最終話 “焔の魔王”篝火焔
「リーチ」
「うお!またか!」
「……積み込みしてないだろうな?」
「全自動卓だこれは!積み込みなんて出来るわけないだろ!」
「これは……どうするか………」
今俺は麻雀をしている。
メンバーは俺、社長、日本のトップ、白川だ。
このメンバーの中で白川がいるのがちょっと和み要素だ。
今のところ俺がトップ。
二番目は社長、三番目はトップ、ぶっちぎりのドベが白川だ。
トップなのに三番目なのはいかにと言う突っ込みはやめたまえ。
「ちなみに忠告しておくが白川が俺に振り込んだらとぶからな、気を付けろよ?」
「今の俺の持ち点だったらどんなのが来てもとぶだろうが!」
「持ち点1000点だからな」
「せめて一回は直撃をくらわせてやりたいものだ」
「ふははは、やってみろ」
「ご主人?今いいですかー?」
「おお、恵か。いいぞ」
ここで恵が来た。
俺は卓から目線を一回逸らして恵の方を見る。
「あ、白川。ロンだ」
「ぎゃー!」
その後すぐに目線を戻してみたら白川の番だった。
と思ったら振り込みやがったこいつ。
何でとびそうなのに安牌切らずに危険牌ばっか切るのかね?
しかしこれで恵との話に集中出来るな。
「それで何の用だ?」
「いや、結婚式の日時を決めようかと……駄目でしたか?」
「……………」
取りあえずあの出来事の後に起こったことをまとめよう。
俺はニュクスの治療の後、恵達がいるこの島に戻ってきた。
少しの間は寝たきりだったがニュクスの許可を得て今は車椅子で移動している。
何でも腹の傷は何故か治りが異常に遅いとのことだ。
神の呪い、俺はそう片付けた。
神殺しなんてことをやったんだ、これくらいの代償は安いものさ。
それでもあくまで遅いだけでいつかは治るそうだ。
次は恵についてだな。
恵は俺が帰ってくるなり大変なことを言い出したんだ。
これはさっきも言っていた通り俺と結婚するということだ。
俺はもっといい奴はいると言ったんだが一向に折れる気配がない。
それなら社長に反対してもらおうと思ったら『いいじゃないか、結婚しろ』の一言をもらった。
これが今一番の問題と言えるだろう。
次にダンジョンの報告だ。
ダンジョンは現在第五階層まで進まれている。
一番進んでいる奴らはな。
今は色んな奴らがダンジョンに挑んでいるんだ。
次は………中々時間が経った割には何にもなかったんだな、これで以上だ。
しいて言うならば玉依さんたちが以前よりもよくこちらに来るようになったぐらいか。
たぶん車椅子になった俺を気遣っての事だろうな。
車椅子でも特に不自由はないから大丈夫なんだが……
だって遠出する場合転移で事足りるし、島の中を移動する分なら普通に移動できるし。
階段なんて気にならんよ、そもそも建物はバリアフリー仕様のものばっかだからな。
あとニュクスも傍にいてくれているからな。
「ご主人?どこで結婚式を挙げるかも決めませんと」
「だーかーらー、何故確定事項で話しているんだお前は!」
「いいじゃないか。この老いぼれにも早いところ娘の晴れ姿を見せておくれよ」
「あんたは遅くなったって絶対に生きているだろ!」
「いやいや、私は人間だよ。君たちをは違うんだ、いつ交通事故で死ぬとも限らん。早い方がいいのは確かだ」
そう言われてしまうと黙るしかない。
事故に会ってもこの人なら生きていそうだけどなぁ。
化け物社長の異名はだてじゃないだろうし。
事故を起こした車が壊れてそうだ、電車でもはね飛ばすんじゃないか?
さすがに冗談だ。
ここで俺に電話がかかってくる。
誰だ?
