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第七十八話 決戦・終

 四人の叫び声が聞こえた。

 俺はその場に倒れる。


 痛い。

 俺は←の脇腹を触る。

 俺の手には血がべっとりとついていた。

 どうやらあの白い球は俺の脇腹に当たり破裂していったらしい。

 おかげで息をするだけで鬱になるほど痛い。


「ご主人!大丈夫ですか!?ご主人!」

「恵か……」


 最初に聞こえたのは恵の声だ。

 恵は俺の傍に来ると俺の脇腹を真っ先に見た後泣きそうになってこう言った。


「どうして……」

「…言っただろう?お前たちは俺が死んでも守ると」


 最初にそう約束しただろう、何をいまさら。


「……死なないでください!ご主人!」

「恵ちゃん!どいて!」

「この声は……玉依さんか」

「喋らない!今治療するから」


 そういうと玉依さんは俺の脇腹に手を当てた。

 俺はすぐに治療しているんだとわかった。

 だが傷が深すぎるようでそこまで治っているという感覚がない。

 だが血の勢いは和らいできている。


「焔!」

「ニュクスか」



 今度はニュクスだ。

 ニュクスは目に涙を浮かべている。

 柄でもないのにな。

 普段どれだけ強がっていたのかがわかる。



「マスター!」

「フィーか」


 最後はフィーだ。

 フィーは涙をすでに流していて顔がぐちゃぐちゃだ。

 折角の美人が勿体ない。

 ちょっと身長が足りないがな。

 まだまだ子供だ。


 四人が俺の周りに集まった。



 そうだ、神は?

