ラキファン。
『若者に大人気!ラキファン!
さぁ、ラキファン仲間を見つけよう!』
テレビで何やらCMが流れている。真由美はテレビの方を見た。
「なに?ラキファンって」
『ラキファンって何!?って思ったそこの君!
ラキファンは、ラッキーファンファーレの略さ!』
こういうCMたまにあるよね。30分ぐらい、まるで番組のようにずっと同じCM流すやつ。だいたい、健康食品とかダイエット関連とか多いけど、ラッキーファンファーレって何なの?
『ラキファンはね、こうやって腕に装着するんだ。そして、ここのスイッチを押す』
見るところ、ド派手な腕時計のような感じだけど・・・そのスイッチ押したらどうなるの?
『スイッチを押したら、そこからラキファンの始まりさ!
装着した人の、いろんな情報をラキファンが認識して
最もラッキーな数字【777】に到達したら
ファンファーレが鳴る仕組みなんだ!』
「いろんな情報って何」
なんとなく気になるのでCMを見続ける。すると、いろんなシチュエーションの映像が出てきた。例えば、ラキファンのスイッチを押してから777秒後や、777分後、777時間後などの時間の情報はもちろん、歩いた歩数の777、まばたきした回数の777、鼻血を出した回数の777、トイレに行った回数の777・・・などなど、本当に様々な情報を認識して知らせてくれるらしいのだ。
「知ったところでどうなの」
『ラキファンのファンファーレを聴くと
なんだか元気になれるし、ラッキーな気分になるんだ!』
ラキファンに自分の名前を登録しておくと、ファンファーレと共に、名前も呼び挙げてくれるというのだ。『パンパカパーン!○○様!おめでとうございます!777回目の貧乏ゆすりでございます!』というような感じだ。
あほらしい・・・誰がこんなの買うのよ。と、思っていた私だったが、確か、大学の友達数人がすでに腕に付けているのを今思い出したのだ。あの時見た派手な腕時計はこれだったのか・・・。CMで流れ出したら、みんな続々と買ってるかも知れない。私はラキファンを買ってみることにした。
「こうやって見ると、みんなラキファンつけてるわ・・・」
今まで意識してなかったのだが、道行く人のほとんどがラキファンを付けていた。これって、もしかして一世を風靡したとかそういう状態なわけ?
数日後。真由美の元にラキファンが届いた。女の子らしい、白とピンクのツートンカラーのラキファンを真由美は早速腕に装着してみた。そして、名前を登録し、スイッチを押した。
しばらくして、ファンファーレが鳴った。
=====パンパカパーン=====
真由美様!おめでとうございます!777回目の脈拍・心拍数でございます!
「わっ ビックリした。なるほど・・・こんな感じなのね」
街中で、こんな大きい音が鳴ったら恥ずかしい・・・と思ったけど、近頃ではラキファンをつけているのが当たり前になっているので、いろんな場所でいろんな人のファンファーレが鳴ることも、ごく普通の風景となってきていた。
ある日のこと。電車に乗っていたら、ラキファンをつけた学生集団グループの方からファンファーレが聞こえてきた。
=====パンパカーン!=====
浩太様、おめでとうございます!777回目のオナラでございます!
「うわっ」
浩太と思われる、男の子の顔が真っ赤になった。
「え、おまえ電車の中でオナラとかやめろよー」
「しかも音出てないし」
「ラキファンはごまかせないよなー」
「ちょ、ニオイきたぞ!くっせー」
そのやりとりの一部始終を見ていた乗客たちは一斉に笑った。浩太という男の子も一緒に笑っていた。ラキファンの影響で、人々はみんな笑顔になっていた。
そんなラキファンが世の中に浸透して当たり前になっていたある日、真由美は一人の男にナンパされた。
「ねえ、暇なら俺と遊ばない?」
なかなかの男前だ。年も同じぐらいで少し日焼けした肌に、白とゴールドのラキファンが光る。
「・・・そうね、ちょうど暇してたからいいわよ」
と、真由美がOKした、その時・・・
=====パンパカーン!=====
ヒロシ様、おめでとうございます!777回目のナンパ成功でございます!
「げっ」
ヒロシのラキファンが鳴り響く。
「ぷっ」
こういうのもなかなか面白い。
「777回もナンパするって・・・どうなの~」
「いや~あはは。記念すべき777回目のキミに乾杯しなくちゃ」
そういう風に言われると、そんなに悪い気もしない。
「男前だけど、彼女とかいないの?」
真由美はヒロシとホテルの一室にいた。ナンパされてすぐホテルもどうかと思ったが、まぁ別に特に断る理由もないし、ということでやってきたのだった。
「俺なー、彼女なんか欲しいとは思わない。最近はずっとナンパしてエッチしてそれだけ」
「何なの、軽い男ね」
「キミだってこんなとこまで来てるようじゃ俺と変わらないよ」
と、ヒロシが真由美にキスをしてくる。
「まぁ・・・いいけどね」
こうしてキスを交わし、その先へと進み、ついに合体した、その時だった・・・
=====パンパカーン!=====
真由美様、おめでとうございます!777回目のSEXでございます!
「え?」
ヒロシが固まる。
「俺のラキファンじゃなくてキミのが鳴ったの?」
「・・・」
「えー???ラキファンていつ販売したっけ?まだそんな経ってないよな。キミどんだけエッチしてんのさ!」
「うるさいー、777回目の記念すべきエッチがアンタで良かったじゃないの!」
「・・・まぁそうだな。悪い気はしない」
「俺ら付き合おうか」
体を離した後に、ヒロシが言った。
「なんで?」
「だってホラ、真由美は俺の記念すべき777回目のナンパ成功の相手だし、俺は真由美の記念すべき777回目のエッチの相手なわけでしょ?」
「うん」
「なんかラッキーじゃん。ラキファンも白がベースになってるお揃いっぽいし。な?」
「そうね。ラキファンカップル成立ってことで」
こうして、真由美とヒロシは付き合うことになった。
今日も、街のあちこちから誰かのファンファーレが聞こえてくる。いろんな人のいろんな出来事の777回目をお知らせしてくれる、ラッキーファンファーレ。今や、若者だけじゃなく、子供や大人、お年寄りまでみんな腕につけている。
『さぁ!そこの君も、ラキファン仲間を見つけよう!』
~ラキファン。(完)~