紙だった。


母さんへ

 今俺は第一先行部隊に配属されて、3人の仲間と一緒に日々切磋琢磨しています。最初はまた城にいたころのように気味悪がられて1人で戦うことになるのかと思っていたけど、皆俺に優しくしてくれて、一緒に戦ってくれます。

母さんは元気ですか?城の人間には最大の治療をしてもらえるよう言っておいたので大丈夫だとは思うけど心配です。あまり動き回って医療班の人に迷惑をかけたら駄目だよ。


 正直、この文を俺は遺書にするつもりでした。出撃前に母さんに簡単な任務って言ったのは母さんの心労を少しでも減らすためです。本当は凄く危険な任務ですが、仲間のおかげでこの文が遺書にならないかもしれないので、遺書みたいに書くのは止めました。母さんは小さいころから周りの子供にいじめられていた俺をいつも守ってくれた。元気が無いときは励ましてくれた。お金がなくて飢えていた時もいつも俺を優先してた。今度は俺が母さんに恩返しをする番です。母さんは俺が任務を受ける代わりに治療を受けるのをずっと拒んでいましたが、安心してください。俺は必ず仲間と一緒に戻ります。戻ったら仲間を紹介したいと思います。面白い奴が沢山いて、皆いいやつなので母さんも喜ぶと思います。

母さん、愛しています。こんな俺を育ててくれてありがとう。安心して待ってて下さい。


「ふぅ、こんなところ。」

リッケ達が知らない事ではあるがバルログは酷い吃音症を患っており、喋るときは言葉を分けるようにしていた。一方書き言葉では丁寧な男なので、報告書類などの評判は城勤めのときから良かった。

文を書き上げたバルログは急いで城と基地を往復している伝書人に手紙を渡しに行くのであった。


         

                  ☆


 イゴールは一人、戦場になるであろうヴィグリードの丘の近くで寝転び、物思いにふけっていた。


はぁ、ミリエル、リュード、アイザック。近々お前らの所に行くかもと思っていたがどうやらあっしはまだまだ戦わなくちゃいけねぇらしい。お前らを殺しておいてまだのうのうと生きている自分が許せねぇっちゃ許せねぇんだが、やっぱりお前らを操ったヴェルエスの野郎を殺すまでは死ぬわけにはいかないよなぁ。


過去にイゴールは仲間殺しの罪で片羽をもがれていた。仲間を殺す羽目になったのはヴェルエスという悪魔の仕業だった。イゴールの村に突如攻めてきたヴェルエスがイゴールの仲間を操って村人を殺させたのだ。イゴールはたまたまその時狩猟に出かけており、異変に気付いた時には村の住人のほとんどが殺されていた。もちろん村は消滅。最後にイゴールが仲間であるミリエル、リュード、アイザックを殺して残った住民を救った。しかし不幸は止まらなかった。村の危機に村を守るはずのイゴールがいない事、操られていたとはいえ仲間を殺していたことなどを原因に罰を受ける事になったのだ。地下牢に入れられる事はなかったが、片方の羽をもがれることになった。そのことにイゴールは文句はない。自分が間に合っていれば村人がもっと助かっていたかもしれないのだから。だが、だが、


「あの野郎だけはぜってぇゆるせねぇ…!!」

イゴールは今も贖罪のため村の残った住民のために戦っている。イゴールがこの任務を受ける代わりに残った村の住民を城で保護する約束になっているのだ。


あぁ、ミリエル、リュード、アイザック、無念だったでしょう。あっしが絶対に仇をとりやすからね。いまのあっしには頼りになる仲間がいます。安心して眠っててくだせぇ。大丈夫。この丘に、この戦場にあいつは来るはず!絶対に仕留めてみせますぜ!


イゴールは人知れず覚悟を決めるのであった。



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