 そう思い神の方を向く。

 神はやってしまったと言わんばかりに自分の左手を見てい呆然ととしている。

 この分なら少しの間は大丈夫か。


 俺は玉依さんの腕を掴み治療をやめさせる。


 その後上半身を起き上がらせる。


「焔君!まだ傷が……」

「玉依さん。残念ながらこの傷はそのぐらいの治癒スキルじゃ治らない。……ちょっとどいていてくれ」


 四人を俺から離れさせる。

 俺は自分の穴が開いた腹を出すとレーヴァテインの腹を腹の傷に押し当て、傷口を焼いて塞ぐ。


「焔君!?」


 玉依さんが驚いている。

 しかし俺は焼くのをやめない。

 心配して恵が近寄ってくるが無視して俺は傷口を焼く。

 そして大体塞がったで止めた。

 このままだと脇腹にあった筋肉がないため、動ける程度にクリエイトで治療もしておく、だがそれも最低限だ。



 俺は立ちあがる。


「焔よ、その程度では動けばまた血が噴き出すぞ?」

「それでもいいんだ。……ニュクス、恵達を連れて地上に戻っていろ」

「ご主人!?」


 恵が俺のこの言葉に驚いた。


「ここから先は……俺だけでやる」

「でも!」


 恵が反発の意志を示す。

 しかしここは譲れないんだ。

 恵達のためにも、俺のためにも。


「……わかった」

「ニュクスちゃん!?」


 ニュクスはあっさりと承諾してくれた。

 俺が考えていることを読んだのだろう。


 恵は嫌だという表情をしているが玉依さんは諦めの表情を浮かべている、フィーは玉依さんを見ているから玉依さんの決定に従うつもりだろう。



「ここから先の戦いはとても危ないし醜いものだ。……お前たちは知らないほうがいい」

「なら――」

「これは俺がやるべきことだ、約束をしたのは俺なんだからな」

「約束なんかで命を賭けるなんて……」


 馬鹿げている。

 途中で口を閉ざしたがそう恵は言いたいんだろう。


「恵ちゃん、何を言っても無駄よ」

「玉依さん……」


 ここで玉依さんが口を挟んでくる。


「男の人なんて皆こんなものよ。意地になって、つまらないことに命を賭ける。…でもね、とても頼れるわ」

「……………」


 玉依さんが恵を諭すように言う。

 ニュクスはもう門を作り終えたようだ。


「はよ入れ!神がいつ攻撃してくるかわからんのじゃぞ!」


 ニュクスのその一声で玉依さんが門の中に入る。

 次にはフィーが入った。


「恵も早くするのじゃ!」


 ニュクスが恵を急かす。

 恵は私の目の前まで来て俺の背中に手をまわしてきた。

 その次に―――


「…………ご主人、絶対生きて帰って来てくださいね?」

「ああ、約束しよう」


 恵とのキスを終えて恵は俺の背中から手を放し……門の中に入って行った。

 傷口に手が当たっていてとても痛かったが今は気にすまい。


 最後にニュクスが門の中に消えていった。

 ……最期にこっちを見た気がする。



 門が消えたのを確認した後、俺は神の方に歩き出す。

 神は俺がある程度近づくとこちらに気が付いた。


「さあ、これで邪魔者はいなくなった。これからが本当の決戦だ!神!」

「…ああ、最期まで……楽しもうぞ!!!」


 俺は強くレーヴァテインを握りしめた。

 その次の瞬間金属音が鳴り響く。

 何度も何度も何度も鳴り響く。


「あっはっはっはっはっはっは!!!!」

「フハハハハハハハハハハハ!!!」


 狂ったように俺らは笑っている。

 何が面白いとかじゃない、そうしてしまうのだ。


「【焦土】!【陽炎】!」

「何!」


 俺がスキル名を二つ唱える。

 最初で周りが炎に包まれ視界が見えなくなる。


「小癪な!」


 だがすぐに炎は消しとばされた。

 …所々に炎が残った。

 残った炎は大小様々な大きさでゆらゆらと揺れている。

 

