そしてウルヴァは立ち上がる。
書きたかったものが書けた気がします。駄文ではありますがこれからもよろしくお願いします。
「な…お前、どうしてここに!?」
お前は訓練をしていたはずじゃないのか?
天使食いを受け止めたリッケに続いてやってきたバルログは大剣を抜き、イゴールは予備の短剣を抜いた。
「危ないところでしたねぇ。」
「ウルヴァ様、もう、大丈夫。」
こいつらまで…。
「なに、バルログが悪魔の気配がするっていうからよ。狙われるんなら王子のお前だなと思って急いで追いかけてきたんだよ。」
そういってリッケは天使食いの剣をはじき返し押し返す。
「俺、忌子、でも、そのおかげで、助けられた。」
バルログは持ち前の大剣で押し返された天使食いの上にいる斧を持った男の斧ごと叩き斬った。
「バルログは悪魔の気配を感知できるんだと。バルログに感謝しろよ?それにイゴールにもだ。こいつの風魔法が無けりゃ追いつけなかった。」
イゴールは槍を持った男に俊敏な動きで近づく。
「いくらリーチが長くても、当たらなきゃ意味がありやせんぜ。」
槍を持った男の首を掻っ切った。
「リッケさん!いまならあの銀の球体に攻撃できまさぁ!やっちゃってください!!」
「おうよ!!」
リッケが銀の球体を切り刻む。すると液体状になり、多くの天使を苦しめた天使喰いは消えた。
「お、俺の天使喰いがこんなあっという間に…。お前らは一体なんなんだ!?」
天使喰いを連れてきた壮年の男はうろたえる。
「なぁに、ただの羽無しと忌子と罪人さ。」
「なんだと!?異端者共が俺の天使喰いを打ち破ったとでもいうのか!?」
異端者…。俺が散々こいつらに言ってきた言葉だ。
「異端者で悪かったなぁ。だが、その異端者に負けたのはお前だぜ!」
リッケは剣先を壮年の男に、向ける。
「ぬかせぇ!!こいつは飼い主の俺さえも殺しかねない化け物だ!!貴様ら異端者共に倒せるか!?」
男が地面に手を掲げるとドラゴンが現れた。その体躯は大きく、天使喰いの比でない。漆黒の強靭な鱗はどんな攻撃をも防ぎうるであろう。そう、まるで絶望の象徴のように立ちはだかった。
「はっはっは。流石のお前らでもこのバハムートの相手は出来まい!!」
男は大笑いしながらこちらを挑発する。
「さぁ出来損ない共め!死んでしまえ!!死ね!!死ね!!死ねぇ!!!!!!やれ!!バハムート。」
巨大なドラゴンはゆっくりとこちらに近づいてくる。
「ははっ、やっぱり無理だ。俺はここで死ぬんだ。」
助かったと思ったらこれだ。流石のこいつらでもバハムートは倒せない。こいつは天使食いなんかとは違う正真正銘の化け物だ。ガブリエル兄様やバウエルでも倒せるかどうか分からないレベルの化け物だ!ここでこんな化け物と対峙させるだなんて、やっぱり神様は俺の事なんか大嫌いじゃないか!!!
「ウルヴァ!!!!!」
リッケはウルヴァの名前を叫ぶ。
「てめぇはどうしたいんだ。」
リッケはウルヴァに問いかける。
「生きたいに決まっているじゃないか!!!」
俺は叫ぶ。当たり前だ。生きたいに決まっている。
「なら、やることはひとつだろ?いつまでぼーっとしてやがる!」
リッケは剣を構えて言った。
「バカかお前!!バハムートは天使喰いとは違う!!正真正銘の化け物なんだぞ!!兄様やバウエルでも倒せるかわからないんだ!俺たちが束になったって敵うわけがない!!」
「だってよ、どう思うイゴール、バルログ。」
イゴールはバハムートが撃った炎を避けながら言う。
「俺たちは確かに死ぬつもりでウルヴァ様の隊に入りやしたがねぇ!!死にたがりと隊を組む気はありませんぜ!!」
「何もたついてやがるバハムート!!特大のブレスで焼き尽くしちまえ!!」
そういうやいなやバハムートは大きく息を吸う。あぁ、終わった。このブレスで俺たちは死ぬだろう。
イゴールはバルログに風魔法をかけ、速度を上げる。
「バルログさん!!頼みまさぁ!!」
「任せろ。ウルヴァ様、諦めるの、よくない。」
イゴールの魔法で速度の上がったバルログは力いっぱい剣を振り下ろしブレスをたたっ斬った。そしてリッケが左から、イゴールが右からバハムートに斬りかかる。
「なんなんだ一体!?何が起こっている!?バハムートだぞ!?伝説の巨龍だぞ!?それがどうしてこんな異端者共に手間取る!?」
「そりゃあ相手が一体だからさ。俺たちはお互いをカバーし合って戦ってる。例えこのバハムートって奴が俺たち1人1人の10倍、100倍強かろうが俺たちはそれでも負けねぇよ!」
それはとても泥臭い戦いだった。リッケもイゴールもバルログも無傷なままではいられない。バハムートの攻撃を受け身体に切り傷を作っていく。しかし、誰も諦めない。リッケは果敢に斬りかかる、イゴールは風魔法で皆をサポートしながらもバハムートの急所へと短剣を突き刺していく。バルログはウルヴァを大剣で庇いながら隙を見ては攻めかかる。あぁ、無様だ。だが何故だ!?心が動かされる。俺も、俺もこいつらと。だが王族としてそんな情けない戦いはできない…。
「これがガブリエル兄様やバウエルなら…。」
思わず言葉が出てしまう。仮に彼らなら負けるにしても美しい死を選ぶだろう。こいつらのように無様に足掻くような事はしまい。
「お前は誰だ!?王族のウルヴァか!?そんな肩書に縛られるなよ!!お前はお前だろ!!兄弟達とは違う!!」
リッケはウルヴァに叫ぶ!