「もしもし?俺だ」
『ああ、焔ちゃんですか?私です』
「瑠璃か、そっちの調子はどうだ?」
『ええ、上々と言ったとこですかね。そちらは?」
「悪くない」
瑠璃には俺が車椅子になったことは言っていない。
こいつの事だからそれで馬鹿にしてくるに決まっている。
「それで何の用だ?」
『暇つぶしです』
「そうか、切るぞ」
『躊躇いなし!?』
「俺は忙しいんだ、暇つぶしの相手をしている暇はない。今も書類が溜まっているんだからな」
『しかし電話には出ると』
「依頼の時があるからな。…切るぞ」
『え?ちょ――』
ここで電話を切る。
いつも通りで大丈夫そうだな。
ん?ああ、この電話はフェリシアにもらった。
幾つか余りがあったらしい。
後フェリシアはあの神の手下ではないそうだ。
俺を狙っていたのは別の理由、その理由は教えてもらっていない。
俺だって聞いちゃいけないラインぐらいはわかる。
「恵ちゃん、焔君、遊びに来たわ」
「マスター!恵ちゃん!」
「フィーと玉依さんか、ゆっくりしていってくれ」
「玉依さん、聞いて下さいよ。ご主人がまだ結婚を了承してくれないんですよ?」
「あらあら、それはいけないですねぇ。玉には変化球でもしてみたらどうですか?」
「変化球?」
いつの間にかレギュラーキャラ勢ぞろいか。
……あれ?ニュクスはどこだ?
「焔よ、ちょっとこっちに来るのじゃ!」
「そこにいたか、一体今度は何をやったんだ?」
俺はニュクスの声が聞こえたほうに行く。
もう車椅子での移動は慣れたものだ。
「これを見るがよい」
そう言ってニュクスは俺に書類を渡してくる。
俺は受け取って内容を読む。
「……企画は中々面白いな、今度やってみるか。だが俺がこの様だからな、時間がかかりそうだ」
「ゆっくりでもいいではないか。それこそわらわ達にはたっぷりと時間があるのじゃから」
「ああ、そうだな」
俺はニュクスの言葉にゆっくりと頷く。
まだ時間はあるんだ、急ぐ必要なんてない。
「あー!魔王だー!」
「おう、いつものガキどもか」
「死ねー!」
ガキどもが俺にかかってくるが俺は手を軽く払うように動かして風を起こす。
ガキどもはその風で転んだ。
「ちくしょー!憶えていろよー!」
「ほいほい、憶えていたらな。精進しろ」
こんな感じで次世代の攻略者候補も順調に育っている。
こりゃうかうかしていたら俺もやられるかもな。
さて、ニュクスの出してきた企画について説明しよう。
これは結構でかい企画だぞ?
ニュクス曰くこの世界のほかにも世界はあるらしい、俗にいう異世界と言われる場所だな。
前に行った神が住んでいた天界も異世界の一つらしい。
そこで異世界とこの世界を繋ぐ、もとい旅行できるようにするというものだ。
そのためには向こうの異世界の主人を交渉して承諾してもらう必要がある。
無断でも可能だが後々面倒臭くなる可能性がうんたら。
俺が車椅子だからいざという時実力行使が出来ない分時間を掛けて交渉するしかないというわけだ。
だがこれは俺としても興味があるし面白いと思う。
何年、何十年掛けても実現させよう。
それが今の俺の目標だ、今決めた。
……世界はいつの間にかに俺らの決定で左右されるようにもなってきた。
しかしそれはあくまで人間の世界だ、この世界ではない。
この世界はそんなこと知らないと言いたげに今日も怠けている、時々気まぐれで自然災害を起こすぐらいだ。
だから俺がつまらない人間の方の世界を動かそう、先導してこう。
後ろから刺される時もあるだろう、そも甘受しよう。
俺が死んでも、俺には頼れる“家族”がいる。
「ご主人、本当にどうして結婚してくれないんですか?」
「そうだ、こんなに心優しくて器量がいい子なぞそうそういないぞ?」
溜め息をつく。
俺の負けかな?