 俺は神の目の前に立っている。


「今さら小細工か!らしくないぞ!!!」

「どれが俺らしいかは俺が決めるもんだ!!!」



 俺はレーヴァテインを拾い神に再び切りかかりに行く。

 今度周りに響いているのは金属音と俺たちの狂ったような笑い声だ。


 ………そして少し経って訪れたのはお互いの疲れによる静寂。

 俺も、神も、どちらも決して軽いとは言えない怪我をしているのだ。

 興奮状態による痛覚の麻痺もそろそろ切れかけてきている。

 このままだと時間で共倒れに……いや、神ならば別に死にはしないか。

 つまり、俺の負けだ。



 俺は大きく息を吐く

 出し惜しみして結局やらないまま死ぬっていうのはかっこ悪いな。

 …やるか、そのための仕込みは先ほど終わった。

 やるしかない、やらなきゃ殺られるんだ。



「そろそろ終わりにするか、神」

「ああ、そうだな」

「次が最後の撃ち合いだ。……準備をしろ、神よ」

「……ああ、望むところだ」



 俺と神は互いに構える。

 俺は詠唱を始め、神は再び俺の腹に穴を空けた白い球を作り始めた。

 今から出すのは“ジョーカーズ”の一つだ


「≪反乱の時は来た!何も持たぬ者よ!すべて奪われた者よ!持つ者に、奪ったものに“無”を与えよ!」

「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ………」

「何もない苦しみを!全てを奪われる苦しみを!……怒りを燃やせ!その焔が圧政者に罰を下す!≫」



 ここで俺は簡略化した詠唱を終えスキル名を唱える。


「……【虚無の焔】」

「…準備はいいか?焔の魔王よ」

「ああ、いつでもいいぞ」


 俺の右手には弱々しいがどこか綺麗でもある焔がある。

 神の左手には先ほどよりかは小さいが先ほどよりも真っ直ぐで強く白い光を放つ球がある。


「……………」

「……………」



 一瞬の静寂、それは本当に一瞬だった。


 次の瞬間には俺は神を中心とした円にそうようにして少しづつ神に近づいていく。

 神は俺が一瞬止まったり、うまくタイミングを合わせて俺に白い球を当てようとしてくるが外したらそこで終わりなため慎重になっている。

 結果神はそれを撃つことが出来ずに俺と神の距離はどんどん縮まっていく。


 そしてある程度近づいたところで俺は勝負にでる。

 俺は神に向かって真っ直ぐに突っ込む。

 俺のこの行動に対して神は一瞬怯んだがすぐに白い球を飛ばしてきた。


 俺はその球を避けようとしない、代わりに右手で白い球を防ぐ。

 すると白い球は消え、手の上に会った俺の焔が激しく燃える。


「な!」

「死ねぇぇぇぇぇ!!!」


 俺はその勢いのまま神に右手の焔を押し付ける。


「ぐあああああ!!!」

「うぐぅぅぅぅ……!!!」


 俺もろとも神が焔に包まれる。

 普通の焔ならば別にここまで苦しまないだろう。

 この焔は………


 ここで俺は意識を戻す。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 少しして焔は消えた。

 そこには俺の体と神が倒れている。




「……く、は………なるほど、考えたな。普通炎は酸素で燃える、しかし“虚無の焔”と言ったか?あれは――」

「魔力を燃料にして燃えるんだよ」


 俺が神の言葉を繫げる。


「だからこそ防ぎようがないし、だからこそ俺は今まで使えなかったんだ」

「……なるほど、お前は最初から最後まで仲間とやらの為に行動していたのだな」

「ああ、こんなものあいつらがいる状態で放ったらどうなったものかわかりきっているからな。フィーなんかこれを食らったら消えてなくなってしまうから……」

「……………」


「この焔は残念ながら先ほどのように接近して使うしかまだ使用できないんだ」

「自らも燃え、それで心配して近づいてきた彼女らも燃えてしまう……」

「そういうことだ……もう教えてほしいことはないか?」

「ならば最後に一つだけ」

「……言ってみろ」


「お前は先ほど私と一緒に燃えたはずだ事実そこに倒れている。だが何故お前はそこに立っているのだ?」

「……………」



 そう、俺はここに立っている。

 神を見下ろしている。

 勿論俺は虚無の焔を避けてなんてない、だからそこに体が置いてあるのだ。

 いや、正確には俺の形をした抜け殻だがな。



「ジョーカーは二枚だけじゃないのさ」

「……イカサマか」

「俺は魔王だぞ?」

「…ふっ、そうだったな」



 俺は詳しい説明をしてやる。

 俺が今まで使った“ジョーカーズ”は三枚。

 本来ならば一枚一枚全てこんなに短期間でこれほど使うことはないほどの威力を持っている。

 一枚は“魔神化”、一枚は“虚無の焔”、もう一枚は……“ドッペル”。



「俺は俺を作り出したんだよ」

「……なるほど、そういう事か」

「今そこにあるのは俺の体、それは違わない。しかし俺ではないんだよ」



 ドッペルは俺自身を作り出すスキルだ。

 クリエイトで作り出したものに乗り移ったのでは俺はスキルを使えない。

 だから俺はクリエイトを少し改変し、新しいスキルを作り出した。

 本当に使いたくはなかったんだ、このスキルは。


 強力な力には代償が必要ということだ。

 このスキルの発動条件に、俺の体の一部と血、魔力が大量に必要になる。

 だから俺は穴が空いた腹の周りの肉片を少し、血はさっき流した分で、魔力は無理やり放りだした。


「おしゃべりは終わりだ、もう死ね」


 俺はレーヴァテインを使って神の首と胴体を切り離す。


 神は断末魔を上げずに代わりとして最期の言葉としてこう言った。



「これが死、というものか……まだまだ学ぶことが多…い……な…………」


 そして神が死んだ。

 

 ……これで、終わりか。

 あれ?いつから世界は逆さまになったんだ?

 ああ、俺が倒れているのか……


 俺は背中から倒れ、そのまま動くことが出来なくなる。

 腹から血がどんどん流れていくのが分かる。


 ……ああ、死んだなこれは。

 俺にしちゃあ上出来な終わり方だ。

 あ。


 俺はここで一つ思い出す。

 そういえば恵との約束があったな。

 ああ、でも、そんなこと、言ってる暇はなさそうだ。

 もう、いいか。

 はは、最期の最期で約束やぶっちまったか。

 情けねぇ……な。


 俺の意識はは夢や一片の光さえない、真っ暗な闇の中に吸い込まれていった。

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