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第七十七話 決戦・破

「そんな………」


 私たちが到着したのは私たちが合流してから三分ほど経ってからでした。

 そんな私たちが見た光景は私たちの口が閉まらなくなるほどショッキングなものでした。

 あの強いご主人が、膝をついているのです。


「ご主人!」


 私はそう叫び、ご主人の方に走りだします。

 その叫び声が届いたのかご主人はこちらを向きました。


「恵!それに玉依さんとフィーも!無事だったか」


 私達を見るなりご主人は本当に安心した顔になりました。

 しかしその顔にも疲れの色が出ています。


「お前の言った通り、こいつらが来たか」

「当たり前だ、俺の“仲間”だからな」


 ご主人は立ちあがりました。

 その立つときの動作も震えていて、今にも倒れてしまいそうです。


 ………………


「恵?何をしている?」

「焔の魔王の代わりにお前が相手をしてくれるのか?私は別にそれでもいいが」


 私はご主人と神とやらの間に入り、ご主人を守るように立ちます。


「恵、どけ。死にたいのか?」

「……………」

「恵!どけ!」

「嫌です!」


 ご主人が私に向かって怒鳴りました。

 私はその声よりも大きな声で返します。

 私のこの行動にご主人が驚いているのが振り向かなくても分かります。



「ご主人が死ぬのならば、代わりに私が死にます」

「駄目だ、どけ」

「嫌です」

「どけ」

「嫌です!」

「我が儘を言っている場合じゃないんだ!」

「ご主人の方だって我が儘でしょう!」


 神は興味深そうに私達を見ています。

 攻撃してくるつもりはなさそうです。


 私はご主人の方に向き直ります。



「ご主人は私たちが死ぬくらいなら自分が死ぬと思っているんでしょう!」

「……そうだ」

「残された人の事も少しは考えてください!」

「……………」

「ご主人がいなくなって、私たちはどうすればいいんですか!?」


 私は泣きそうになるのを堪えて言葉を繫げます。


「私は今までご主人を信じてここまで来たんです!ご主人は私の道しるべになってくれていたんですよ!……その道しるべが無くなったら、私はどうすればいいんですか?」

「恵……」

「私だけじゃありません、フィーちゃんも迷うことになるでしょう。玉依さんは大丈夫でしょうが私達二人は玉依さんじゃあ駄目なんです、ご主人がいいんですよ………」


 ここで私は堪え切れずに泣きだしてしまいます。

 一度泣き出してしまうと感情が噴き出してきて止まりません。


 ご主人は私の背中に手をまわして抱きしめてくれました。

 そのまま、何も言わずに……神の方に歩き出しました。



「お前の気持ちはよく分かった、しかしこれはもう止められないんだ。……向こうで、見守っていてくれ」

「……もういいのか?」

「ああ、待っていてくれてありがとうな、続きをしよう。玉依さん!恵を頼む」

「…はいはい、わかりましたよ」


 玉依さんは私の手をとって立ちあがる手伝いをしてくれます。

 そして私の手を引いてご主人たちとは離れた場所に連れていかれます。


-----------------------------------------------------------



「さあ、続きをしようか」

「もう別れの挨拶はいいのか?」

「……ああ」

「そうか」


 神が俺に向かって剣を振り下ろしてくる。

 俺はそれを防ぎ、体を捻りながら反撃をする。

 神はその攻撃を後ろに跳ぶことによって回避した。


「【業炎】!らぁぁ!」


 神は炎を出す位置を俺の視線で予測していたようで避ける。

 しかし俺はそれを避けることも読んで避けるであろう場所に向かって剣を振り下ろす。

 ……手ごたえがある。

 神の右手から血が出ているのが確認できる。


「何………?」

「はぁ…はぁ……」


 神は自分の右腕から血が出ているのを見て驚いている。

 俺はその隙を見逃さなかった。

 神に向かって第二撃を叩き込む。

 今度は神のわき腹を切ることに成功した。


「むう………」

「はぁ…はぁぁぁぁぁぁ」


 俺は息を大きく吐いて呼吸を整える。

 そして大きく空気を吸い込み、こう言い放つ。



「どうだ神よ。まだまだ人間も捨てたもんじゃないだろう?」


 神は血が出ている部分を抑えながらこう答えた。


「…下界には仲間がいると強くなれるという人種がいるらしいな。お前もその口か?」

「そんなものじゃないさ。俺のは窮鼠猫を噛むってやつだ」

「なるほど、な。弱いものと侮ると痛い目に合うという事か、一つ新しく憶えなければいけないことが増えたな」


 俺は会話を交わしながらニュクスの方をチラ見する。

 まだ終わらないのか…長すぎるだろ……


「さあ、まだ続きがあるんだ。続けよう」

「ああ、そうだな。これでこそ戦いというものだ!」



 激しい金属音があたりに響き渡る。


 神が切りかかってくれば俺はそれを防ぎ、俺が反撃すれば神は剣で防いだり避けたりしている。

 先ほどまでよりも神の剣筋が良く見える。

 これが ―――か。

 臭いがな、だが今は他には考えられない。



「らぁあ!」

「くっ!」


 また俺の剣が神の体を切り裂く。


「どうした!」

「くそったれが!」


 神の剣が今度は俺の左肩を切り裂く。

 そこまで深くなくて助かった。

 今腕の片方でもやられるのはまずいからな。


 ここでニュクスが大声を上げる。


「焔!どけ!」


 詠唱が終わったようだ、俺はニュクスに一瞬気を取られている神に一撃くらわすとその場を跳んで離れる。


「くっ、油断したか」

「ニュクス!やれ!」

「【黒球・無塵】!!!」


 ニュクスがスキル名を唱える。

 すると神がいる場所にすごい威圧感が発せられる。

 神はその雰囲気を察して横に避けようとする。

 しかし次の瞬間には神がさっきまでいたところに黒い球が現れた。


 神は避けきれずに右腕がその球の中に残る。

 そして神は苦虫を噛み潰したような表情になった。

 すぐに球は消えたが、その中にあったはずの神の右腕は消えていた。



「ルシファァァァァァァァァァァァァアアアアアア!!!」

「ニュクスちゃん!」

「恵!」


 神がいきなり激怒してニュクスの方を向き、白い球を作り出している。

 パッと見ただけでどれだけのエネルギーが込められているかわかる、あんなもの食らったら今のエネルギーを大量に使ったニュクスじゃあひとたまりもないぞ!


 俺がニュクスの方を向くと恵が神とニュクスとの間に割って入っているのが見えた。


「くそっ!」


 俺は走りさらに恵と神との間に割って入った。

 そこに白い球が飛んでくる。


「ご主人!」

「焔君!」

「マスター!」

「焔!!!」



 四人の叫び声が聞こえた。

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