「例えお前1人で兄弟達にかなわなくても俺たち4人なら勝てるさ!!誰しも誰かの助けを借りて生きてるんだ!!お前は1人じゃない!!」
「さぁ、もっかい聞くぞ!?お前は誰だ!?」
俺は…。俺は…。
俺は剣を鞘から抜く。あぁ、そうだ俺はもう迷わない。
「俺は、ウルヴァ!!ただのウルヴァだ!!」
俺はバハムートに向かって突っ込む。
「よく言ったぁ!!イゴール!頼む!!」
「あいよぉ!!」
イゴールはウルヴァに自身の持つ最高の速度上昇魔法をかける。
身体が軽い。しかしバハムートは不意に炎をこちらに吐き出す。避けられない!あぁ、所詮俺がやる気を出したところで…。
「ふんっ!」
バルログがブレスをたたっ斬る。あぁ、助かった。ありがたい。ありがたい?そうか。俺は。俺はずっと…。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
俺はバハムートの頭めがけて飛び上がり剣をふるう!!が避けられ尾の一撃を食らった。
「ぐはっ!」
衝撃で口からは大量に血が出ている。飛ばされて倒れ、転がったせいで体中は土だらけだ。
「ウルヴァ、大丈夫か!?」
リッケが心配そうに近づき声をかける! イゴールとバルログはバハムートの相手でこちらには来れない。
「あぁ、大丈夫だ。ありがとう。」
ウルヴァは血を吐きながら、身体を土で汚しながら、無様に立ち上がる。
「そうか。」
リッケは笑う。
「もっかい頭を狙ってやりやしょうや。」
イゴールは笑う。
「俺、攻撃、防ぐ、任せろ。」
バルログは笑う。
「ありがとう、皆。俺に力を貸してくれ!」
「「「任せろ!(てくだせぇ!)」」」
「リッケ。あいつの尾は厄介だ!足止めを頼んでいいか?」
「任せろ!お前の邪魔をさせねぇようにばっちり止めてやるぜ!
そういうとリッケはバハムートの尾と立ち回る!
「イゴール!!皆にまた風魔法を!!」
「任せてくだせぇ!!」
イゴールはすぐさま風魔法を唱えなおす。全員の速度がまた上がる。
「バルログ!一緒に行くぞ!!」
「任せろ!叩き斬る!」
俺とバルログはバハムートの頭めがけて突っ込む。もちろんただそれを見ているだけのバハムートではない、小粒の火炎弾を吐き俺たちの行動を邪魔する。
「ウルヴァ様、邪魔させない!」
バルログは持ち前の大剣でウルヴァの前に立ちふさがる火炎弾を叩き斬っていく。
そして開けた道をウルヴァは突っ走る。
あと少しでバハムートの頭へ剣がとどく。体はボロボロ、もう満身創痍だ。だが、だが、俺は今。皆の助けを借りてここにいる!!!!ここで倒れるわけにはいかない!!!!
「いけ!!やっちまえ!!」
リッケは尾に果敢に立ち向かいながら叫ぶ。
「もう目の前でさぁ!!」
イゴールはバハムートの動きをかく乱しながら叫ぶ。
「たたっ斬れ!!!」
バルログは火炎弾を切りながら叫ぶ。
俺は大きく飛び上がり、剣をバハムートの脳天へと突き刺した。
「うごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
叫び声とともに漆黒の巨龍は倒れる。地響きが広がり、伝説の巨龍は息絶えた。
「バハムートが負けた!?この出来損ない王子に!?何故だ!?第3王子には才能がないんじゃなかったのか!?」
男はわめき散らす。
「確かに俺は出来損ないなのかもしれない。才能もない。だが、今はそれを補ってくれる仲間がいる。」
ガブリエル兄様、バウエル、父上。俺はあなたたちから卒業します。
「俺はウルヴァ!!王族のウルヴァではなく、ただの第一先行部隊所属、ウルヴァだ!!
そしてウルヴァの剣が男を切り裂いた。
主人公をウルヴァが喰ってしまっているような...。
第一先行部隊は全員主人公のつもりなので贔屓はしませんが。