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狼は雪の中  作者: 宇都宮 葵
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月光『-象徴の一欠片-』

薄暗い部屋。

開け放たれた窓から、月明かりが降りそそぐ。

一室には家具がほとんどなく、生活感に欠けて閑散と物悲しい。

窓辺には青年が椅子に腰かけており、手にノートを持ちつつ無言のまま月を眺めていた。漆黒の髪がさらりと風に揺られ、無表情ながら端正な顔立ちは誰しもが羨望の眼差しで見送るだろう。

青年-高槻忍は確かに中学高校ともに学園内で有名だった。慕っている者もいただろう。しかし、彼には人を信じることが出来なかった。信じようとする心が存在しなかったのだ。

とはいえ、そこまで人間関係希薄の感情がない人間だとは自分自身思っていない。

最近では、幼い頃からの知人に誘われ過去の事柄をモデルに執筆活動をしていた。

男は自らの高校時代の恋を思い出すと目を細め、ペンを走らせた。



 *          *          *


【狼は雪の中-象徴-】



  木々の葉が紅く色づく秋。

下ろし立ての冬服で身を包み、いろいろな面持ちで各自の学校へと向かう。

それは神社の前を通り、急な階段を上っていく少年-大神玲二にも当てはまる。

元々、勉強等の類いが大嫌いな大神にとって地元一の進学校『義雪高等学校』にスポーツ推薦で入学できたことは奇跡と言っても過言ではない。義雪高校は勉学はもちろん進路先、そして部活動(特に武道)も盛んであるため、入学できる者は何かしら才能を持っているのだろう。

そんな環境の中に放り込まれ、周囲からの期待、妬み、憧れもプレッシャーとなり、ストレスに押し潰されそうになりながら過ごす高校生活に嫌気を差しつつあった。

そのうえ昨夜、祖父である大神幸四郎が馬鹿らしい発言をしたので大神は少々まいっていた。


『我が一族は昔から呪われている』


-馬鹿らしい…

-まず、呪いなんてものを俺が信じると思うのだろうか…

-もしも本当だとしても時効だろう……


毎日大量に出される課題のせいか寝不足からなる欠伸を噛み殺し、正門をくぐった。

「あ、おはよう!大神くん!」



* * *



時刻は深夜1時。

思うままに文字を綴ればおよそ4時間ほど経っていた。

「そろそろ休むか……」

辺りに散らばった紙や本に目をやり、顔をしかめたが睡眠欲が見事勝利しゆっくりとした足取りで布団に潜り込んだ。

数分後、室内には小さな寝息が響いていたという。

月光に照らされながら夜が明けるのを待つのみである。






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