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奏でられし聖樹の記憶  作者: ファル
― 四.魔法塔に迫る影 ―
25/68

4‐2

「あ、ヴィープさん、お久しぶり。いや何、オーガスタまでちょっと用があってね」

「へえ? あそこって、何か問題を抱えてるらしいけど、よく無事で帰れたね。ところで、そっちの人達は?」

「旅の途中で知り合ったんだ。ああ、それで……ちょっと人探しをしてるんだけどさ」


 そこまでを告げると、ブルーさんは知人らしい男性へアスティを紹介し、先を続ける様に促した。


「こんにちは、あの……金髪で、耳がひょっこり出てる青年がこの町に来たらしいんですけど、お見かけしてませんか? リンと言う名前なんですが」


「あー、リンさん? 来てたよ。つい昨日くらいまで、この町にいたんだけどね」


「えっ昨日!? て言うか、リンの事知ってるんですか?」


「うんうん。リンさんって不思議だよねー。部外者なのに、町の入口の術式も熟知しててさ、時々調べ物にこの町へ来るんだ。今回もそれだったみたいだけど、次はアリシアに行きたいから、エーテルタワーに向かうって、多分昨日の内に発ったかなぁ?」


 ヴィープさんと言う青年は、どうやら単に「見かけた」以上にリンさんと交流があるらしい。そんな情報を親しげな様子で語ってくれるが……初めて聞く単語に、アスティが少々戸惑う。


「エーテルタワー?」

「ここへ来る途中に、遠くの方に見えただろ? あの、高い塔の事さ。あそこの8階にはワープゾーンがあるんだ。そこからアリシアに行けるんだよ」

「な、なるほど。ん~、なかなか追いつけないなー……」


 ブルーさんの説明に頷くものの、あと一歩の所で目標が遠のいてしまった為か、アスティの表情が暗くなった。すると、そんな彼女を気遣ったかヴィープさんが補足情報をくれる。


「リンさん、アリシアで調べたいものがあるって言ってたから、しばらくはアリシアにいるんじゃないかな? ここでの調べ物も、わりと時間とってたみたいだしね」

「そ、そうですか……ありがとう。じゃ、とりあえずアリシアへ行こうかな?」


 アリシアと言えば、大国セレンの北西部を占める大砂漠の中心近くに位置するオアシス都市だ。セレンの庇護こそ受けてはいるが、実質は町だけで立っていける一大都市国家と称するべき規模の、立地環境の悪さを物ともしない発展ぶりを遂げている町である。


 但し、このステラがある島国からセレンへと入国するには、遥か西方のマルベルグ山脈を目指さなければならなかった筈だ。その山脈の切れ目からセレンへと繋がる大橋は、確かそれ自体が関所となっていて、通行にはひと手間かかったと記憶しているが……。


「アリシアは、セレンよりずっと開放的な町だからね。ステラの協力を得て、町の中に、お互いが行き来できるワープゾーンを築いちゃったんだ。だから関所とか、セレン王都とか関係なしに自由にアリシアへ行けるんだよ。ステラにしても魔法技術を誇るに相応しいあの塔の建設には、上層部の誰も反対しなかったみたいだし」


「自由にって……そのワープって無料なの? ブルーが居なくても飛べるの?」

「あれは誰でも利用できるよ。お金もかからない」

「マジか! そしたらさっさとそこに行って、そのままアリシアに直行だ」


 ヴィープさん達の交互の説明に、やや不安そうだったスバノンも一気に普段の調子に戻って言った。性格の割に、案外お金の出入りには細かいなぁ……とは、内緒かも知れない感想である。


 方針が決まった所で、アスティが傍らのブルーさんへと向き直り、軽く頭を下げた。


「ブルーさん。ここまでご一緒してくれてありがとう。これ以上お付き合いさせてしまうのも悪いので、後は私たち3人で何とか頑張ります」

「ああ、なんて事ないさ。エーテルタワーまで送るよ」

「ありがとう……でも、あんまり気を遣わなくてもいいですよ」

「いやー、この変なのが何か問題起こすんじゃないかって心配だからね。それに、どうせステラにいても暇なだけだし……ちょっと遠出してみたい気もするし」


「誰が変なのだよ、誰が。てか、何か付け足しで言ってなかったか今」

「がさつな癖に細かい事気にするな」


「え、えーと……じゃせっかくだから、お世話になっちゃおうかな」


 どうやら、もう暫くブルーさんも同行するのが決定したらしい。だがまたしても、恒例なノリの会話に縺れ込んでいく様子を見ていたヴィープさんが、愉しそうに笑った。


「君たち、とても仲が良いんだね。うらやましいなぁ」


「別に良くないぞ? この変なの、やたら絡むしうっとうしいし」

「だから『変なの』じゃないっつの」


「あははは。いや大体さ、ブルーが女の子と親しくしてるのなんてラーンさん以来じゃない? ちょっと物珍しいと言うか、新鮮だよ」

「―― やめてくれ……あの人は親しい訳じゃない。幼馴染なだけだ……」


 ……はて。何やら、その名を聞くや言葉以上にぐったりした様子になったけれど。何故だろう?


「とにかく、準備が良いならタワーに向かおう。ここを出てすぐ北だから迷わないよ」


 しかし、その疑問は特に解消される事もなく。ブルーさんの先導の下、アリシアへのワープを可能とするらしい魔法塔へと皆で向かう事になった。

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