プロローグ『狼は雪の中-序章-』
初めまして、宇都宮 葵です。
今回、初めて『小説家になろう』にて連載小説を書かせていただくことになりました。
きちんとした小説というものはなかなか難しく初心者そのものですので読者の皆様にどのような印象を持たれるかとハラハラしています。
本作品は宇都宮 葵としてはデビュー作にもあたるので気合いを入れて取り組みたいと思っております。
新参者ではございますが、何卒よろしくお願いいたします。
2015.10.19
彼はただ、雪の中に佇んでいた。
吹雪く森を住み家とし、黒い影を際立たせ、雪原に存在する。
そこから見上げられた夜空からは、雪が降っているというのに、未だに月の明かりが届いている。
まるで神聖な領域だと言うように、黒い塊は微動だにしない。
漆黒の狼。
美しい毛並みを持ち、静かに向けられた瞳は確かに淋しい色に帯びていた。
しかし、それは頼ることがない。
孤高は文字通り、ただひとつ高い位置にいることである。
野生の中にいるのにも関わらず美しく汚れがないものはまずいない。
そういう意味で、確かに彼は孤高だった。
しかし、彼の心は望まない。
狼であろうと、人であろうと、誰かに頼らずにはいられないのだから。