心の底では認めていたんだがな。
こんだけ一途にされたらもう負けか。
ただ今日まで言われ続けたらと言う賭けは負けたわけだ。
「わかった……結婚しよう」
「やった!………でもどうしていきなり?」
「……まあそのうちわかるさ」
俺にとって今日は大切な日だ。
恵は知らないと思う、恵と会う前の話なんだ。
「でも挙げるなら今日中な、無理ならば結婚はなしだからな」
「お父さん!すぐに手配を!」
「任せろ。親戚連中、友達等々に今すぐ招待状を送る。式場もどこでもいい、すぐに手配する。どこにするか?」
「そうですねぇ………」
社長がパソコンを取り出して画面を開き、恵がその画面を見て式場をどこにしようか考えている。
そこに俺は近づいていき、画面にある一つを指さす。
「ここじゃ駄目か?恵」
「……ここは一体?」
「なるほど、ここならば色々な手続きをせずにいきなり乗り込んでも可能だろう。しかし君の方はいいのか?ここで」
「………ここがあんたのグループの支援を受けていたのはちょっと前に知った話だが、ここは俺の思い出の場所でもあるんだよ」
「ふむ……恵もここでいいか?」
「ご主人が選んだのですからいいに決まっています!」
恵が嬉しそうにその場でくるくる回っている。
それを見ながら俺は立ちあがってその場で伸びをする。
「ご主人!立っちゃ駄目ですよ!」
「何言っているんだ?立たなきゃ着替えようがないだろうが。このまま車椅子で式に出るわけにも行かないしな」
「でも傷が!」
「治りが遅くなったり傷が広がったりするだけで死ぬわけじゃない、安心しろ。それにニュクスにも少しづつでもいいから立って慣れることが大切だと言われている」
俺は恵の頭を撫でて安心させてやる。
腹の痛みはもう慣れた。
慣れたってだけでまだすごく痛いんだがな。
言い忘れていたな、何故今日が大切な日なのか。
今日は俺がニュクスと会った日なんだ。
俺たちの物語の始まりの日。
きっかけの日。
俺が生まれ変わった日だ。
「後社長、呼びたい人が何人かいるんだが………」
「言ってくれ、すぐに集めよう」
「このメモの中に書いてある人たちだ、出来るか?」
社長は少し考えたあとメモを受け取り、これなら簡単だと言った。
「恵は先に式場に向かっていってくれるか?」
「え?私が着るドレスとかご主人が着るタキシードとかはどうするんですか?」
「向こうに用意してあるはずだ、先に行っていてくれ」
「……わかりました」
恵はこの式場に先に転移していった。
俺が一回溜め息をつくと社長がパソコンの画面を見たまま話しかけてくる。
「……この日が重要だったんだな」
「ああ、言ったら恵が別の奴に移り気するかもしれなかったからな。一応黙っておいたんだ」
「そんなことをする子じゃないさ。……私には話してくれてもよかっただろう」
「あんたじゃあ恵に話すだろう?恵ならあんたの様子が少しでもおかしいのなら速攻で理由を訊きだしにいくだろ」
そして話してしまう、と。
結果が見え見えだから言わなかったんだよ。
「にしてもやけに準備がいいじゃないか。……呼んでほしい者のメモにドレスとタキシード、一体何日かけたんだ?」
「……何日かかったかなんて数えてないな、俺が準備を始めたのは車椅子で動けるようになってからだ。あいつらに悟られたらそこで終わりだからな」
「じっくりと少しづつ、か。……あの教会の使用予約をしたのも君か」
「ああ、本当に使う事になるとは思わなかったんだがな」
「あの町にはあそこしか教会はない。別に和式でもよかったんだぞ?」
「神社は一つ、寺も一つ。片方は玉依さんの実家で片方は幸徳さんがいる寺だろう?身内でやっているだけじゃないか」
「雰囲気を重視したんだな」
社長が少し笑う。
さて、俺も準備をするとしよう。
ニュクスの企画のほうも今後の事を考えておかないとな。
貿易の方も最近はちょっとぎすぎすしているところがあるからそっちも片付けないと。
あとは島内での話だな。
犯罪こそないものの町での景観はいいものとは言い切れない。
ああ、忙しい。
やることが山盛りだ。
……一つ一つ片付けていくとしよう。
ニュクスが言ったように時間は大量にあるんだから。
「ほら、新郎が遅れちゃあ始末がつかないぞ」
「はは、そうだな」
さあ、これからが大変だ。
……まあ、なんとかなるだろう。
助けてくれる家族もいる、相談できる知り合いもいる。
何よりも俺は、魔王だからな!
「ああ、そうだ」
「なんだ?社長」
「君の両親も呼べるがどうするか?」
「…………お願いします」
これで魔王はとても忙しいです。は完結となります。
ここまで読んでくださり有難うございました。
彼らの物語はここで一回切りますがそのうち別の物語にもひょっこり現れることでしょう。
彼らのことですし、その時までは彼らとお別れです。
さて、この後はおまけとしょうした茶番を見たりネタバレ有の主要人物紹介を読むことをお勧めします。
半年ものお付き合い、本当にありがとうございました!




